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~プロローグ~
小さい頃から嗅いでいる畳の臭いが、鉄臭くなる
そんなことも気にせず、
無我夢中で目の前の【人間だった肉】を切り刻む
全身が冷たい液体に覆われた中で
頬を流れるしずくだけが、ほのかな温かみを保っていた。
「…ハァ…ハァ」
------手がしびれた。
ナイフを持つ手が赤く染まっている。
無我夢中で切り刻んだからか、
体がだるい
精神的なものもあるんだろうけど、
なにより
もう------------
つかれた。
● ● ● ●
「ねぇ、あれ…」
「ぇっ…ヤバくない?警察呼んだほうがいいかな?」
家から血だらけのまま橋まで歩いてきたけど
夜中の3時過ぎだって言うのに、
都心だからか、人通りは少なくない
「・・・。」
橋の上から見る川は
都心の光が水面をキラキラと照らす
「・・・。」
あーぁ
もう少しで高校卒業して
大学行って
お金貯めためて、
少しでも、じいちゃんに恩返しようって決めてたのに・・・
ごめんなさい、
おじいちゃん・・・・。
ちょっと早いかもだけど、そっちに行くね。