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このままヒロインを乗っとる!

スミマセン。

遅くなりました!全ては年末の納期の性です。

…言い訳です。御免なさい。

けど!だって!でも!!忙しかったんですorz

という小学生並みの言い訳を使わせてください(T_T)

命がけの綱渡りの先に手に入れた金はそれだけで重みがある。

イリヤは上機嫌に鼻歌を歌いながら入りくんだ路地裏を進む。

ここで生まれて、ここで妹と育った。イリヤにとっては慣れ親しんだクソッタレで最低な地元だ。

裏道の裏まで知っている。

だからこそ、それが過信を生んだのかもしれない。

いつもなら女の声の叫び声を聞けば周囲を警戒した。

普段なら進行方向先で道が合流しているなら一度、立ち止まりチンピラの存在を確認した。

それなのに、イリヤは今日に限ってそれを怠った。

そして、不幸に遭遇した。

現在、イリヤの目の前には高級そうなドレスを着た美少女が黒のスーツに身を包んだ男達に羽交い締めにされて、黒光りする高級車に無理矢理に押し込まれうとしている図だ。

―――面倒くさい。

一瞬で厄介ごとに巻き込まれると判断したイリヤは回れ右をして全力で走る。

それは、脱兎と言って良い。

長年の経験からこの絵面は非常にまずい。

十中八九、金持ちの悪事だ。

車なんて高級品はスラムには存在しない。金持ちからの仕事なら内容次第で歓迎する。

しかし、この町の有って無いようなルール。

マフィアの縄張りとかパワーバランスなど、お構いなしに金持ちはやりたいことだけやって逃げる。

政治家や警察やら国家権力の奴がゲスなのは万国共通だという信念のもと、イリヤは金持ちとの仕事以外の接触は嫌っていた。

後ろからかなり大きな銃声が響く。

音の発生源は見なくてもわかる。それが威嚇なのか下手なのかまでは確認出来ないがイリヤは近くの路地に飛び込んで命中を避けた。

後はひたすら走るだけだ。

背後からさっきの銃声を皮切りに次々と発砲音が惜しみ無く放たれる。

コートのしたに吊り下げてある自慢の金属バットも拳銃も役に立たない。

何せ、スーツの男達はそれはそれは素晴らしい体つきをしていた。よくてスポーツ選手、悪くて軍隊。

―――ケンカをしても勝てる気がしない。

イリヤは全速力で走る。

後ろから男が追いかけてくる事実なんて知りたくもなかった。

足の早さには子供の頃からスリで鍛えたため自信がある。

だが、そんなことも関係なく男の一人は後ろからイリヤの肩を掴む。

そのまま力ずくで引き寄せられる。相手は右手で左肩を掴んだため、そのままイリヤは捻りを入れられ半回転する。

本人がその理屈に気付いた時には腹に重い拳がのめり込んだ。

肺から一気に萎み空気が吐き出され、次いでばかりに胃の中のものまでせり上がった。

痛みのその場に崩れ落ちる。

酸素を欲して息を吸おうとするくせに胃からは朝飯だか、昼飯だかが盛大に吐き出され、呼吸困難になりそうだ。

胃の中が空になり、スーツの男の表情を伺おうと顔を上げようとしたときにイリヤの記憶は途絶えた。



ガキの頃だ。妹がいた。

子供の頃からイリヤな妹の為に毎日、一般街に並んでいるパン店から商品を盗む事に始まりスリや薬の受け渡しなど、金になることは全部やった。

それは妹と同じだったから文句はなかった。

だか、年頃になって出来る仕事の選択肢に娼婦が入った時は二人とも喜んでその仕事に食い付いた。

娼婦なら上手くすれば一晩は屋根のある場所で寝らるからだ。

その頃からだ、身長も顔つきも胸も妹だけがどんどん成長していった。

妹はその後、娼館で雇ってもらう事になり、取り敢えずの衣食住は困らなくなった。

それは姉であるイリヤにとって喜ばしいことで、姉であるイリヤもそのおこぼれにあづかり、同じ娼館で仕事をすることになった。

妹はその体と甘え上手な性格ですぐに人気娼婦に登り詰める。

それと真逆でイリヤの客はさっぱりで、たまにくる客は妹と間違えて指名したと言う奴ばかりだった。

それでも、スラム街で殴られ犯され金をむしりとられる生活よりはましだ。

だから妹をひがむ事なんてなかったはずだ。優位な立場に昇っていく妹にはひがみなんて無縁な話だと思っていた。


数年がたって娼館の生活に慣れた頃に事件は起きた。

娼館の附属のバーで妹が歌っていた時に当然、客の一人が殴りかかってきたのだ。

現場に居合わせたイリヤが妹に拳が届く前に近くにあった酒瓶を男に投げつけてやった。

男はひるみ、その隙に逃げる妹とトドメ飛ばかりに男に殴りかかるイリヤ。

男が動かなくなった頃には辺りは騒然としていた。

ドン引かれたと言い換えれば分かりやすいかもしれない。

今思えば、ドレス姿の女が男に馬乗りになって顔面殴りまくっていれば確かにそうなるかもしれない。

妹を視線で探せば蒼白になって幽霊でも見たかのように、恐怖なんだか驚愕なんだかで、ひきつった顔をしているのだけはみてとれた。

―――やっちゃったぁ~。

と、困ったように笑いかければ妹は肩を震わせイリヤから視線をそらす。

こんな反応は初めて見た。

そんなにヤバかっただろうかと、イリヤの下で伸びてる男を見直すが別に良い身なりでもなく、ハンサムな訳でもない。

ならば妹は何故さっきから他人を降りをしてるのだろう?

