ステータス
「ちゃんと周りを見る!!」
「ちょちょちょまっ―――ぐふぅ!!」
俺は門番さんの拳をよけることが出来ずもろに鳩尾にくらう。
それに耐えられずゴホッゴホッと咳が出た。
「ほら!すぐに立ち上がる!!」
なぜこうなった……
◇ ◇ ◇ ◇
「護衛とは?」
「そのままの意味です。」
でしょうね。
「なぜ俺が?エルフの人達がやれば良いのでは?」
わざわざ俺がやらなくても、こんなでっかい所に住んでいるアーサーなら隠れてでも護衛をするはずだ。と言うか正直メンドイ。
「……それが護衛をつけるのを断るのです。」
「隠れて護ってるてのは無いんですか?」
「初めはやっていたのですが何をしてもアーサー様に気付かれてしまうんです。」
それはそれはご愁傷様としか……
「アーサー様は大丈夫と言うのですが心配で、アーサー様がお強いのは重々承知何ですが……」
この人はどうやら過保護すぎるらしい。アーサーの事が余程好きな用だな。
「で、何で俺に?」
「アーサー様は貴方に心を許しているようで、ですが人間に任せるのは少々……」
やっぱりこの人も人間が嫌いなのか……
「ですがそんな事よりアーサー様の方が大事!!」
門番さんは目をクワッ!!とあけて大声で叫んだ。
明らかにお嬢様Love!!って感じの雰囲気だ。
「と、言うわけで貴方には護衛を頼みたいのです。」
「でも俺戦闘とか全然出来ませんけど……」
「む?そうなのですか。この時代に戦えない人がいたのですねぇ…まぁ大丈夫です私が訓練してあげましょう。」
「いや。結構です。」
俺はビシッと断りを入れた。
「そんな事を言わずに……」
「いや。結構です。」
ビキッ
「いいから―――」
「結構です。」
ビキッビキッ
「いいから―――」
「結構ですで―――」
「いいからついてこいやぁぁー!!」
え!?なに急に……
「ついてくること。い・い・で・す・ね?」
「は、はい。わかりました……」
顔の目の前で言われてつい、はいって言ってしまった。
でもあんな鬼のような形相で迫られたら断る人はいないと思う。そう思いたい。けして俺がビビった訳ではない。
「じゃあ明日からよろしくお願いしますね。」
「いえ、今からです。」
「は?いやいや今は夜ですし明日からでも……」
「いえ!!今からです!!」
「……はい。」
押し切られてしまった。解せぬ。
「さあ、ついてきて下さい。」
門番さんはそのまま歩き出した。
俺は無視しようとも考えたがぐちぐち言われるかも知れないので大人しくついて行くことにした。
「あの~どこまで行くんですか?」
十分程歩いてはいるがまだ門番さんは止まる気配がない。
「ここです。」
と、ついに門番さんが何にも無い壁の前で立ち止まった。何してんだ?とは思ったがもしかしたら隠し扉なんてものがあるのか?
