新キャラそっちのけでディナータイム
ハンスは一度、事務所にいって抗争の後片付けを手伝ってくると言って出ていった。
各自が出来ること。
勿論、皆はファミリーの仕事で忙しい。ただですら皆には手を貸してもらってるのだこれ以上、甘えては要られない。
教会は今、フィーが何とかするしかないのだ。
決意も新にフィーも教会の仕事をしようと意気込み席を立つ。
するとニコラスがフィーの前に回り込んでそわそわしている。
「あ、あのねフィー。掃除なんだけど僕とイーちゃんで全部終わらせてあるんだ。後、ベッドメイクとか洗濯も…」
もじもじと照れながらフィーの前でアピールするニコラスの言わんとすることがわからない。
「だからね…」
上目使いでフィーを見つめる姿は明らかに期待に満ちている。
何時もの倍は瞳を潤ませているニコラスは甘えてくる子猫の様だ。
「……っっ頭、撫でて欲しいなって」
真っ赤になって、おねだりしたニコラスにフィーはやっと合点が行った。
ニコラスは褒めて欲しいのだ。
「ふふっ…子供みたい。良いわよ。」
ニコラスの頭に手をおいて優しく撫でる。
その指通りの良い髪を堪能する。
明るめの茶色をした髪はサラサラで撫でる方も気持ちが良い。
考えてみればニコラスも昨日の昼からずっと働いて要るのだ。労いの言葉ぐらいあって当然だ。
「そうね。ニコも頑張ってくれてたもの。ありがとう、ニコラス」
「えへへ。フィー大好き!」
照れ臭そうに笑うとニコラスはそのままフィーに抱き付いた。
フィーの首筋にニコが鼻を埋めて要るため嬉しそうに笑うニコの声がフィーの耳をくすぐる。
フィーよりも少し低めの身長と言ってもニコも男の子だ。フィーとそんなには変わらない。
「フィーは優しいね。ずっと一緒にいてね」
首筋で喋られるので多少のくすぐったさはあるが我慢できない程ではない。
フィーも別段、思うことなくニコラスの頭を撫でる。
これではニコラスが撫でて欲しいのかフィーが撫でたいのかわからない。
視線を上げればガラッドが呆れ顔でシッシッと猫を追っ払う素振りを見せていた。
「ほら、ニコ。ガラッドが呆れてるわ。そろそろ離れないとね。」
二人だけでは無いことを思い出しニコラスに離れるように諭す。ニコは顔を上げて返事をする。
そのまま背中に回した腕を離すのかと思えば一瞬力を入れ一層強く抱き締める。
「きゃ!?」
驚きでフィーの体が固まる。
強く抱き締められた性で体がよりニコラスと密着する。その影響でフィーは少し前屈みになってしまった。
密着を意識する前に唇の端に柔らかい感触を感じる。
それは一瞬の出来事で感触と同時に拘束がほどけた。
「約束だよ?」
そういって笑顔を向けるニコラスの背中越しにガラッドが頭を抱えて居るのが見えた。
―――今日はやけにニコラスが甘えてくる。
そう思い、フィーはある考えに思い至る。
何も問題が解決していない。
そして、明日からギャングに狙われるかもしれない。ギャングならまだ良い。もっと規模の大きい例えばマフィアに狙われる可能性だって有るのだ。
だがらニコラスも不安なのだろう。
もしかしたら、生死関係なく突然、居なくなってしまう可能性を考えたのかも知れない。
「約束。ずっと一緒に居るわ」
そこまでわかれば、この行動も仕方がないのかもしれない。
フィーも笑顔で返した。
何故かガラッドが哀れむ様な目で此方を見ている気がするが、ニコラスが子供っぽいのは今に始まった事ではない。
視線に気付きニコラスが振り替える。
「どうしたの?あ!ガッチャンもチューする?」
「…は?」
どう反応したら良いのか思い浮かばず、歯切れ悪く答えるガラッドの意に介さずニコラスは両手を広げガラッドに走り寄る。
どうやら、先程フィーの唇の端に当たった感触はキスだったようだ。
今更では有るがフィーはキスされた自分のほぼ唇に手を当てた。
「止めろ!男同士は気持ち悪りぃだけだ」
一瞬だけ飛んでいた意識を戻すとニコラスはガラッドに顔面を捕まれ進行を止められていた。
腕の長さの問題からガラッドにも届かず、顔を掴まれている性で後退も出来ないようだ。
「!?~~~??が、ぎゃん、、いはい」
口も塞がれて要るのだろう。モゴモゴと籠った声の抗議が聞こえた頃、ガラッドは手を離した。
