その3 俺、死んだっぽいわ。
短いので明日また更新します。
丘の上から、その集落ーーというか人の集まる場所までは、簡単に見渡せた。というか、俺の目にはその集落はまだ、集落にもなっていないように見えた。
「どこかに移動中かなぁ。」
牛車や馬車が、物資を詰んでごろごろと進んでいる。俺たちはその後をついて歩いている。
昨日集まっていた場所から、もうすでに移動が始まっているのだ。だから昨日の明かりは、もう暗くなったからこのあたりに集まって寝よう・・・というキャンプだったらしい。
馬車の後ろを人間達が歩いていて、所々で種もみをまいたりしている。
「ヒデくん、あれ何してるんだとおもう?」
朱美は、最後尾の馬車のさらに後ろを歩きながら言った。
「うーん、わかんないなあ」
俺は首をひねる。集団がやっていることの理由が何もわからない。どうして種もみを蒔いているのかも、移動しているのかも俺にはわからない。
「あっ、ひょっとして儀式かなぁ?朱美も何か捧げた方がいい?」
朱美が前の集団にならってポケットから携帯食料を出そうとするのを僕はすんでのところで止めた。
「やめろよ、どこの世界に、貴重な食料を道すがらばらまくアホがいるんだ」
大声を出したそのとき、しんがりを守っていた、ひときわでっかい体つきをしたおじさんがこちらを振り返りーー「アホ、で悪かったな、旅の人よぉ」と言った。
俺は、現実世界でトラックにひかれたときよりずっと強く、ずっと激しく「俺、死んだっぽいわ」と思った。