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第二十三話 セカンドインパクト-1

 僕たちがいつも集まっている酒場というのは、スタンドバーで、もちろん店の奥には腰かけるところもあるんだけど、たいてい仕事のあとに落ち合って一杯ひっかけたり、ネコカインで時間をつぶしたり、近所の人にあいさつするために立ち寄るような、そんな場所だ。


 彼女は本当にとつぜん現れた。

 僕はそのとき鳴子なるこさんとじんさんと丸テーブルで立ち飲みをしていたんだけど、彼女が入ってきたときみんなが何故か顔を上げた。

 彼女のいでたちはでも他の人とそう変わらなくて、前のように銀色の民族衣装のようなものは着ていなかった。


 まあ、開拓団のひとたちは普段から個性の強い(鳴子さんのヒョウ柄を見ても分かるだろう?)服装をしているから、彼女が最初のときのような格好で入ってきたとしても目立ち過ぎたりはしなかったと思う。


 だけどその日、彼女はむしろセンターに近い人たちのような……何と言ったらいいのだろう、スウェットのような無地のぴっちりした服に、軽く上着を羽織ったような格好だった。


 なぜ酒場のみんなが顔を上げたかって、それはもちろんセンター風というのは開拓団にとってはあまり好ましいものでなかった、という理由もある。


 でもそれ以上に、彼女はありていに言って美人だった。


 そしてみんなの視線は美人を眺めたい気持ちとセンターとはかかわりたくない気持ちのあいだで、せわしなくテーブルの上の食事と彼女の間をせわしなく往復することになった。


 彼女は入って店を見回すと、僕を見つけてニヤリと笑った。


 僕は彼女がなぜここにいるかという疑問と、ニヤリといういささか人をばかにした笑顔と、また首にまだ冷たいナイフの感触とで、彼女がこちらに近づいてくるのをただ見つめることしかできなかった。


「こんにちは」


 彼女は手を伸ばせば届く距離に来て、僕のほうにむかい、こんどは本当ににっこりとしたあざやかな笑顔でこうあいさつした。


 鳴子さんは遠慮なく彼女を上から下まで見回し、仁さんはボサボサのあたまを軽く掻きながら僕を見た。僕はとつぜんの出来事に面食らいながら、でもできごとの風圧に負けないように


「こんにちは!」


 とあらん限りの勇気と爽やかさで彼女にあいさつを返した。


 僕はまるで知り合いを招くかのように彼女をテーブルに招き入れた。

 ……ところで、仁さんという人は開拓団の中でも飛びぬけて背の高い人ではあるのだけど、その横に並ぶと意外と小柄な人だ気がついた。


 鳴子さんは彼女からようやく目を離すと、僕に向かってこう言った。


「よくもまあ、お前さんもやるじゃないか。こちらさまは誰なんだい?」



『とき』の名づけにたぶん数週間なやんだ

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