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第四十四話 サラリーマン亘平のひみつ-5

僕:亘平こうへい猫のジーナをセンターに秘密で飼っている。

じんさん:開拓団のモグリの医者。はるかさんの息子

はるかさん:開拓団のエンジニア

鳴子なるこさん:開拓団の占い師。遥の双子の妹。

とき:地上で出会った謎の美女。『はじめの人たち』の生き残り?

 会社の資料には、そのころ『開拓団』が酸素を得るために、赤土から鉄を取り出しはじめたことが書かれていた。

(火星の赤い土は赤サビだから、酸素と鉄がたくさんとれるってわけさ)

 そして、彼らはもう一方の鉄を使って、最初の地下都市を作り始めた。

 最初の地下都市は、アリの巣のような、大きな空間が通路で結ばれているようなかたちだ。

 火星の地下都市には大きく二つのパターンがあって、僕たち『火星世代』は、高度にシステム化された鋼鉄都市にコンパートメントが並んでいるような形をしている。

 でも一つのポートを挟んだだけで、開拓団の地域は、大きな空間に、灰色のビルのような建物が並んでいるんだ。

 つまり、火星の都市の発展がそこでも見られるってわけだね。


 僕は会社の帰りにまた『かわます亭』に寄った。

 マスターはもうそれほど怒っていなかった。少しだけ、ときが来ていないか期待したけれど、そこにいたのはじんさんだけだった。


「あれ、鳴子さんたちは今日はどうしたんだい?」


 僕がそういうと、仁さんは酒瓶に手をかけながらこう言った。


「今日は二人で連れ立って用事があるとさ」


 仁さんは(モグリの)医者だということもあって、普段は深酒もしないのだけど、いつもより無口なせいで、僕は仁さんがけっこう飲んでいることに気が付いた。


「珍しいね、仁さんもはるかさんのようにいけるクチだって知らなかったよ」


「あのひとはバケモンだよ」


 仁さんは細い目をさらに細くしてそう答えた。

 どうやら、今日の鳴子さんたちには何か事情があるらしかった。

 でも、僕は深入りしないことにした。そういうところも彼らに気に入られている理由だと知っているからだ。


「あれから怜はここに来たかい?」


 僕がそう聞くと、仁さんは首をふった。

 怜はふらりとここへやってきたり、急に現れなくなったりする。

 もしかして、ほんとうに単に開拓団が気に入っただけではないのだろうか。

 僕は怜のことを調べてどうしようというのか。


 仁さんと他愛ないはなしを十分ほどしたあと、事件は起こった。

 『かわます亭』に男があわてた様子で飛び込んできて、仁さんに耳打ちしている。

 仁さんは二三度うなずくと、出口へむかって歩き出そうとしたが、よろめいた。


「飲んだくれてちゃ困るぜ先生……」


 男は焦っているのか、僕の腕を引っ張って言った。


「あんたよく見かけるな……。理由はわからんが、先生と仲がいいんだろう? こっちはケガ人が危ないんだ。手を貸せよ」


 僕は言われるままに男と仁さんを挟んでかつぎ、仁さんの診療所まで連れて行った。

 仁さんの診療所は表からは分らないようになっている。つまり、遥さんの工場の路地に隠れるようにして入り口があるんだ。

 モグリの医者だから仕方ないよね。

 入り口にはもうすでに5、6人の男が集まっていて、そのうちの一人が足を引きずってうめき声をあげていた。


水中ヘマタイトを磁気でマグネタイトにして無機メタンで還元するのじゃブツブツブツブツ……(SFクラスタ的『業が深いな』)

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