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第八十一話 楽しいひととき

僕:山風亘平 『センター』に秘密で猫のジーナを飼っている

とき:僕の惚れてる女性。

珠々さん:会社のエリート。僕の仕事を手伝ってくれている

鳴子&遥&仁:開拓団の双子姉妹とその息子のモグリの医者

 その日、僕と珠々さんが『かわます亭』に入ったとき、すでに怜と鳴子さん、仁さんがわいわい楽しそうにやっていた。僕は怜を見つけると妙に焦った。珠々さんのことを誤解しないかと思ったのである。それで思わず、僕は珠々さんから少し離れて歩いた。

 けれど、怜は僕たちを見つけると笑顔でグラスを掲げて僕たちを呼び寄せた。


「えっと、怜……」


 僕が珠々さんを紹介しようとすると、珠々さんはそれを遮って怜に握手を差しのべた。


「はじめまして、山風さんの同僚の冠城珠々です。お噂はかねがね」


 それを聞いて、怜はちらっと不審そうな横目で僕を見た。『はじめの人たち』について何か話していないか疑ったのだろう。僕は他の人に分からないように小さく首を振った。

 怜は感じのいい笑顔で差し出された手を指先だけで軽く握った。


「古物商をしている榊杜さかきもりときです。何かお探しのものがあったらぜひ」


 そして、さすが珠々さんはエリートだった。怜との握手を済ませると、すぐに鳴子さんと仁さんにも挨拶を忘れないどころか、遥さんのことまで気遣いを見せた。


「こちらは鳴子さん、そして仁さん、お久しぶりです。 遥さんは今日は……」


 鳴子さんは珠々さんを眺めまわして言った。


「あのときの娘さんかい。ちょっとは元気になったみたいだね。今日は姉さんがみんなで飲もうって言ったんだけどね……。あらかた納品に手間取ってるんだろ。いまに来るよ」


 鳴子さんはそういうと首をすくめた。仁さんは珠々さんの登場で緊張したらしく、動作がぎこちなくなっていた。

 

「まあとりあえず何かお飲みよ」


 鳴子さんがそう珠々さんに勧めると、珠々さんは怜の横について怜と同じものを注文した。怜がちょっと心配そうに眺めるのを横目に、珠々さんはグイっと一気にそれを飲み干した。しかも酔っぱらった様子もなくけろっとしている。


「なかなかいい飲みっぷりじゃないか!」


 鳴子さんがそういうので、僕はあわてて鳴子さんに言った。


「鳴子さん、それで実は冠城さんのことをみんなに頼もうと……」


 珠々さんはそれを聞いて少し怒ったように言った。


「山風さん、ここに一人で来ることも帰ることもできますわ。怜さんだって一人でいらしてるじゃありませんか」


 思わず鳴子さんと僕は顔を見合わせて、ほぼ同時に答えた。


「それは、怜はそこらの男が束になったって……」


「亘平たち、私をそんな風に見てたの?」


 怜は眉をしかめて僕と鳴子さんをにらんでいた。


「そうさね、お前さんなら心配ないさ」


と鳴子さんがうなずきながら言うと、怜は苦々しい笑顔を浮かべて、それでも珠々さんに向かって言った。


「でもね、珠々さん、確かにここは危険。亘平はあなたが心配なのよ……」


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