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第六十二話 銃撃-1

でもまあ、それからしばらく僕は幸せな気分だったよ。『はじめの人たち』が僕たちの敵じゃないと分かって、しかも怜には恋人がいないと分かってね(恋人はいないけど、愛する相手がいるかどうかっていうのは僕の単純なアタマにはなかったわけだ)。

 

「気持ち悪いニヤニヤ顔だねえ、いったい……。迷子になってちょっとは男らしくなったかと思ったのに。で、怜にはちゃんと言ったってことだね?」


いつもの『かわます亭』で鳴子さんが僕にそう言ったとき、僕はいったい自分がどんな顔をしていたのか見当もつかなかったけれど、鳴子さんが気持ち悪いというぐらいだから、そうとうにやけていたのかもしれない。

鳴子さんと僕はだけどその日、とても上機嫌で飲んでいた。鳴子さんはこのあいだ一緒にいた珠々さんのことも気になるようで、僕は彼女と資料室で出会ったことを話した。

もっとも、怜が『はじめの人たち』だってことは絶対に知られちゃいけないから、『開拓団』が困っている電力について助けたいって話にしたけどね……。

鳴子さんは僕と珠々さんが会社で誤解されていることについて


「お前はいいやつなんだが、ほんとに女性ってものをわかってないよ」


としきりにぼやくので、僕が


「しょうがないよ、僕は母親がいなかったから女心が分からないんだ」


というと、鳴子さんはそんなセリフは酒場で女を口説くときだけ使え、と怒るので、僕はますます何をいって良いのかわからなくなった。

僕は自分が分が悪くなったので、応援を呼ぶつもりで周りを見まわして言った。


「今日は仁さんは……?」


その言葉に、鳴子さんは急に真面目な顔になってこう言いかけた。


「……今日はこないよあの子は……」


とその瞬間だった。


何かが破裂するような音がして、酒棚の上からガラスが降った。僕は何が起きたかわからず、背伸びをして見回そうとすると、鳴子さんが僕を床へと引きずり倒した。

そして僕がそこから見たのは、店の窓に開いた小さな穴と開拓団の人たちが口々に何かを叫び出す光景だった。


「やつら、ここでまでやりやがった!」


一人の男がいまいましそうに言うのが聞こえた。そして、遠くからまた何回かがはじける音と叫び声が聞こえ、店にいた男たちは身を低くしながら、奥のテーブルを持って来い、と叫んだ。

 店にいた人間は男も女もなく、みんなで奥からテーブルをかかえて窓側にバリケードを築いた。


「はやくおさめないと『犬』がきやがるぞ!」


誰かが舌打ちまじりにそういうと、店内に一気に緊張が走った。


硝酸が貴重な火星で銃はものすごい武器

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