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第七十五話 ジーナと怜と-1

 家に帰ると、ときをみるなり案の定、ジーナは瞳孔を細くして耳を伏せた。さらに、僕が怜にすすめた椅子の上にいちはやく飛び乗って丸くなる念の入れようだった。

 けれど、怜は一向に気にしない様子で、まるでジーナが存在しないかのように隣の椅子に腰かけた。


「で、会社で何があったって?」


 僕はそういえばジーナを探す時に怜に手伝ってもらって以来だな、と思いながら怜のためにお茶をいれた。


「実は『センター』に僕の企画が目をつけられて、プロジェクトを進めるように言われた。『センター』はこの計画のためだったらいろいろ僕に便宜を図るってさ」


 怜は渡されたマグカップを両手で持って、しばらく考えていた。


「ただの計画じゃないのね」


 僕は怜のはす向かいにこしかけて、お茶をすすった。不思議だけれど、怜にこのことを話すことができて、永いあいだの孤独な緊張感に、ようやく一息つけるような気分があった。


「このために『地球』への渡航許可すら出すと『センター』は言ってる」


 怜は『地球』という言葉を聞いて、いっしゅん息を飲んだ様に見えた。


「彼らの目的は『開拓団』地域の併合だ。資源を一元管理したいと言ってるけれど、なんの資源なのかはよくわからない。とにかく僕が『センター』に期待されているのは、たぶん『開拓団』の情報を流すことだ」


 そのとき、僕はジーナが隣の部屋で何かを落として壊す音を聞いた。いつの間にか隣の部屋に行って、そして招かざる客に抗議の姿勢を示したのだ。怜はけれどその音すら耳に入らないように続けた。


「どうして私にその話をするの」


 怜の目は鷹の様にするどく僕の目を見据えていた。


「『はじめの人たち』に危険がなければそれでいい。僕はいまのところ、『センター』にも『開拓団』にもつけないでいる。僕の目的はジーナと穏やかに暮らすことだ。……『はじめの人たち』は……」


 僕がそう言いかけると、怜はそれを遮って言った。


「私はそのことは話さないわ。亘平、あなたはいい人。私たちの『掟』に巻き込みたくない」


 『掟』はたぶん知られたら始末する、という意味だろう。そういわれてこっちはバイク事件で怜のためにもう命の危険という意味でも、名誉の危機という意味でも犠牲は払っていたので、僕は思わず皮肉な笑いを漏らした。


「今日はヘンなときに笑うわね、亘平……」


 怜はぞっとしたように僕の顔を見たので、僕は軽く傷ついた。


「ともかく、『はじめの人たち』に危険なことがあったら知らせるよ。僕を信用しているなら覚えていてほしい」


 ジーナはいたずらに飽きて、また同じ椅子に戻ってふて寝していた。怜はそれをじっと見ながらこう言った。


「それでも『センター』の計画に巻き込まれたのは厄介だわ……。どうするつもり、亘平」



次回、怜VSジーナの決着。

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