笑顔に侵されたこの街で
この世界はおかしい。
何故だろう。街にいる全員の顔に笑顔が貼り付けられたのは。勿論、笑顔が描かれた紙が顔に貼り付けられているという訳ではない。だが、紙が貼り付けられたかのように俺以外の全員が笑っている。子供も、大人も、犬や猫でさえも四六時中。
異変に気がついたのは一年前の五月。午後の講義があるため、大学に行った時に気がついた。講義が行われるホールに入った瞬間、ホール内にいる全員が俺の方へと視線を向けた。不気味な笑顔を貼り付けて。
俺はその瞬間逃げ出した。「ここにいてはまずい」直感がそう俺に告げた。当時は講義をすっぽかしてまずいと思っていたが、今となってはあの時の行動は正しかったのだとハッキリわかる。
大学を出て街に戻ると……音がほとんどしない事に気がついた。そして、歩いている人間、犬、猫、全員が笑っていた。大学にいたやつらと同じような笑顔で。
そして俺を見つけると全員が走り出した。俺の方へと……。俺は慌てて逃げ出した。息が切れても、足に痛みが走っても、それらを無視してとにかく逃げた。やつらが俺を見失うまでとにかく逃げた。
何故大学へ向かう時に俺は気が付かなかったのだろうか。この異常さに。
この日から、俺の異常な生活は始まった。
ヤツらは人を襲う。人を……食う。笑顔に侵されていない一般人を。俺がそれに気がついたのは、この異常な生活が始まって一ヶ月程経ったある日だった。
その日、俺は見つけた。俺以外の正常者を。直ぐにわかった。ヤツらが何人も集まり集団となり走っているからだ。ヤツらが走る時、それは正常者を見つけた時だけだ。普段は走るヤツなんて一人としておらず、全員が歩いてるからだ。全員同じ速度で。
ヤツらの向かう先を見ると、三十歳くらいのおっさんが必死にヤツらから逃げる姿が目に入る。全身汗まみれになりながら。俺がおっさんを見つけてから十秒ほど経ったときだろうか。おっさんは転んだ。そしておっさんは……食われた。
おっさんは全身噛みつかれ、腕が一本、目玉が一つ消失された状態で立ち上がった。
不気味な笑顔を浮かべて。
トン…トン…トン…トン…
っ!!歩く音が聞こえる。恐らくヤツらだ。おっさんのことを考えている場合じゃない。逃げなければ。
「うぐっ!!」
立ち上がろうとすると右足に鋭い痛みが走る。
三日ほど前、ヤツらから逃げている時五寸釘を踏んでしまった。不幸にも五寸釘は上を向いた状態であり、それを踏んだ俺は右足に釘を貫通させてしまった。そういう時の対処法を俺は知らない。消毒液が欲しかったのだが、街にはヤツらが多くいるため、そう簡単に店に行くことも出来ない。そのため消毒液が手に入るまで抜かないでおこうと釘を刺したまま行動していた。
三日間ヤツらとは出会わなかったため、釘を刺したままでも大した障害はなかったのだが、遂に遭遇してしまった。
ダメだ逃げなければ!立て!立て!
なんとかして立ち上がるも、力が抜けてしまい倒れ込んでしまった。
足音がしない。バレなかった……?
倒れ込み、地面に向けていた視線を前へと向けると……
腕が一本、目玉が一つ失われた男がいた。笑顔を浮かべて。
ーーおっさん!!
この世界はおかしい。一年ほど前からおかしくなってしまった。俺以外の全員が気持ち悪い笑顔を浮かべるようになった。子供もジジイもババアも、犬猫も。
ヤツらは正常な人間を襲う。以前、三十歳くらいのおっさんがヤツらから必死に逃げている姿が見られた。おっさんは転んでしまい……ヤツらに食われた。
おっさんのことを思い浮かべていると、足が目に入る。五寸釘の刺さった足が見える。視線を上に向けると
大学生ほどの男が笑顔を浮かべてこちらを見ていた
え、待ってやっぱ小説書くの難しい。情景描写とか難易度高すぎ