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第百九話 それから



***


 こんにちは、元気かな……。過去に書き送っているから、時間の感覚がごちゃごちゃになるね。これを最新で読んでいるとしたらきっとあのオテロウがビジネスリングを渡してきた話からすぐだと思うんだけど……。じっさい、僕のほうからは一か月以上が経っている。


 最初に言っておかなくてはいけないけど、もう少ししたら僕はこれを書き送れなくなる。その話をするためにこれを書いてる。

 うまくいけば、時間をあけてまた君に手紙を送れるはずだ。でももし、いま書き送ることを最後に……。これが最後なら。

 ……もしそのときは、これはただの未完の小説だったのだと思ってほしい。


 人生って不思議だよね。ただのサラリーマンだった僕が、ジーナと出会って、怜に恋をして、そしてこれを書いているいまはまるで違う人生を生きているようだ。

 まさか自分の人生にこんなことが起きるなんて想像もしていなかった。

 いまこれを読んでいる君はどんな人生を送っている? 平凡な人生かい? 僕はそれを心からお祝いするよ。それとも、じっと苦しみをかみしめながら、嵐が過ぎ去るのを待っているかい? それなら僕とお互いに幸運を祈ろう。

 

 僕が最初に君に書いて送ったときは確かネコカインで酔っぱらっていたね。あのときはじっさい、僕はとてもみじめだった。ジーナはいない。怜は僕を去っていたし、開拓団も信用できなかった。『センター』に与えられたリングはどこまで情報を送っているのか分からない。

 僕ができることは、『センター』への敵意をネコカインでなるべく紛らわせながら、過去へ助けをもとめる手紙を送って、何かが変わるのを待つことだけだった。

 ああ、だけど来る日も来る日も、状況は何も変わらなかったよ。目が覚めるたびにおなじ問題に直面するんだ。でも、いまではそれを感謝している。君に書き送りながら、自分がほんとうに愛する家族や大切な人たちを得たってわかったんだ。

 失ってつらいのは、それが僕にとって大切なものだからだ。


 ビジネスリングという首輪をつけられた僕ができるのは、まずこのリングが送る情報を知ることだった。僕はこのリングをいちど見ていた。珠々さんと連絡先を交換したときだ。珠々さんも『センター』にかかわる人間として、監視をされているのだろう。

僕は『特別管理室』から『センター』付き部署に帰ると、珠々さんに単刀直入にこう聞いた。(だってもう状況が詰んでいることには変わりがなかったからね)


「オテロウからビジネスリングを渡されたのですが、これはどういう情報をどこに送るかわかりますか?」


珠々さんははっとした表情で僕を見た。


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