前日譚 怪人組織
まるで魔王の城にありそうな、暗く豪華な部屋に縦長のゲストテーブルがある。
テーブルには椅子が7つ置いてありすでに5人座っていた。部屋の一番奥にはひと際豪華な椅子が置かれているがまだ誰も座っていない。
5人,,,果たして人と呼んで良いのだろうか?
そこに座っているのは明らかに人間では無のだ。
人の特徴は残っているが明らかに化け物達だ。
,,,紫色の液体が女性の姿を保っているモノ,,,体が銀より白く輝いている鉄でできたロボットのようなモノ,,,黒いローブを纏った骸骨の顔をしたモノ,,,サメの頭をしたモノ,,,などなどの化け物達が静かに椅子に座っている。みな何かしら服を着ている。
突然、キィィィィ,,と鈍い音を立てながらゆっくりと扉が開く。
「やあ諸君!!遅くなってすまないね!時間に間に合ったかな?」
開かれた扉の奥から男が入ってくる。暗い部屋の雰囲気に合わない明るい声で言う。
男はどこかの学校の制服を着ている青年だった。
背が高く、顔が整っている美少年だ,,,,あまりにも場違いな輩が現れたが化け物達は特に慌てたりはしない。むしろ呆れた視線を彼に向ける。
サメの頭をしたモノが口を開く。
「ふざけるなヒャクメンソウ!20分遅れだ!!月に一度の幹部会議だぞ!幹部の自覚は無いのか!?」
サメ頭のモノは入ってきた青年をヒャクメンソウと呼び、男の野太い声で怒鳴りつける。
「いやすまない。貴方達と違って私は仕事で忙しいのでね,,,,君みたいにゆったり座っていたいですよ。」
ヒャクメンソウと呼ばれた青年は涼しい顔をしながらそう言う。
さり気なく他の面々を煽りながら扉を閉めて空いている席に座る。
豪華な椅子にはまだ誰も座っていない。
「アアン?!テメェ,,「シャーマンうるさい。あんな奴に突っかからないの,,,,まだボスも来ていないしいいじゃん。」,,チッ,,」
シャーマンと呼ばれたサメ頭の話を遮り、紫色の液体の女性がめんどくさそうに言う。
シャーマンは青年を睨んでいでいる,,,,青年は気にせずに軽い口ぶりで言った。
「なんだ,,,ボスまだ来ていないのか。僕に怒るのならボスにも怒りなよシャー君。」
「シャー君と呼ぶな!シャーマンだ!,,まったく,,お前が怪人組織の幹部でなければ食い殺してやるのに,,,,」
そう言うシャーマンに青年はバカにした様な顔をして鼻で笑う。
そう。ここは怪人の犯罪組織,,〈バッドクリーチャーズ〉の本部。
そしてその組織の幹部しか入る事が許されない部屋,,,,幹部会議室だ。
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怪人とは人が何かしらの理由により人間を辞めた者の事だ。
激しい怒りや絶望,,,,歪んだ欲望,,,,またはトラウマやストレスなど,,人間の醜い部分が暴走したモノが怪人になる。
怪人になった者は欲望に従い生き,,,,人に害をなす。
人を楽しんで殺す者もいれば,,食事として食べる者もいる。
人を辞めた害悪な獣,,,,それが怪人だった。
彼らは自我は持っているが基本どこか普通の人と比べて狂った価値観を持っている。一人一人違う特殊能力を持っており,,人からかけ離れた姿になる。
怪人は強悪で恐ろしく強い,,,,だがそれに立ち向かう者達もいる。
それが魔法少女,,,,光の大精霊ニュクスから力を授かり怪人を倒す正義の味方だ。
男は魔法少女になれない。女性,,特に少女の方が魔力との適正がいいらしく、男性はほとんどなれないらしい。
彼女達もそれぞれ違う魔法や特技をつかい、怪人から善良な人々を守っている。
いつしか彼女達はアイドル扱いされるぐらい人々からの人気を得ていた。
彼女達は人々の応援や希望を糧に変え力にする。
怪人達は魔法少女に次から次へと倒されていき全滅は確実だった。
,,,,しかし突如としれ現れた怪人の女王【モーガン】によって組織されたバッドクリーチャーズが現れた事により、今まで統率が執れていなかった怪人達にリーダーが生まれ,,怪人達は勢力を取り戻し魔法少女と対等に戦っていた。
そんな争いが始まったのが約100年前。
今だにモーガン率いるバッドクリーチャーズと魔法少女達の争いは続いている。
バッドクリーチャーズには序列がある。
一番上にモーガン,,次に幹部とある。現在幹部は6人しかいない。
幹部は怪人の中でも強く狡猾で凶悪な者がなれる怪人のエリートだ。
そんな彼らは月に一度,,会議を開き今後の相談をする。それがこの幹部会議だ。
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青年,,,,いやヒャクメンソウはため息をつきながら言う。
「この仮面も疲れたよ,,,,今を時めく魔法少女のいる学校に通っているのだからね。」
「嘘つけ,,,,テメェ楽しんでるだろ。だいたいお前が,,「皆集まったな?幹部会議を始めるぞ?」
シャーマンが文句を言おうとした時,,威圧的な女性の声に遮られる。
それと同時に座っている怪人達は豪華な椅子の方を見る。いつの間にか豪華な椅子には人が座っていた。
肘掛けに手をかけ、頬杖をついてこちらを見ている女がいた。
禍々しい二対の角に,,白い肌に黒い幾何学模様が体中に刻まれている。
金色の髪をなびかせて,,,怪人達を赤い目で眺めていた,,,絶世の美女がそこにはいた。
怪人達は全員立ち上がり女性に向けて頭を下げて言う。
『お待ちしておりましたモーガン様!!』
そうこの絶世の美女こそが組織のボス,,女王モーガンだ。
「皆座りなさい,,,,仕事で忙しい中集まってくれた事を感謝する。今回も幹部会議を開催出来る事を嬉しく思う。」
モーガンは微笑みながら嬉しそに言う。
「,,,,,美しい,,モーガン様が微笑んでいらっしゃる,,」
「さすが怪人の女王だ,,美しい,,,,」
幹部たちがその美しさに思わず賛美の声を上げる。
皆がその美貌に見惚れている中,,,,一人だけ,,ヒャクメンソウだけが面白くなさそうな顔をしている。
「さっそく此度の会議を始めよう,,,,____」
モーガンの言葉とともに幹部会議が始まった。