03.準備
東○ドーム何個分て、本物見たこと無いからいまいち規模が分からない。
門をくぐると、そこは石造りの建物の中でした。
ここが、初期スポーン地点なのか。後ろを振り向いてみれば、そこには今私がくぐって来た門があるけれど、あの不思議な光の渦はもう無い。火打ち石で着火すれば、また出るかな?ネザーに行きそうだけど。
とりあえず、まずは周囲の確認でもしてみるか。
私が立っているのは建物の中でも端の方で、地面から3段ほど高い所だ。体育館のステージ、と言った方が分かりやすいだろうか。後ろには勿論、門がある。部屋の広さは、剣道の試合を20試合分、一斉に始めて十分余る広さだ。高さも、バレーボールのボールが引っ掛かる心配が無い高さがある。あれ、落とすの大変だったなぁ。正面には、人が横に10人並んでも余裕のある入り口がある。ちなみに扉は無い。両脇の壁には、等間隔にステンドグラスが嵌め込まれている。太陽と月、陸と海、植物に生き物などが表されていて、なんとなく神話のように見える。
……おや、入り口からボールみたいな何かが飛んで、いや違う、めっちゃデフォルメされたフクロウが飛んできた!
「初めまして、こんにちは!ぼくはチュートリアル・ナビゲーターのガイドって言うんだ、よろしくね!」
なんと、この可愛らしいフクロウはチュートリアルのナビゲーターなのか……運営のネーミングセンスには突っ込まないぞ。
「ガイドくん、こんにちは、初めまして。私はゲンジと言うんだ。こちらこそ、どうぞよろしく。」
「ゲンジさんだね、覚えたよ!早速だけどゲンジさんには、この世界「ウェルユシー」で活動できるようにするために、パスポートもとい、プレイヤーカードを出してもらいたいんだ。最初だし、まずは「メニュー オープン」と言ってみて。」
ガイドくんに言われた通り「メニュー オープン」と言うと、目の前にパッとメニュー画面が出てきた。今回は声を出して操作しているけど、頭で「メニュー オープン」と念じても出るんだとか。逆に、閉じたい時はメニュー以外も含めて「○○ クローズ」と言えば良いそうだ。分りやすいね。
「画面が出たね?それじゃあ次は「インベントリ オープン」と言ってみて。そうしたら、インベントリの画面が出てくるよ!その中にプレイヤーカードが一番上の方に入っているはずだよ。」
「インベントリ オープン。うん、プレイヤーカードがあったよ。次はどうすれば良いのかな?」
「うんうん、じゃあ次はそれをタッチして、ドラッグ&ドロップするんだ。ポンっと出てくるよ!」
また言われた通りにしてみると、さっきガイドくんも言っていたけれど、パスポートみたい……というかパスポートだな、これ?便宜上プレイヤーカードで通すが、出てきた。
ふむ、最低限の情報が書かれてるのか。カバーは黒地で、金色で縁が品良く飾られている。中には、私の名前と、いつのまに撮られたのかアバターの顔写真が入った白い硬質なカードがある。カバーに対してカードは、なんかちゃっちいな。
「出せたね!今回はメニューからやっていく方法を教えたけど、旅人のカバンを開ければ、インベントリを即座に開けられるようにもなっているよ。」
「へぇ、そうなの?」
「そうなの。ストレージに何個入っているのかすぐに分かるのは、メニューから出すインベントリだけど、すぐに中身を取り出したい時はカバンからの方が便利だよ。」
スキル選びの時の巻物と似たようなものかな?雰囲気のため。まあ、急にポンっと出すより、カバンから出した方が雰囲気あるよね。効率重視のものは、また別にあるそうだけど今は横に置いておこう。
「なるほど。それで、次はこれをどうすれば良いのかな?」
「次は、ぼくの方にプレイヤーカードを開いてみせて。うん、そのままでちょっと待ってね。
──プレイヤー名:ゲンジとプレイヤーカードを照合します。照合完了しました。続いて、ウェルユシー活動許可申請開始。申請が受理されました。活動許可マークを発行、プレイヤーカードに押印します。作業が完了しました。
はい、これで職務質問された時なんかに使える身分証明書になったよ!」
さっきまでは名前と顔写真以外何も無かったカードに門と翼、太陽と月が混ざったマークが入っている。これで、問題無く活動できるのか。
「プレイヤーカードは、貴方が門人だという証でもあるよ。他にも、就職やギルドでの素材の売買とか、色々な面で使用することになるから、大事にしてね!」
