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第十七話 君が2020年に必要なわけ-終

 もし僕を罰するのが目的なら、センターはいまごろ僕を生かしてはおかないだろう。

 猫に逆らう人間がどうなるかって……?

 僕が知っているたった一つの例は、小さいころの記憶だ。

 僕はいわゆる『火星世代』で、両親ともにセンターとは何にも関係ない普通の市民だった。

 だからもちろん、センターから『子猫』が割り振られることもなかったよ。


 だけど、僕の同級生のところには『子猫』がやってきてね……。

 まいにち同級生が子猫について自慢するのを聞かされたよ。

 その子はたしか地上の第一ポート駅に引っ越して、そして僕もたまに遊びに行くことができた。


 シールド地域は薄い膜でおおわれてるって言ったよね。あの地域の中は空気が濃いから、その膜は自然に丸く風船みたいにふくらんでるんだ。そしてその中には、外では育たない植物たちがさんさんと降りそそぐ光の中で生い茂っている。

 地球に住んでる君たちには何のことはないかもしれないけれど、僕たちにとってそれはとんでもなく贅沢なことなんだよ。

 同級生は、自分の兄弟みたいに子猫を可愛がっていて、僕らみんなうらやましがったものさ。


 それでね、子猫は6歳になるとセンターに渡さなければならない。

 どんなに仲のいい家族でも、それは絶対に守らなければならないことなんだ。


 同級生の家族はそれができなかった。センターが来たときに、逆らったのさ。


 ……それで、どうなったかって? 同級生の家族は、家族ごと、きれいに消えたよ。

 学校の先生が『D君の家はセンターに子猫を渡さなかったので、D君もご家族も引っ越しになりました』って、それだけさ。

 詳しい話は全くなくって、もう誰も何も話せない雰囲気なんだ。


 彼らがどうなったか僕たちは知らない。でも、あのときはみんな当然だと思ってた。

 センターに逆らったんだから。

『宇宙猫同盟』に属する、人間たちみんなのものである『子猫』を、自分たちだけのものにしようとしたんだから。


 でも、今になってようやく、家族を取られるつらさをようやくわかったのさ。

 ジーナを失って、はじめてね。


 センターがなぜジーナを連れ去ったのかって……?

 僕にもよくわからない。でも、最初からジーナはセンターの生み出した子猫ではなかった。それは確実だ。だって、子猫が迷子にでもなろうものなら、夜中でもサイレンが鳴って、人間たちみんなで探すぐらいなんだから。ジーナはセンターに登録されていない子猫なのさ。


 じゃあ、ジーナはどこから来たのかって……?

 それはおそらく、あの日、一年前の今日、僕が出会った人たちと関係があると思う。

 シールドのない荒野にすむひとびとさ……。

 もう何となくわかったろう、彼らは僕たち『火星世代』でも、鳴子さんたち『開拓団』でもない。

 彼らは『はじめの人たち』なんだ。


 センターは彼らの存在を決して認めないけれど、彼らは僕らとは違う暮らしをしているんだ。



そして次回はボーイミーツガール。

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