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第十話 ねこ語翻訳機

 僕をなぜ開拓団が助けてくれたのか……。

 その話には、またあの『シャデルナ』の話に戻らなくてはならない。

『シャデルナ』の女主人はあのファッションだからみんな誤解するけれど、とてもやさしい人だった。でも、言葉遣いは荒いし、僕に対しても言いたい放題だったけどね。


 ジーナと一緒に暮らし始めて4か月くらいになったころかな。

 僕はジーナの『教育』をどうしようか考え始めていた。だって、3020年にはもう猫たちは人間と同じ言葉を話しているのだからね。

 そもそも、猫たちはとうの昔に人間の言葉は理解していたんだ。

 けれど、それを発音することができなかった。

 猫たちはそれを特別な首輪で解決した。

 ……鈴が付いてる? いや違うよ。鈴じゃなくて、翻訳機がついているのさ。


 21世紀の猫は鈴がついているかい? あんまり感心しないなあ。

 猫たちは高い音がほんとうは苦手なんだよ。狩りをしたり、母猫を呼んだりするときにだけ使う音だからさ。


 まあそれはともかく、猫たちは人間の言葉をはなすために、翻訳機を発明した。

 それはこんなメカニズムだ。

 猫たちは喉をゴロゴロ言わせるけれど、その音の長さや高さをアルファベットに変換する。

 そして、人間語に機械が翻訳するのさ。


 ……『こねこのジーナ』は実在したかって? 最初に人間の言葉をしゃべった猫だね。

 初代ジーナは確かにむかし存在していた猫さ。でも、発明された翻訳機を使った猫じゃない。

 教科書には古い初代ジーナを撮影したホログラムが入っているんだけど、初代ジーナは単語カードを使っていた。すごく単純なことさ。

「わたし」「ねむい」「おなかすいた」「おみず」「うれしい」「だっこ」

 なんて書かれたカードを、初代ジーナは的確に選ぶことができた。

 子猫のころから訓練をはじめて、十歳をすぎるころには

「わたし」「たべたい」「オマールエビ」「ゼリー仕立て」

 ぐらいまでは選んだそうだよ。


 うちのジーナ二世はどうかって? うちのサバトラの真ん丸お月さんは、翻訳機をつかってそりゃあ面倒なグルメな要求をしたけれどね。


 それでまあ、とにかく僕はジーナの『教育』のために翻訳機を手に入れようと決心した。

 けれど、例によってすべてを管理しているセンターがこの社会に存在しないはずの『野良』の『子猫』用の翻訳機を製造しているはずがない。


 で、また僕は『シャデルナ』を頼るしかなかった。

 こんなに話に『シャデルナ』の女主人が出てくるのに、服装以外はたいして話していなかったよね。

『シャデルナ』の女主人は、まあ、服装がヒョウ柄だから、それ以外があんまり目に入らないんだよね。

 彼女の名前は鳴無鳴子おとなし なるこさんと言った。

 よく見ると昔は美人だったんだと思うんだけど、笑い方が豪快だし、あのファッションだしでどちらかというと威圧感というか、こちらを黙らせる迫力のある人だ。




具合悪そうなときはほんとにしゃべってほしい。


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