そういえば娼館に勤めてから数年、妹とまともに話をしていない。

「……イリア?」

"どうしたの?"と意味を込めて名前を呼ぶ。妹はその声に体を固め、イリヤを睨み付ける。

「…イリヤなんか居なければ良かったのに!!死んじゃえ!!!! 」

叫んだ妹の声はやけに大きくバーにこだました。

その後、走って部屋に逃げる妹に後ろ姿がイリヤの見た最後の姿となった。

意味がわからず目があったバーデンダーに聞いてみたが奴は首を横に降るだけだった。

それから崩れ落ちるのは簡単だった。

Missエリザベスに娼館を追い出されてスラムに戻った。

そこでもギャングの使いっぱしりばかりで、頭に来てマフィアに情報を売った。これがきっかけでガラッドと知り合った。

仕事の面倒や薬の横流しなど、色々と世話になった。

そして、ニコラスとも知り合った。

あの可愛らしい、御姉さんがほっとかない子犬っぷりで掃除屋とは恐れ入った。

アイツの仕事を最初に見たときは開いた口が塞がらなかった。

―――そういえばニコに変なこと言われたなぁ。

それからハンスと知り合って、からかうと反応するアイツが面白くて事あるごとにちょっかいを出した。

―――ガチで走馬灯になってきた。

最近の記憶にまでは近づくと多少なりとも意識がはっきりしてくる。

本気でヤバイかもしれない。

イリヤは思い出もそこそこに夢から覚めようと体に力を入れて、まぶたを開けようとする。

しかし、まだ夢の中に居たのかまぶたは接着剤でくっついているみたいに開く気配がない 。

これは完全に二度寝のパターンだ。

イリヤが目を開けるために一層こめかみに力を入れる。だが、なんだか心地好くて睡魔の誘惑に勝てる気がしない。

―――これじゃぁ、仕事の待機中に居眠りしてるニコラスと同じだ。そういやぁ、イリアも寝起きが悪かったっけぇなぁ。

そこまで考えて驚愕した。今、妹よりも先に友人の事を先に思い出してた自分がいた。

昔は妹しか近くに居なくてふとした拍子に妹を先に思い出して居たのに。

そういえば妹のスッピンがまともに思い出せない。

妹が姉の前でも化粧を取らなくなったとは何時からだろう?

妹から話しかけなくなったのは?

『イリヤは僕と似てるね。大切なものは結構あるけど一番ためならそれをゴミのように捨てられるタイプ』

―――なんで、アイツの言葉を今思い出す…?

ニコラスと最初に仕事をしたときの事に死にかけた仲間を見殺しにした。

そいつとは別段、仲が良かった訳でもない。仲間全員を危険にさらすくらいならと判断しだが、それは間違っていない。

だが、ニコラスはそういったのだ。

嫌味でも同族意識でもましてや責められたわけでもない。ただ、笑顔で天気の話でもするように。

そして、イリヤは理解する。

―――私の一番はあたしだ。

だから、妹と溝ができても平気だった。気付いていた最悪な事態になるまで気にしなかった。

周りがどんなとこに成ろうと関係ない。イリヤは自分が快適に生きられればそれで構わないのだ。

自分主義のイリヤにとっても周りに愛想を振り撒く事は保身のための偽の善意。いわゆる、外面だ。

だからニコラスの『フィーが一番』は何を置いても誰を殺してもフィーが要れば良い類いのもの。

フィーが嫌がるから、周りに人を置いているにすぎない。

イリヤもその一つに過ぎない。

そこでやっと繋がった。

ニコラスは今回の事件にフィーを巻き込んだ事、相当怒ってるはずだ。

―――なのに別れた時アイツはいつも通り笑ってた。

そして教会に転がり込んだという身元不明の男が来たタイミングの良さ。

―――アイツは何か知っている。

そして、もしデヴィッドがこの事件に関わりが有るならニコラスは苦しめてデヴィッドを殺す。

それは不味い。何故なら…

イリヤは教会にいるあの男の身元を知っている。


「ろくでもねぇ!!」

「きゃ!??」

事態を考えればさっきの眠気なんて何処かへ行ってしまった。

飛び起きて辺りを見渡せば何処かの倉庫だと思われる。

―――誰かの悲鳴が聞こえたような?

