02.キャラメイク
行き当たりばったりで2話目
『生体情報、確認開始──確認、完了しました。ファンタジーライフへようこそ、菊島 源子様。私は菊島様のナビゲートを担当します、タルクと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。』
「あ、はい。ご丁寧にどうも。」
ギリギリで予約購入出来た菊島 源子こと私です。
無事に「ファンタジーライフ」を予約購入できたけれど、サービス開始初日に身内関係で少々ごたついたせいで、プレイ開始に一週間も遅れてしまった……今は待望のゲームをスタートして、ナビゲーターのタルクさんとご対面したところだ。
しかし、今の技術って凄いね。VRゲームは随分前に触ったっきりだったけど、AIがここまで流暢に話すようになったんだね。
それと、タルクさんめっちゃ美人。身体は高くモデル体型で、少し青みがかった銀髪の長髪で、健康的な白さの肌。目は少しだけ垂れ目で、瞳の色はアメジストの様な美しさのある色をしてる。服装はギリシャ神話の女神辺りを髣髴させるものだ。彼女自身が女神のように思うほど、本当に美人だなぁ。技術者の並々ならぬ情熱を感じるわ。
『まず初めに、菊島様にはファンタジーライフの世界・ウェルユシーにて活動する為のアバター作成をしていただきます。種族に関しましては、あらかじめ告知されております通り、原人のみとなっております。ご了承ください。それでは、こちらが菊島様のアバターのデフォルトになります。』
そう言ったタルクさんの隣がパァッと光ると、私そっくりのアバターが現れた。うん、フルダイブ型VR専門店で身体データ更新したかいがあった。
成人女性の平均身長に肩甲骨まで伸ばされた黒髪、細くも無く太くもない、いたって平凡な容姿。
「確かに私だ。うーん、どういじってみようか……そうだ、確か性別を変更するのって可能なんですよね?」
『はい、可能です。性別を変更なさいますか?』
大半のVRゲームでは、女性は女性アバター、男性は男性アバターのままで作成する。その方が身体的な違いが無く、操作がしやすいからだ。だが、なんとファンタジーライフは自分がやりたい性別に変更できるのだ。このゲーム会社の技術力によるものである。リベライト社様様である。
なお、ゲーム内世界観的な理由付けは、プレイヤーの設定が「ファンタジーライフの世界に適応した姿に変えてやって来た者」というものがあるからだとか。ちなみに、性別によるステータスに差は無い。
種族はタルクさんも言っているけど、原人オンリーだ。
原人とは、ファンタジーライフにおけるホモサピエンスのことを指す。
あれ、適応する姿に変えるんじゃ無かったんじゃないかって?私らが元々人間だから、原人にしか適応されない云々…詳しくは公式サイトを読み込まないと分からない。
とりあえず、それは置いておいて。
「男性に変更してください。」
せっかくだから変更するよね!
『承知しました。菊島様のアバターの性別を男性に変更します──変更が完了いたしました。』
「男だと、私ってこんな風になるんだ。うんうん、いいねいいね!」
『性別変更のみでアバター作成を終了なさいますか?』
「あ、まだいじるので待ってください。」
『承知しました。それでは、分からない事があれば、遠慮なく申してください。』
「ありがとうございます。」
さてさて、どう自分のアバターを料理するか。
お、どのくらい老けさせるのかもあるんだ。これによる弊害も無いとなればやるよね!まずは試しに最高の100歳にっと……流石によぼよぼだなぁ。もうちょっと適度な歳に……73歳くらいが好みだな。紳士っぽくなった。
歳はこれ位にして、身長は見栄張って187㎝でどうだ!うん、我ながらかっこいいね。これに鼻の下のヒゲに顎ヒゲ付けて……うん、ちょっと有名な魔法学校の校長に近くなったな。手足とか腰も微調整して……イケジジが目の前に居る。うん、これは良いなぁ。でも、うーん、これはこれで好みだしやってみたいけど、私がやろうとしてる事で、この見た目は詐欺だな。見た目強そうなのに弱いのはなぁ……。
よし、逆に身長をめっちゃ低くしてみるか。ふむ、100㎝が限界か……イケジジが一気に妖怪化したな。でも、この身長でいじってけば、良い感じになるかも。手足も違和感無い程度に短くして……ちょっとお腹出した方がバランスよくなりそうだなぁ。出すか。うん、良い感じ。顔は、鼻はちょっと丸っこくして、目はつぶらな瞳で……そうだ、眉を少し長くしてみるか。それで、ヒゲはこうして……あ、髪型どうしよ……ソフトモヒカンって言ったかな、あれにしてみよう。