「うん、大事に使うよ。」
早速、大事だからインベントリにしまっちゃおうね。
ちなみに、門人というのは「ウェルユシーへ繋がる門を開ける術を手に入れた者。門を通り、ウェルユシーに訪れる者」を指す。まあ、つまりはプレイヤーのことだ。姿こそ原人だけれど、本質が違うからね。プレイヤーカードが必要になるのもこういう設定付けからなんだろうね。
「さあ、次は外に出て初戦闘をしてもらうんだけれど、その前に武器を装備してみよう!本来なら、ぼくがプレイヤーに武器を渡すんだけれど、ゲンジさんは予約購入特典持ちだね。なら、インベントリをもう一度開けてみよう。そこに「予約購入特典:特別セット」ってうのが入っているから、取り出してみて!」
もう一度インベントリを開けてみたら有ったよ、予約購入特典。いつの間に。まあ、いっか。
で、取り出してみたんだけど、4つのプレゼントボックスで1セットなもんだから、まとめて入れていた箱が大きい。
「取り出せたね。プレゼントボックスも4つで、うん、合ってるね!それじゃあ、まず一つ目はこれ「初心者用回復アイテム」。中には「体力回復薬」と「魔力回復薬」が、それぞれ20本ずつ入っているよ。」
「「体力回復薬」と「魔力回復薬」…うん、各20本、ちゃんとあるね。」
瓶の中には、いわゆるポーションとマナポーションだね、それが入っている。
「体力回復薬」は飲むと体力を30回復するアイテムで、「魔力回復薬」は飲むと魔力を30回復するアイテムだ。序盤も序盤ならこれで良いんだろうけど、どっちも、飲まないと効果が出ないし、リジェネ効果も無いから、その辺気を付けないとなぁ。
「お次は、「お得な装備セット」!これは選択式でね、好きな装備を頭から足までの1セットをフルで貰えちゃうんだ!性能は初心者から中堅になれるかな?ってレベルまで使えるものだよ。」
「それなりに長く使えるものなんだね。」
「そう。メリットは初期装備より、もちろん優秀な事!ただ、初心者装備と違って耐久値があるから、その辺りはデメリットかな。あと、まだ強いのは少ないけれど、プレイヤーメイドのものには少し劣るっていうところもだね。」
まあ、その辺は予約購入特典持ち一強になっちゃあ、バランスがおかしくなるだろうし、生産職がやる気無くすだろうからしょうがないね。
さて、お話してても物は出てこない。選んで行こうか。
目的は釣りだけれど、衝動で何したくなるか分からないからなぁ。奇行を見られたくないんだよね。<気配遮断>取った理由もそこが主だし……お?シリーズでまとまってるのがある。釣り人シリーズなんてものもあるけれど、ほうほう……これ良いかも。見た目も好みだし、今の姿に合う。うん。
「この「隠者シリーズ」にするよ。」
「早いね?決定したら変えられないけれど、本当にそれで良いのかな?」
「うん、装備はこのシリーズが私に合っていると思ったからね。」
「分かったよ。それじゃあ、早速装備しよう。ほいっ!」
おお、あっという間に装備が変わった!びびでばびでぶー、なんてな。さて、ちゃんと全部変更されているか確認しようかね。確認は大事。
ステータスオープン!
─────────────
【装備】
頭:隠者の頭巾 ─◆効果:知識系スキルにプラス補正・小を付与/魔法攻撃力+2
胴:隠者のローブ─◆効果:<気配遮断>にプラス補正・中を付与/魔法防御力+2
腕:隠者の腕輪 ─◆効果:魔法攻撃力+1
手:隠者の手袋 ─◆効果:製作系スキルにプラス補正・小を付与/魔法防御力+1
腰:隠者の腰ひも─◆効果:なし
脚:隠者のズボン─◆効果:魔法防御力+2
足:隠者の革靴 ─◆効果:効果:靴に付いている飾りに魔力を込めると、一定時間サイレント効果を靴に付与する。/魔法防御力+1
─────────────
だいぶ魔法寄りになったけど、オッケーオッケー。
「うん、大丈夫だね。それじゃあ、お次は何かな?」
「お次は「お得な武器」だよ。」
セットが付かないのは……仕方ないね。セットになるのとならないのがあるからね。
さて、メリット・デメリットは装備と同じだ。ちゃちゃっと選んで行こう。
隠者シリーズで魔法寄りになってはいるけれど、一応スキル<杖術>も持ってる。となると、魔法使いみたいな杖はちょっと扱いにくい。ただ、本当にただの棒みたいなのは遠慮したいだよなぁ。ちょっとおしゃれなのを……お、魔法伝達も良く、軽くて丈夫な杖だと?見た目も良いね。よし、これだ!
