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第四十話 サラリーマン亘平のひみつ-1

 21世紀の君たちは、どんな風に生きているんだろう。

 僕は平凡なサラリーマンだけど、きっと君たちにも僕みたいな悩みがあったんだろうね……。


 僕はほんとうに平凡な『火星世代』だけど、ひとつ平均的でないことがある。

 それは、僕には母親がいないってことだ。

 ものごころついたときは、すでに父ひとり、子一人だった。

 母の話は家庭ではタブーだった。生きているか死んでいるかもよくわからない。

 ただ、父親にとっては母はもうすでに『どこにもいない』存在だったと思うし、僕もそんな風にふるまっていた。


 でももともと火星では家族のつながりは強い方ではないし、それを気にしたことはほとんどなかったけどね。


 だけど、つまり、何が言いたいかといえば僕は女性の気持ちにかなり鈍感なんだと思う。

 鈍感というか……正直まったくわからない。


 あれから僕はジーナの機嫌を損ねないように、会社の資料室をつかって『はじめの人たち』のことを調べることにした。

 ……僕の会社がイリジウムの採掘会社だという話はしたね。

 イリジウムというのは珍しい金属の一つで、プラチナみたいに白くて、とんでもなく重たい。他の金属と混ぜ合わせて、耐熱温度を上げるために使うんだ。

 どういうことかって? 例えば、このあいだ鳴子さんが遥さんに借りようとした『犬』だ。

 『犬』は武器も備えている四足歩行ロボットだと言ったよね? その武器はレーザー銃だけど、銃口にはイリジウムが使われている。瞬時に高熱になるからだ。

 で、イリジウムがどれだけ貴重かといえば、地球なら金の値段の数千倍はするって話だからすごいよね。

 火星ではそこまで高くないけど、恋人にイリジウムの指輪をあげるひともいるよ。

 重たいからそんなに実用的ではないけどね。


 火星でとれたイリジウムは、『センター』が支配する地域に輸出もされている。

 だから、『センター』はイリジウムの管理にはとても熱心なんだ。

 僕たちも、『センター』を守る重要な任務だと思えば胸が熱くなるものなんだよ……。


 そういうわけで、僕の会社には火星でどんな風にイリジウムが発見されて、そしてどんな風に『センター』によって発掘され、管理されるようになったかの資料が保管されているというわけさ。

 でも、みんなが見られるデータじゃない。


 幸い、生産データは資料室の隣の部屋に保管されているから、僕は物理的には難なく資料室に近づくことができる。

 問題はアクセス権だった。

 ただ、僕にも一部分だけアクセス権のあるイリジウムの取引データは『センター』と深くかかわるから、資料室のほうに厳重に保管されているんだ。


亘平のとじられていた過去の記憶が……

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