「……よし、出来た!」
私の目の前には、ちっちゃいお爺ちゃんがちょこんと立っている。なにを隠そうも隠してないが、私のアバターだ。見た目が森の妖精 ノ○ムに近い感じになったけど、私としては満足だ。
『アバターはこれで完成でしょうか?決定しますとこれ以降、変更は出来なくなります。よろしいですか?』
「はい、これでお願いします!」
『承知しました。それでは、アバターを菊島様に適応させます────適応完了しました。』
タルクさんがそう言うと、私の視線が一気に低くなる。手を目の前に持って来てみると、しわしわのちっちゃい手がある。凄い、私お爺ちゃんになったよ。ヒゲが思いの外ふわっふわだぁ。
『次は菊島様のステータスの振り分けとスキル選択になります。現在はこのようになっております。』
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【Name】未設定 Lv.1
HP:100/100
MP:100/100
【Status】
物理攻撃力──10
物理防御力──10
魔法攻撃力──10
魔法防御力──10
敏捷値 ──10
器用値 ──10
(残りStP30)
【戦闘スキル】
【生産スキル】
【控えスキル】
(残りSkP10)
【装備】
頭:なし
胴:旅人の服
腕:なし
手:なし
腰:旅人のベルト
脚:旅人のズボン
足:旅人のくつ
アクセサリー1:
アクセサリー2:
所持品:旅人のカバン
【武器】
なし
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当たり前だけどステータス以外ほとんどすかすかだ。
まあ、とりあえず。
「先にスキル選択したいです。」
ステータスはスキル決めてからやった方が事故らなそうだし、ちょっとした指標になる。多分。
『承知いたしました。それでは、こちらがスキルの一覧表になります。スキルは、スキルポイントを支払う事で取得できます。取得したスキルは、戦闘と生産それぞれ10個をセットできます。ゲーム開始後となりますが、どちらも11個目のスキルを取得された時に、11個目のスキルは【控えスキル】へ自動的に移動します。ちなみにスキルの入れ換えは、戦闘中と特殊な状態を除き、いつでも可能です。』
まさかの巻物が渡された。雰囲気出すためかな。戦闘と生産でタブ分けられてるけど。雰囲気……まあ、いっか。
えーと、生産から<釣り>は確定として……よし。
「スキルはこれで決定します。」
『承知しました。スキル欄に反映します。』
ちなみに選んだのはこれ。
【戦闘スキル】
<杖術─Lv.1><火魔法─Lv.1><土魔法─Lv.1><気配遮断─Lv.1><気配察知─Lv.1>
【生産スキル】
<釣り─Lv.1><採取─Lv.1><生物知識─Lv.1><植物知識─Lv.1><料理─Lv.1>
戦闘スキルに関しては、火魔法以外は適当に。
生産スキルは<釣り>は勿論だけど、知識関係が無いとなんて名前なのか、食べられるのか分からないといけないから2つの知識系スキル。<料理>は勿論食べるために取った。ゲーム内だとしても出来たてが食べたい。
『ステータスのスキル欄に反映されました。続きまして、ステータスにステータスポイントを振られますか?』
「はい。あ、なにか注意しておくことってありますか?これだけは止めておいた方が良いとか……なにぶん、この手のゲームをやるのは久し振りなもので、仕様の違いがとか。」
『そう、ですね……ステータスの中にHPとMPとがありますね?これはHPが体力、MPが魔力と、それぞれを指しています。そして、HPは物理・魔法防御力、MPは物理・魔法攻撃力のそれぞれの数値を計算してHPとMPに加算されます。』
「加算されるんですか。」
『詳細は明かせませんが、そうです。例えば、とある方が物理防御力にStPを全て入れたとします。そうすると、HPは勿論上がります。』
「上がらなきゃ、修正しないとですもんねぇ。」
『修正が見つかったら私たちの開発者は泣きながら徹夜ですね。それは置いておきまして、先程例に上げました物理防御力に全振りですが、物理防御力に振っただけあり、その方は物理攻撃に対しては強くなります。ですが、魔法攻撃力に極端に弱くなります。』
「ああ、体力には問題無くても、防御は物理にだけ振ってあるんですもんね。」