「武器は「ムーンウッドの杖」に決めたよ。」
「それで間違いないね?」
「間違いないよ。これが良い。」
「うん、それじゃあ、ほいっ!」
出てきました、「ムーンウッドの杖」!
見た目は私より50センチ高いただの木炭みたいだけれど、淡く白く輝いている。棒の先には青い布が巻かれていて、留め具のようにラブラドライトとムーンストーンかな?その2つの石が使用されている。シンプルだけど、うん、こういうの好きだ。
「さて最後だね。これは「お得な趣味セット」だよ!まあ、趣味セットとは言うけれど、ちょっとした便利グッズと思って。簡易キャンプセットとか簡易登山セットとかあるからね。」
「数が多そうだねぇ。」
「うん。ぶっちゃけると、予約購入特典の中では一番数が多いのはこれなんだ。人によって好みは違うからね。多少絞りはしたけれど、必然的に多くなっちゃたんだ。」
趣味は本当、人によって違うもんねぇ。多くなるのは必然だ。
まあ、とりあえずだ。
「私は、やりたいことが決まっているからね。えーと……あった、これ、この「簡易釣りセット」を選ぶよ。」
「ゲンジさん、<釣り>スキル持っていたもんね。でも、お仕事だから聞くね?そのセットで良いんだね?」
「うん、もちろんだよ。」
「うん、それじゃあ、これをほいっ!」
ガイドくんの掛け声と共にパッと光ったけれど、おや?何も変化が無いぞ?
「最後のセットは、ゲンジさんのインベントリに直接入れたよ。確認してみて。」
なるほど、インベントリ内に直接送られたから目の前に無いんだね。なら確認しよう。
インベントリオープン!
─────────────
【インベントリ】
プレイヤーカード──1つ
体力回復薬 ──20本
魔力回復薬 ──20本
簡易釣りセット ──1つ
◆セット内容:魔竹の釣り竿/餌(ケース入り10個)/タモ/釣り針(予備含め5個)/釣り糸(予備含め3つ)
─────────────
うん、オッケー!
「確認できたよ。ありがとうね、ガイドくん。」
「いいえ、どういたしまして!あ、そうだ、これは全プレイヤーに聞いている事なんだけれど、ゲンジさんは「旅人のカバン」から別のカバンに変える?」
「そんな事できるの?」
「うん。このままでも良いっていう人は勿論いるんだけれど、今後の装備や見た目に合わせて今の内に変えたいっていう人の為にね。現に、ゲンジさんの今の恰好とカバンが合っていないでしょう?」
言われて背負っているカバンを降ろして見てみる。確かに合わない。うーん、そうだね。
「折角だから、変更しよう。種類はどんなのがあるのかな?」
「さすがにちょっと、数は少ないんだ。ただ、性能は「旅人のカバン」と同じだから、安心して。」
ガイドくんが言いながら片翼をバサッと広げると、カバンの見本だね、それがふわふわ浮かびながら現れた。ほー、リュックサックからポーチみたいなのまであるんだねぇ。どれが良いかなぁ……あ、これ良いな。
「よし、この「釣り師のウェストポーチ」にするよ。」
「これだね。確認だけれど、本当に変えていいんだね?」
「今の恰好に合うからね。お願いするよ。」
「分かったよ。じゃあ、「釣り師のウェストポーチ」をどうぞ!」
これは直接渡されるのね。さっきまであったカバンは自動で回収されていったか。
とりあえず、早速つけてみようか!……うん、革製のベルトにウェストポーチだけど、良い感じに合っている。満足!
「よーし、これで準備ができたね!遅くなっちゃったけど、今度こそ戦闘チュートリアルだよ!」
おっと、そうだった。うっかりうっかり。
ムーンウッドの杖を持ち直して、と。
「うん、行こう!」
お爺ちゃん、戦闘頑張っちゃうぞー!
ステータスは次回まとめて。