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第四十三話 サラリーマン亘平のひみつ-4

 そうだ、いつもの受付は槙田まきたさんだった。

 女性のネームプレートには「冠城珠ゝ(かぶらぎすず)」と書かれていた。


「そうだ、わたしももう少しで出てしまうので、受付に誰もいなくなります。今日は見学者がいないからいいんだけれど……もし何かお困りでしたら、直接連絡をもらえますか?」


 そういうと、彼女はすっとビジネスリングを取り出した。

 ほっそりした腕に、最新式の、高級そうなリングだった。

 そして、僕はと言えばときのアンティークのリングが思い出されて切なくなった。

 こんど会う約束すらしてない。


「どうしました?」


 僕がリングを見つめたまま一瞬、動きが止まったのを見て、冠城さんは僕をいぶかし気に覗き込んだ。

 ……実際は覗き込んだのではなく、たまたま背丈の関係からそうなったのだけれど、僕は少し戸惑って自分のぼろぼろのビジネスリングとともに腕を差し出した。


 IDが自動的に交換され、連絡できるようになった。

 冠城さんはにっこりと感じの良い笑顔を僕に向け、僕もにっこりと返した。

 そこで僕は冠城さんがとても可愛らしい人だということに気が付いた。彼女は緩やかにウェーブする髪を肩までおろし、ほっそりした体に地球テラブルーのシンプルで上品な博物館の制服を身にまとっていた。

 

 もし同じ格好を怜がしていたとしたら、僕はちょっと意外に思うだろう。

 考えてみれば怜はいつだって動きやすい服装をしていた。

 もちろん、何を着たって似合うだろうけど、こういう可愛らしい服装をもし怜がしていたら……いや、僕は何を考えているんだろうか。

 

 僕はどうやら冠城さんを不躾に眺めていたらしく、彼女はちょっと困惑気味に僕の顔を見た。

 僕はあわてて彼女に言った。


「いや、その制服がお似合いだな、と。あの、じゃ、これで」


 僕は資料室へと向かい、冠城さんはあわてて顔を隠すようにかすかに会釈した。


 僕は資料室でとにかくまず開拓団の歴史から調べることにした。

 開拓団のために製品を作るのだから、それが一番いろいろ疑われずに済むだろう。

 

 いま僕たちは3020年に生きているけど、『開拓団』がやってきたのは23世紀末ぐらいで、『はじめの人たち』と大戦争になった。

 『はじめの人たち』はだから、もし生き残っているならもう千年近く火星の赤い大地で暮らしてきたわけだ。

 かといって、『開拓団』の暮らしも楽だったわけではない。

 23世紀にはまだ火星航路はそれほど発達していなかったし、船も遅かった。


 地球政府と開拓団がどんな関係だったかって……? 『はじめの人たち』がエリートの地球脱出エクソダスだったなら、開拓団は基本的には地球で暮らしにくくなった人たちの移民団だった。

 『開拓団』はだから、本当は地球のセンターの力を借りるのを嫌がったみたいなんだ。


マキタのドリルはよいドリル。

素でたらしをやらかす亘平。ジーナが知ったら……

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