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愛する君への手紙  作者: sun
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目覚め

鳥のように翼を生やして空を自由に飛び回りたい。

かつての偉人達のような頭脳を手に入れて偉業を成し遂げたい。

モデルやアイドルのように整った顔立ちが欲しい。

誰もが1度は願ったことのあるだろう夢。

でも僕が欲しいのはただ一つ……。


〜6月19日 (土)〜

この夢を見た日僕が目覚める場所は毎回同じだ。

病室。特に重い病気を持っている訳では無い。ただ体が普通の人よりも弱いのだ。それだけなんだ。手を握って「生きている」という実感を噛み締める。今回は何故自分が病院に運ばれてきたのか知りたい。そう思った矢先「ガララ」と病室のドアが開く音が聞こえた。

「よっ。叶多。大丈夫か?」

「ああ雷気大丈夫だ。そういうお前は部活帰りか?」

このザ・野球部みたいな髪型をした男は白銀雷気。僕の小学校からの親友で、中学で共にバドミントンをしている。ちなみに雷気と僕はダブルスのパートナーである。

「おおっ!なんで気づいたんだ〜??」

雷気が笑いながら言う。

「お前ラケット持ってるし汗だくじゃないか。」

少し呆れながら僕は答えた。

「おっ!そういやそうだったわ〜!」

雷気は笑いながら答えた。雷気は良い奴なのだがこう天然混じりのバカが少し手痛さを感じることがしばしばある。

「そういや雷気聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「おっ?何だ?俺に彼女が出来たかどうかか?」

「その話は今年に入って3度目だぞ。どうせ決まってる。出来てないんだろ?」

「ガッハッハッー!バレたかー!流石は叶多!俺の親友だな!」こんな他愛のないやり取りを心から楽しんでいた。ハッ!と気付く。いけない。雷気に話をそらされてしまった。

「僕はそんな話を聞きたいんじゃないんだ。雷気。今回僕が病院に運ばれた理由はなんだ?」雷気へ問う。

と、ここで意外だったのが雷気の反応だ。いつもなら直ぐにぱっと答えてくれるのだが今日は違った。何かを隠している?そう思えるような反応であった。

「ん?どうしたんだ雷気?早く教えてくれ。」

調子の悪い感じで雷気が答える。

「あっ……えーっとそれはだなー……」

「何を隠してるんだお前は?何か言っちゃいけないような理由なのか?ま……まさか僕は……遂に終わりの時が来てしまったというのか!」少し冗談混じりで言ったつもりだったのだが雷気はとても慌てた様子で言う。

「ち、違うんだ叶多!だークソっ!こうなったら仕方ない…。ちょっと待ってろ叶多!」ポケットから何かを取り出して雷気は病室を出ていった。何がどうなってるのか僕にはさっぱり分からなかった。


あれから何分経ったのだろう。僕はただ永遠に続くかのような暇と本当に死んでしまうのかという恐怖と戦っていた。フーっと少し深いため息をついた時「バン!」と大きな音が鳴り響く。何だと思いドアの方を見た瞬間ギュッと誰かに抱きしめられた。とてもいい匂いがする。花のような香り。何故だろうかものすごく落ちつく。ってそうじゃないだろ!自分がどれだけ変なことを考えていたかを振り返り冷静になる。まずはこの状況をどうにかせねば。

「おーい響華さ〜ん。痛いんで離して貰えませんか〜?」

僕はこの抱きしめてきた人を知っていた。と言うより知っていて当然なのである。

「ごめんね!ごめんね〜かな〜!」と言い泣いているこの女子は宮島響華。僕の幼なじみで幼稚園からの腐れ縁である。ソフトテニス部に所属しており、全国までとはいかないものの毎度試合では好成績を記録している、僕達の学校の希望の星だ。唯一僕のことを「かな」と呼ぶ友達でもある。だが何故響華が泣いているのか、僕には分からなかった。いつも僕が入院した時は、笑顔で少し嫌味混じりで話してくれるのに。僕は気になって仕方なかった。

「おい響華。なんで泣いてるんだ?僕が何かしたのか?」

「違う。違うの〜!かな〜全部全部私が悪いの〜!」

僕はすぐに後悔した。質問がまずかった。よくよく考えてみると、僕が何か響華にした時はきまって口をきいてくれないのだ。泣くはずがないのだ。小さい時からずっと一緒だったのに、そんな事にも気づけなかった。

「ごめん響華。泣き止んでくれないか。僕はただ何があったか知りたいだけなんだ。」

「う、うん。」鼻を啜って鼻水を引っ込める。声はまだ涙声だったが響華は何があったのか、一部始終を僕に話してくれた。


〜6月21日 (月)〜

先日無事に退院できた。響華から聞いた話によると、

最近部活で忙しかった僕を癒すために一緒に出かけて、色々しようと思っていたらしい。ただその内容が人並み外れていて、一発目から自転車で隣町へ行くという内容だったらしい。この話を聞いた時。僕は理解した。これは記憶は飛ぶし僕の弱さなら入院するよなーと。この後もハードな内容だったらしいのだが僕は聞くのが怖くなり聞くのをやめた。響華自信僕が、最近部活を頑張っており体が少しは強くなったのかなと思ったらしい。本人はすごく罪悪感を感じていたようだが僕は頭を撫でて「心配してくれてありがとう」とだけ伝えて響華を家に返した。

今日から普通に学校が始まる。中体連までもう少し。

それが終われば受験が始まる。もう入院なんてしてられない。そう決意して学校へ向かった。




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