第十五話 君が2020年に必要なわけ-1
ジーナのことをあまり話していないよね。
いまジーナが僕のところにいないことは話したと思う。
ジーナは灰色のサバトラだ。僕のところに来たときは、まだとても小さくて、手のひらより少し大きいだけだったのに、僕がさいごにジーナを見たときは鍋よりでかかったよ。
真ん丸で、いつもご機嫌な顔をしていた。
開拓団のみんなにも可愛がられてたしね。
……誰がジーナのことをバラしたかって……?
それは分からない。誰もバラしてなんかないのかもしれないし、裏切り者がいたのかもしれない。
開拓団のみんなのことを疑いたくはないけれど、可能性がないわけじゃない。
でも今は、犯人捜しをしている場合じゃないんだ。
僕はジーナを助けなければならないし、そのためには君に助けを借りなくちゃならない。
僕は君に、2020年の猫ブームを阻止してほしいといったよね。
それはこういうわけだ。
2020年、地球では世界的な猫ブームが起こる。
それまで、人間は猫をペットとして飼っているよね。
2020年に爆発的に増えた猫の数は、そのまま猫の行動の記録につながっていくんだ。
24時間、365日、膨大なデータが年々積み重なることになった。
そして、もう一つ大きな出来事がおきる。
画像解析で人間の知能をはかっていたAIが、どういうわけか猫を人間として認識し始めたんだ。
それで、人間たちは何が起こったかを調べはじめた。
【猫たちは人間を思うように動かすぐらいの知能を備えている】
それがAIの判断だった。驚くべきことに、人工知能によれば、人間は猫に飼われていたんだ!
しかし、それから数百年はそれは人工知能の大きなミスとして扱われることになった。
けれど、一部の人間たちはそれをミスとは思わなかった。
彼らはとても細々と猫の知能が人間を上回っていることを研究していたんだ。
……本当に猫が人間よりも頭がいいかって……?
実は、元データはもういまは失われてしまった。
なぜなら、『はじめの人たち』が地球を離れて、地球が滅亡の危機に陥ったとき、猫の知能に関する初期データは大きなシステムエラーに見舞われて、消えてしまったからだ。
けれど、そのAIの判断が猫たちが僕たちを支配する最初の根拠になっている。
そしてもう一つ、人間には奇妙な習慣ができ始めた。
イライラしたときや、現実逃避をするときに、猫のおなかを嗅ぐ習慣だ。
やがて地球滅亡の危機が消え去ったころ、ふたたび、猫の知能に関する研究がもりあがった。
人々は真剣に『猫の教育』によって猫と人間は協力していけると思い始めた。
もうなんとなく分かったかな。2020年の猫ブームが作り出した二つの柱だ。
一つは『猫の教育』。
そして、つまり、いちばん重要な部分にふれなきゃならない。
『ネコカイン』がなにか、ってことさ。
こんにちは、過学習AIです