『そういうことです。決して、それが悪い訳でも、やるなとも言いません。ある種のロマン構成ですから。それに、ある程度なら装備やスキル、アイテムなどで補助もできます。ですが、自身のやりたい事と構成が合わない振り方はなるべく止めるべきかと。』
「分かりました。今の話を参考に振ってみます。」
『参考になれたのでしたら、嬉しい限りです。』
タルクさんの微笑みが美しいわぁ。眼福。さてさて、見惚れてないで振りますかね。
今のところ釣り以外の目的が無いにしろ、なんの衝動が来るのか私にも分からないし、ある程度対応出来るようなステータスが良いのかなぁ。戦闘は、避けられるのは避けたいし……。
うん、こうしよう。
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【Name】未設定 Lv.1
HP:100/100
MP:160/160
【Status】
物理攻撃力──15(+5↑)
物理防御力──10
魔法攻撃力──15(+5↑)
魔法防御力──10
敏捷値 ──25(+15↑)
器用値 ──15(+5↑)
(残りStP0)
【戦闘スキル】
<杖術─Lv.1><火魔法─Lv.1><土魔法─Lv.1><気配遮断─Lv.1><気配察知─Lv.1>
【生産スキル】
<釣り─Lv.1><採取─Lv.1><生物知識─Lv.1><植物知識─Lv.1><料理─Lv.1>
【控えスキル】
(残りSkP0)
【装備】
頭:なし
胴:旅人の服
腕:なし
手:なし
腰:旅人のベルト
脚:旅人のズボン
足:旅人のくつ
アクセサリー1:
アクセサリー2:
所持品:旅人のカバン
【武器】
なし
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あれだ、当たらなければどうということもないっていうやつ。火力は足りないけど、なんとかなるなる……次は<回避>を取ろう。
「ステータス振り終わりました。」
『決定されますと、以降は初期ステータスの振り直しはできません。これで宜しいですか?』
「はい、それでお願いします。」
『承知しました。ステータス欄に反映します───完了いたしました。最後に、菊島様のプレイヤーネームの登録となります。もうお決まりでしょうか?』
「はい。ゲンジ、で登録お願いします。」
小さい頃、源子を一発で読める子があまり居なくて「げんこ」や「げんじ」って言われてたから、そこから貰ってきた。
別に珍しい名前でもないから、名前かぶりがあるだろうけど、このゲーム、名前かぶっても使用できるのはありがたいね。
『プレイヤーネームの登録が完了しました。それでは、菊島様改めましてゲンジ様、こちらの門を通りますと、ファンタジーライフの世界・ウェルユシーがあなたを迎えます。冒険者になるのも、生産者になるのも、ゲンジ様の自由です。私の役目はここまでですが、ゲンジ様の生活が良いものになることを祈っております。』
タルクさんの後ろに、白く荘厳な門が現れ、門の中心では、不思議な色をした光が渦巻いている。もうこれだけでワクワクする。
「タルクさん、ありがとうございました。めいっぱい楽しんできますね。お元気で!」
『はい、ゲンジ様もお元気で。』
門に向かいながらぶんぶん手を振りながら言ったら、タルクさんが小さく手を振り返してくれた。ここだけしか会えないのはちょっとさみしいけれど、ゲームを楽しむのが彼女にとって一番良いことだろう。
さあ、「ファンタジーライフ」を楽しむぞー!
最終的にこんなステータス。今後は長いから極端に変わった時や、一部だけ表記になる。
【Name】ゲンジ Lv.1
HP:100/100
MP:160/160
【Status】
物理攻撃力──15(+5↑)
物理防御力──10
魔法攻撃力──15(+5↑)
魔法防御力──10
敏捷値 ──25(+15↑)
器用値 ──15(+5↑)
(残りStP0)
【戦闘スキル】
<杖術─Lv.1><火魔法─Lv.1><土魔法─Lv.1><気配遮断─Lv.1><気配察知─Lv.1>
【生産スキル】
<釣り─Lv.1><採取─Lv.1><生物知識─Lv.1><植物知識─Lv.1><料理─Lv.1>
【控えスキル】
(残りSkP0)
【装備】
頭:なし
胴:旅人の服
腕:なし
手:なし
腰:旅人のベルト
脚:旅人のズボン
足:旅人のくつ
アクセサリー1:
アクセサリー2:
所持品:旅人のカバン
【武器】
なし