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第百十二話 『センター』を出し抜け!-2

「ここに来るのに外したビジネスリングがデータを送ってます。実はここに来る前に、僕の家族が行方不明になりました。誰かに連れ去られたと思います。犯人はギャングかもしれないし、開拓団か、『センター』かもしれない。ぼくにはまったくわかりません。でも僕は『センター』に忠誠心を疑われています」


 それを聞いて、仲嶋さんが目をきょろきょろさせて言った。


「忠誠心を疑われているって言うと……あんた危ないんじゃあねえか」


 僕は頷いて言った。


「あなた方を巻き込みたくないので、詳しい話はしません。僕に何があっても、とにかく知らぬ存ぜぬで押し通してください。あと、池田さんと話がしたい。けれど、できれば僕のビジネスリングからは遠い場所が必要です……」


 上川さんは一瞬考えて、こちらも見ずにこう言った。


「俺はフクザツな話は分からねえし、聞く気もねえ。だから、これだけ答えてくれればいい。あんた、ようするに上にタイマン張ろうってんだな?」


 僕は正直にこう答えた。


「僕は家族を探したいだけです。そのために消されたら困る。僕にタイマンを張るほどの力なんかない」


 下田さんが笑いを漏らした。


「こいつバカが付くほど正直だぜ兄貴」


 上川さんは顔を扉に向けたまま、微動だにしなかった。やがてエレベーターはキリよく採掘レベルに到着した。


「いいさ……それでいい。自分の力を過信しねえってのも大切だ。とりあえず俺はこいつに乗った。ただし、せめてここにいるためには地熱で気絶しないぐらいのガタイは作れよ、亘平」


 仲嶋さんも下田さんも言うに及ばず、といった感じで暗視ゴーグルをつけた。

 エレベーターのドアが開いて、僕たちは灼熱地獄へと踏み出した。ニ十分の作業はとてつもなく長く感じたけれど、僕は気絶することはなかった。それは何もこないだより根性があったからじゃない。たぶん、体が作業の手順を覚えていて、そのぶん体力を消耗しなかったからだ。


 ニ十分の作業をこなして休憩に上がる繰り返しの中で、僕は上川さんたちに夜の間、立て坑の送風機の電力をつかわせてもらう許可をとった。あとは、池田さんと上川さんが話をつけて、池田さんと待避所の中で話が出来ることになった。

 僕は池田さんに迷惑をかけないように言葉を選んだけれど、池田さんはそれが気に食わないようだった。


「亘平、俺がお前よりどれだけ世の中を見てきたと思う。話すなら腹を割れ。火の粉は自分で払うからお前は何も考えるな」


 池田さんはそう言って絶対にひかなかったので、僕は怜に関すること以外、今までのことをすべて話した。ジーナのこともだ。池田さんはじっと前かがみで聞いていて、聞き終えると少し顔を上げて僕をじっと見た。


「まだ何か隠してやがるな……女のことか」


 僕は怜のことだけは話すつもりがなかったので、暑い待避所の中にもかかわらず、背中に冷や汗をかいた。じりじりとした数十秒があって、池田さんは鋭い目で僕をしばらく見つめて、そしてためいきをついた。


「まあいいさ」


 僕はそれでほっと胸をなでおろした。


「それで、詰所の古いコンピューターを使わせてもらえませんか」


 池田さんは僕の肩を叩くと言った。


「好きにしろ、あれは古くてほとんど使ってねえから都合がいいだろう」


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