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第三十七話 日曜日にはネズミを殺せ-2

 細い通路には下の方に小さな通風孔(ジーナが潜り抜けられるぐらいのね)しかなかったが、通りには上の方に人間が潜り抜けられそうな大きな通風孔が10メートルごとに設置されていた。

 背の高い仁さんが何個か通風孔の格子をゆすってみて、いちばん外れそうな場所を探した。

 そして人通りが無くなったのを見計らって、一気に取り外しにかかった。

 格子が外れると、ときは僕の肩に手をかけてまるで鳥のように身軽に通風孔の中へ飛び入った。

 僕はそれにすぐさま続くはずだったけれど、中まで全身は飛び上がれずに怜に引っ張ってもらってようやく登り切った。

 通気口から一メートルほど横穴になっていて、そのあとは大きなホールのような場所に出た。

 怜は僕に懐中電灯のようなものを投げてよこした。

 僕たちは通風孔から横穴を通るときに埃だらけになっていて、思わずかおを見合わせて笑った。

 地上までつながる立て坑がところどころ光を投げかけていたけれど、やはりかなり暗かった。

 目が慣れるまでしばらく僕たちはそこで待った。


「ジーナはなぜ逃げたの?」


 怜は手の中で光をもてあそびながら僕に聞いた。

 僕は首をふってわからないと答えた。


「目が慣れたら、スイッチを入れるわよ。ジーナが素直に捕まってくれればいいけど、逃げたらお互いの合図で鳴子さんのいる通風孔に追い込みましょ」


 僕は素直に言った。


「ジーナのために、ありがとう怜さん……」


「怜でいいわよ」


 怜は機嫌よくそういうと、そろそろだ、というように立ち上がった。


「じゃあ僕も亘平こうへいで!」


 怜はうなずくと、スイッチを暗闇に向かってかざした。


「じゃ、スイッチをいれるわよ!」


怜はそういうと、手元のスイッチをオンにした。


 シーンと静まり返った中に、数分をかけて少しずつ音が響き始めた。

 やがて数個しかけたうちの一番ちかくのネズミが僕たちのところに戻ってきた。

 ネズミの他に気配はない。

 そしてもう数分。

 二個目が帰ってきた。


「仕掛けたのは何個だっけ」


 僕がそう聞くと、怜は八個だと答えた。


 ……三つ目。やはり気配はない。それから十分のうちに六つまで帰ってきた。

 近くのネズミから帰ってくるはずだから、それだけジーナは遠くに行ったということだ。

 ネズミの他に気配を感じたのは、七個目の時だった。

 そもそもそいつは足音がしないから聞こえなかったけれど、暗闇の中にさらに濃い影が走ったのが見えた。


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