いや。まさかな。家に隠し扉なんて、忍者屋敷じゃあるまいし。
すると門番さんが壁に手を置き何かボソボソとつぶやいたと思ったら、壁が光ったほんのりと光り、そこにあった壁が扉のような形に無くなり奥に通路が現れた。
「なんじゃこりゃ……」
「さて、この奥です。」
この通路は石造りのようで歩くとコツコツと足音が聞こえる。通路の中は明るいって程では無く、例えるなら……そう!炭鉱の坑道の用な明るさだ。
その明るさと涼しさも相まって不気味な雰囲気を醸し出していた。俺も内心ビクビクしていたが俺は大丈夫、俺は怖くないと自分に言い聞かせて門番さんについて行く。
そこから二分程歩いた所で見るからに重厚な扉が現れた。
「私だ。」
門番さんがそう言って間もなくガコンッと音が鳴り重厚な扉が開く。
「な、なんじゃこれ。」
そこには床、壁、天井一面にアーサーの写真が貼ってあるストーカーもビックリな部屋があった。
「ふっ凄いだろう。私達のアーサー様コレクション。アーサー様のあんな姿やこんな姿まで色んなアーサー様の姿があるぞ!!ほらこれなんかは―――」
門番さんは熱くなったオタク並みにペラペラと早口で話し始る。
へ、変態だ。コイツとは絡むのはやめよっかな。
俺がドン引きしているのに気付いたのか「ゴホン」と咳払いをし、話を戻した。
「え、ええとここは私達のいわば秘密基地のような、まあアーサー様を見守ろうの会の会議室と言うか、まあそんな感じの所です。」
アーサー様を見守ろうの会?ファンクラブのようなものか?慕ってる相手のファンクラブ作るか?普通。
「一さんにはここで訓練をしてもらいます。」
え、ここで?こんな変態めいた部屋でやりたくないんだが。
俺の引いた様子を感じ取ったのかすぐに訂正をする。
「ああ。心配しなくてもここではしませんよ。こんな狭い所では出来ませんし、それに!!私達のコレクションを汚す訳にはいきませんから!!」
まあですよね。
「じゃあどこで?」
「隣の部屋に訓練部屋があります。そこで訓練をします。相手は……私で良いでしょう。」
本当にするのか……迫られたからといって承諾するんじゃ無かった。最悪だ……
「では、ステータスを見せて下さい。」
「ステータス?」
「え?」
「え?」
今度は門番さんが信じられないものを見るような目でドン引きしていた。
「まさかとは思うがステータスを知らないのですか?」
「えっと、知りません……」
「貴方ホントにこの世界の人間?」
違います。何て言えないよなぁ
「まあ良いでしょう。鑑定書は持ってますか?」
「なんですかそれ。」
「鑑定の効果が付与された紙です。鑑定の効果で自分のステータスが見られるんですよ。」
鑑定?ラノベで良く聞くが―――
《スキル鑑定Lv1起動。》
直接脳内にAIじみた声が聞こえる。
うおっ!?脳内に直接声が、っとそこでふと不思議に思う。
て言うかこの声、家で聞いた声と似ているような?
《スキル鑑定Lv1をオートで発動しますか?》
オートと言うか自分で選んで使いたいんだが……自分で発動できた方が何かと便利そうだし
《スキル鑑定Lv1。設定を任意にしました。》
お、おう?これでいいのかな?
では早速。
《一廻 Lv1 称号 特異個体
HP196 MP168
攻撃力245 防御力120
魔法力180 精神力224
速度308 運245 》
ほう?ゲームみたいだな。
「どうかしましたか?」
「いや。俺鑑定のスキル持ってるみたいです。」
「ほぅ?それは珍しいですな。」
「珍しい?」
「はい。スキルと言うのはその名の通り能力です。つまりその分野の才能が少しでも無いと取得出来ないんですよ。一さんが鑑定スキルを持っているって事はその才能があるって事になります。」
そんなもんなのか。しかし鑑定の才能って、いや鑑定というよりは人を見る観察眼が優れている、とか?
「ではステータスを。」
「良いですけど、これどうやって人に見せるんですか?」
「確かこの人に見せると思えば良かった気が。」
そんなアバウトな方法でいいのかよ。
そう思いながらもう一回鑑定をして門番さんに見えるように意識しながら見せた。
「一さんは速度タイプの戦士ですね。称号は無しLvは1ですか、本当に貴方この世界の人ですか?いえ、詮索するべきではないですよね。わかりました。」
称号無し?いやイレギュラーって書いてあったけど……
もう一度見てもそこには特異個体と書いてある。
他人には見えないのかな?まあ見られて警戒されるよりかはそもそもが見えない方がいいよな。
「剣や槍、弓や素手がありますがどれをしますか?」
素手って武闘家的な?こう、拳でシュシュッてやる感じ?でもここはここは王道の剣士だろ。剣は男のロマンだし。
「剣でよろしくお願いします。」
「承知しました。ではこちらへ。」