振り向けば美少女が座っていた。横座りをしている足首にはハンカチの上から固く縄で縛られている。

手首も同じく傷つけないようハンカチで押さえた上から縄で縛られていた。

食事をスムーズにさせるためか縄の間にはゆとりがあり、動かすのに不便はなさそうだ。

「…えっとぉ?」

美少女に声をかけ、体を動かそうとするとイリヤバランスを崩し美少女の膝に倒れ込んだ。

先程の心地好さはどうやら彼女の膝枕だったようだ。

イリヤは自分の手足をみるとガチガチに縄で縛られている。

よく観察しようと体の向きを変えれば少女の豊満な胸を見上げるはめになった。

「………。」

―――神様、いつか不平等の名の元にアンタを殺す。

「えっと、あの…気分はどうですか?」

複雑な気持ちで胸を眺めて居ると美少女がイリヤを気遣う。それか、単に不穏な空気を察知しただけなのかもしれない。

「あ、あぁ。膝枕してくれてたんでしょぉ?ありがとぅ」

「いえ。巻き込んでしまったのは私です。ごめんなさい」

「???」

少女は何故、巻き込んだと断定するのかはわからないが取り合えずイリヤはゆっくり体を起こし自分の手足が頑丈に縛られていることを確認した。

美少女と比べればハンカチなんて当てられていないし、縛り方も動きやすい様にゆとりなんてものはない。明らかな拘束だ。

「かなり、うなされていましたよ?」

心配そうにイリヤを見つめる美少女の胸は揺れていた。

「やっぱり、おっぱいか!!!??おっぱいなのか!!!!」

なんなんだ!?この待遇の差は!!

イリヤは一番考えられる原因を叫ぶと美少女は苦笑を浮かべていた。

「……多分、違うと思います」

イリヤが絶叫しても見張りは来ない。

美少女が控えめにフォローしてくれるが、その声を差し置いても周囲は静かなものだ。

少数?それか交渉中?

最悪なのは逃げられるはずがないと相手に確たる自信がある事だ。

イリヤが情報を整理ようと思考ふけると何を勘違いしたのか美少女はイリヤの腕を掴む。

「あ、あの…?」

不安そうな少女の顔にイリヤはやっと少女の存在を思い出し笑顔を向ける。

「あぁ、ごめぇん。あんまりにも衝撃的だったからぁついねぇ。私はイリヤ。貴女はぁ?」

「私はアナスタシアと言います。アナと呼んでください。」

「何処の国の人?アメリカじゃ聞かない名前だけど?」

「ロシアです。祖母がハーフでして。」

言われてみればアナはここら辺では見ない顔立ちをしている。

教会の神父も外国の武術を使うらしいが、異国人は初めて見た。

殺人なら既に殺されて要るだろうし、人身売買の可能性を視野に入れて考える。

「そういやぁ、さっき私を巻き込んだ言ってたけど?心あたりあんの?」

「はい。最近、脅迫状が何通も届いていましたから。」

「きょーはくじょー?なんでまたぁ!?アナはお嬢なの?ゴールドラッシュなの?だいとーりょーなの!?」

「あ、いえ、歌手です」

「歌手ぅ?なんでまた、使いづらい感じに新キャラが増えるかぁ」

その場にうなだれるイリヤの言葉の意味がわからず慌てるアナにイリヤは『こっちのはなし』と答えるとアナの顔をマジマジと観察する。

そういえば美少女との認識だけだったが言われてみればホテルのブラウン管の中で見た気もしなくもない。

数日の間に教会のチビどもとフィーにローレンスの下っ端やら、イリヤの顔見知りが一気に増えた気がする。

そのトドメに有名人と名乗る美少女とは。知り合いがイコールで人脈になるはずなのに全く使えない。

―――ただでさえ収集つかんのに。

小説に登場人物を多く出しすぎた小説家の気分だ。

脱線した思考を戻し、イリヤは脅迫状のくだりを聞き始める。

内容はこうだ。


歌手であるアナのところにファンレターと一緒に脅迫状が届いた。

最初は無視していたが内容徐々にエスカレートしていった。アナの泊まっているホテルや舞台にも脅迫状が届くようになり警察に言ったが相手にしてくれなかった。

そして今朝、ホテルを出た後に何者かに車に押し込まれた。スラム街に差し掛かった頃にトイレを理由に逃げようとしたところ見付かってしまい連れ戻された。

そして、近くに居たイリヤが仲間かなにかと勘違いされたのではないか。

と云うものだ。


―――貧乏くじだ。

「どうすんだよ!デヴィッド探さなきゃならんのに!!」

イリヤが叫ぶと驚いた顔でアナがどうでも良い情報を口にする。

「デヴィッド?今回のクライアントもデヴィッドさんですけれど…」

「………流行ってん?デヴィッド」

「…さぁ?」

微妙な空気が流れていると誰の足音が倉庫の中に響いた。


それでも、楽しみに読んでくださるかたありがとうございます。

よいお年を(*´∀`)♪

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