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第百七話 チェックメイト-2

 池田さんと僕の話し合いはけっきょく決裂した。池田さんは来たときと同じようにひょうひょうとして帰っていき、僕はしばらく考え込まざるを得なかった。

 池田さんが断ったとなると、フェライトコアの種類は限らなければならないかもしれない。なぜなら、池田さんほど金属の生産地域や質、精製後の純度などについて詳しい人はいなかったからだ。

 彼の助けが得られないなら、それぞれの金属について必要な情報を得るのには、膨大な時間がかかりそうだった。つまり、『センター』の計画は大幅に遅れるってことだ。(そして、『センター』はその遅れを、つまり責任者の僕を許すことはないだろう)

 次に打てる手があるとしたら何だろう……。そんな風に僕がソファでうしろに反り返って考えていると、珠々さんが部屋に入ってきて言った。


「山風さん、オテロウがお呼びですけど……」


 どうやら『センター』は僕に時間を与えてはくれないみたいだった。僕はオテロウの待つ『特別管理室』に向かおうと、ソファから重たい体を起こした。

 珠々さんは言った。


「山風さん、『特別管理室』ははじめてですか?」


「ええ、そうです」


 珠々さんはちょっと言いにくそうに口ごもって、だけど言葉を選んでこう言った。


「入り口に、表層の意識アクセス装置があります。オテロウへの敵意がないことを確かめるためです」


 僕は少し考えて言った。


「つまり……僕の考えを覗くわけですか?」


 珠々さんは頷いた。


「セキュリティのためにスクリーニングは数秒で、強い波長しか拾わないようですけれど」


 僕は思わず珠々さんをじっと見つめた。珠々さんも僕を見つめ返した。女性っていうものはみんなこんなにカンがするどいものなんだろうか。珠々さんは僕が何もいわなくても、僕が何か秘密を抱えていることをうっすら感づいているようだった。だからわざわざ警告してくれたのだろう。

 

 池田さんの問題、『特別管理室』のセキュリティ、僕には逃げられるところがもうなさそうに思われた。……そして、僕はいったいどこに追い込まれるのか……? 『センター』が反逆者とみなした場合、その人間がどうなるかは誰も知らなかった。

 僕は回らない頭をフル回転させた。表面上だけでも『センター』への不信感を察知されず、忠誠心を疑われないためには……。


 僕は部屋を出ると、『特別管理室』に向かう前に走って仮眠室へ向かった。そしてネコカインのグミを一粒とると、イチかバチかで『特別管理室』のセンサーをこれで欺こうと考えた……。


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