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第三十三話 縞々をさがせ-8

「い……っ!」


 僕は思わず大声で聞き返して途中で声を押し殺した。

『犬』は、センターの管理するロボットの中でも際立って特殊だ。

 なぜなら『猫』の捜索だけに使われるもので、それが出るときはつまり、たいていセンターの子猫が行方不明になった場合だ。

 独立式の四足歩行ロボットで、たいてい10体ほどが街に放たれる。

 万が一、テロリストが子猫を傷つける恐れなどがある場合、人間を殺すための道具も内蔵されている。

 『犬』が放たれるときは、人間は家にこもって外に出ない、それが鉄則だ。


「だけどねえ、やっぱりそいつは無理だった」


 鳴子さんがそういうのを聞いて、僕は正直ほっとした。

 なんだかんだ言って、火星世代には『犬』は怖いものだ。


「鳴子さん……鳴子さんには怒られるかもしれないけど、実はあした、ときとここで待ち合わせをしているんだ」


 鳴子さんはいぶかし気に眉を上げた。


「どういうことだい」


 僕はジーナが通風孔に入って逃げ出したこと、そして怜がどうやってそれを見抜いたかを話した。

 それを聞いて、鳴子さんはしばらく考え込んでいた。


「まさか、怜の目的はジーナじゃないだろうね……」


 僕の心臓は、それを聞いたときまるで冷水が流れ込んだかのようにゆっくりと脈打った。


「ジーナ……」


「だって、おかしいじゃないか。怜はあれから『かわます亭』によく現れる。それに、はじめのときはセンター風の格好をしていた。何のためだい……?」


 鳴子さんはそういうと、ふと僕のほうを横目で見て、上から下まで眺めまわした。


「少なくとも、お前さんが目的ではないんだろう?」


 心で泣きながら僕はこう言った。


「怜さんのことは良く知らないけれど、センターではないと思うよ。僕みたいにひょんなことから開拓団が気に入ったのかもしれない」


「とにかく、あの娘には気を付けるんだよ。明日の夕方は間に合えばあたしもここに来るからね。それにしても、いったいどうやってジーナを見つける気なんだい、あの娘は……」


 鳴子さんはそういうと、占いをするために店の奥の席へと戻って行った。


 自分のコンパートメントに帰ると、家の中は何もなかった。出迎えてくれるジーナはいない。

 今日、ここにときが来ていたのが不思議なくらいだ。

 からっぽの藤の椅子、台所に置かれた二つのマグカップ、しーんと静まり返った家の中。

 僕は鳴子さんに何を言われても、怜を裏切れないだろう。

 ジーナのいない寂しさの上に、怜がついさっきまでここにいたことが余計につらかった。

 いったい僕はどうしてしまったんだろう?

 ……そうだ、僕は自分がひとりだってことすら知らなかったのだ。


久々に感想をいただきまして本当に勇気出てきたし頑張る(そして原稿ストックはやばい)

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