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第六十三話 銃撃-2

「とりあえずマスター、明かりを消せ!」


 その掛け声でマスターより先に常連が動き、店の照明がすべて消えた。誰かがビジネスリングの小さな明かりをつけた。


「みんな、仕方がない。ここにあるだけネコカインを集めよう。きっと奴らも『犬』はごめんだろう。あるていど収穫があれば帰るはずだ」


 誰かがそういうと、若い男が持っていた透明な酒瓶をひっくり返して空にした。

 若い男は酒瓶を持って順番にまわってきて、それぞれネコカインのカプセルを瓶に落として行った。僕のところにまわってきたとき、僕は会社から支給されたばかりのネコカインを二つぶ瓶の中に落とした。


「やっぱり『火星世代』はいいブツもらってやがる……」


 若い男は(おそらく悪気なしに)そうつぶやいた。僕のカプセルは他の物より少し青かった。

 乾いた銃声がまた数発なり響き、誰かが早くしろと叫んだ。

 僕の隣の鳴子さんはどうしたことか、何も出そうとはしなかった。


「上物は可愛い甥っ子(仁さん)のために必要なんだよ」


と鳴子さんは言い、みんなはそれで納得したようだった。

 男が集め終わったとき、酒瓶には三分の一ほどのネコカインが集まっていた。そこにマスターが店で一番の高級酒を(高級ということはネコカイン入りということだけどね)持ってきて若い男に手渡した。


 そこで急に大きなどよめきが起こった。外を大人数が走っていき、銃声が立て続けに何発もなり響いた。

 暗闇の中でまた酒瓶のいくつかが割れる音がした。こんどは積み上げられたバリケードにも当たった。

 通りでは、この騒ぎの犯人たちらしい一群が銃を手に店の前を過ぎようとしていた。そこへ来て、とどめに街にはサイレンが鳴り響き始めた。


「ほんとに『犬』がくるぜ!」


 それを聞いて、一人の小柄な男が暗闇の中に立ち上がり、薄青く光る瓶を二つひったくると、体を不自然にひょこひょこと揺らしながら通りに出て行った。

 街灯の中で見る男は白髪頭でやせ細り、背中は曲っており、足を引きずっているようだった。

 僕があわてて男の代わりに行こうとすると、鳴子さんがまた僕を床に引き倒して僕はバリケードに頭をぶつけた。


「お前さんはよく見ときな!」


 瓶を手にした男がギャングたちに近づくと、一人が銃を男に向かって構えた。


 瓶を持った男はただひたすら体をかがめて、何度も頭を下げて何ごとかを叫んでいる。

 やがて銃を構えたギャングがその瓶をひったくろうとしたが、男は瓶を離さない。

 殴られても蹴飛ばされても離さず、頭にきたギャングは少し身を離すと銃を構えた。

 僕はもう見ていることもできずに下を向こうとしたが、鳴子さんは僕を小突いてもういちど「見ていな!」と命令した。


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