表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/133

第二話 僕にネコカインが支給されないわけ-1

 さて、昨日はどこまで話したっけ。

 そうだ、僕とジーナの出会いだ。

 そのまえに、君には僕の状況を知っていてほしい。


 人間たちはもう猫に支配されていると話したけれど、それは奴らが「ネコカイン」を独占しているからだ。僕もネコカインがないと生きていけない一人さ。

 『宇宙猫同盟』からは一回の投与で数日はもつカプセルが支給されているけれど、僕はそれを手に入れることができない。

 なぜって……?


 ジーナとの出会いが理由さ。


 ジーナがどんな猫か話したっけ? 灰色のキジトラで、雌だ。まんまる猫でうるさい。

 宇宙猫センターから選ばれた家庭に子猫が来る話はしたよね。


 ジーナはセンターからは来ていない。


 ある日本当にとつぜん、僕の家に子猫だったジーナが現れたのさ。

 言い忘れたけれど、僕の住んでいる惑星は地球じゃない。

 火星なんだ。


 まあ、センター(地球)に近いから立地は悪くないけれどね。

 火星がどんなところかって? ああ、そうか。まだ君たちは火星には住んでいないんだね。

 人間たちは2500年ごろに、火星に植民地を作るんだよ。

 火星に植民地を作るのは本当に大変だった。2800年にはメテオラの悲劇という数万人が亡くなる酸欠事故も起こした。

 大気が十分になかったからだけど、今ではリトル・アースと呼ばれるぐらい水も緑も豊富な惑星だ。まだ宇宙から見ると赤いけれどね。


 そう、そしてジーナだ。

 僕は火星のしがない会社員だ。火星にわずかにあるイリジウムって金属を毎日掘り返す会社に入ってるんだけどね。それを何に使うかは奴らは決して教えてくれないんだ。

 まあ、その金属を掘り返す僕のような会社員は……。

 ふつうはセンターに選ばれないのさ。子猫を受け入れる家庭としては。

 だって僕のように独り身で、会社に行っちゃったら子猫を世話する人もいないからね。

 

 子猫はセンターが割り振るものだ。これは忘れちゃいけない。21世紀の君たちは、どんな風に子猫と出会うんだい……? 僕たちはセンターに『選ばれる』のさ。

 忠誠心によってね。子猫は自然とネコカインをこれでもかって放っている。センターはその子猫を人間に与えて、人間の忠誠心をもっと高めようとするのさ。それに、やがて『管理者』となる子猫にも人間というものを勉強させる機会を与えるわけだ。


 だけど、ジーナは全く違った。


 ある日、ほんとうにある日とつぜん、ジーナは僕の家に現れたんだ。

 夜、いつもの通りインスタントラーメンでも食べようとお湯を沸かしたときにね、家の扉を何かがひっかく音がするんだよ。

 そして、甲高い声でミー、ミー、って鳴くんだ。僕はそれまで、子猫の鳴き声なんか聞いたことがない。

 だから、さいきん会社のやつらがよく見かけるという火星リス(地球から誰かが持ち込んで、ネズミのような生活をするようになったリス)かと思ったんだ。

 けれど、それは違った。

 むかし学校で習った『子猫』だった。

 僕は恐る恐る、子猫を抱き上げた。なにが起こったかは全く分からなかったよ。


 ただ、僕の目の前に小さな子猫がいたんだ。そして、その子猫は薄汚れて、おなかを空かせていた。

 そのとき僕に分かったのはそれだけさ。

 そして、僕は子猫を抱き上げたまま、しばらく呆然としていたと思う。


 21世紀の君たちはそんなとき、どんな気持ちなのかい?



ちなみに主人公が「小説家になろう」というサイトに書いているのは、未来では「小説家になろう」というサイトが最大の読者を抱えていると未来ペディアに載っていたかららしい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 猫好きホイホイ 設定からして猫好きには堪りませんね! 不思議な世界観も相まって、引き込まれてしまいました。 [気になる点] 2020年でもネコカインを補給できないでしょうか(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