「うぅ~ガッチャンが寂しそうにしてるから励まそうと思ったのにぃ」
「ニコの場合、本気か冗談か判断つかねぇんだよ!!」
心底、残念そうに発する声にガラッドは威嚇で返す。
しっかりめに握られたのかガラッドに手を離して貰った後もニコラスは両のほっぺを押さえていた。
「うぅ~。別に冗談なんかじゃなかったのにぃ」
「なお悪い!!!」
ニコラスの天然な発言に突っ込むガラッド姿は昔からのやり取りだ。
何年たってもこれは変わらないし、ずっと変って欲しくもないと思う。
先程のキスもニコラスにとっては親愛の証だ。
大好きな人に大好きと表現する子供と一緒。
それなのにフィーはそれを少し寂しいと思った。
「…ずっと一緒か」
何故、寂しいと思ってしまったのか解らないが、フィーもこの光景がずっと続けば良いと本心から思う。
幼馴染みの三人がずっと一緒で笑ったり泣いたり出来れば良い。
この平和を守るために何ができるかわからないが出来ることならば何でもする。
その為には教会を、ひいては自分の役目である子供達を守らなければならない。
フィーはじゃれあう二人を見ながら、ある決意した。
その後、ガラッドは自分の自宅へと戻って行った。
夕飯に誘ったが帰りに事務所と情報収集に行くとのことなので断られた。
ニコラスに仕事の予定を聞くと明日の早朝まで仕事は入っていないそうだ。
イリアとニコラスの献身のお掛けで掃除は全て終わっているのでフィーは男の容態を見に救済室へと向かった。
救済室にはフィーが出て行った時のまま男が寝ていた。
男の額に手を当てれば熱は下がっていた。
これなら医者は必要なさそうだ。
ニコラスの話では昼も食べたそうなのフィーはそのまま部屋から出ようとするが突然、手首を捕まれる。
驚いて振り替えれば男が目を開けていた。
「…?」
「気分はいかがですか?」
男はボーッとしてるのか視線を天井で泳がせている。
一拍遅れて自分が何か掴んでいるのを理解したのだろう。視線が男の手から上がっていきフィーに辿り着く。
そこでやっと男とフィーの視線が合った。
「……ここは?」
「教会です。朝、孤児院の敷地内で倒れて居たので介護しました。自分が誰か解りますか?」
「俺は…デヴィッド」
「デヴィッドさんですね。それでは起き上がれそうですか?」
「ああ。済まないがレディ、水をくれるか?口の中が酷いことになっていてね」
上半身を起こすデヴィッドを支えて、ベッドの壁にもたれ掛かけさせる。
辛そうでは有るが朝よりは大分、回復したようだ。
フィーは枕元にあった水差しから水を継ぎデヴィッドに差し出す。
デヴィッドは水を飲み干すとフィーに礼をのべる
「ここにはウッズ神父親子が経営していたと思ったんだが、神父様にお会いしたい。」
「父は行方不明で…娘の私が変わりにお伺いします。」
「そうか。済まない、嫌なことを事を思い出させてしまった」
「いいえ、お気遣いなく。父にはどういったご用件でしょうか?」
「しばらく厄介になりたい。理由は聞かないでくれ。」
「わかりました。この部屋を自由に使って下さい。」
「ああ、ありがとう。missウッズ、君の名前を聞いても良いかな?」
「シルフィーナ=ウッズです」
「改めてよろしく。シルフィーナ」
とても綺麗な笑顔む向けるデヴィッドにフィーも愛想笑いを返す。
夕食の有無や代金の確認後デヴィッドがベッドに戻った事を確認するとフィーは水差しを持って食堂に戻った。
食堂ではニコラスと子供達が夕食の仕度に勤しんでいる。
フィーは皆には"お帰り"と告げると夕食の準備を手伝う為に手を洗う。
「フィー。救済室の人どうだった?」
水道の近くでジャガイモの皮を剥いていた手を止めてニコラスは顔をあげた。
「お医者様は要らなさそうね。当分、教会に要ることになったわ」
「そうなんだ、忙しくなるね。僕も手伝うから何でも言ってね」
「ええ。ありがとう」
ニコラスの満面の笑みに和みながらフィーは子供達が作っている献立を確認する。
「あら、今日は魚のトマト煮込みなのね」
「そうなの!ガラッド兄のメモに材料入れて煮込むだけって書いてあったから」
「ええ。とっても美味しそうだわ」
アリッサと意味もなく笑いあえば後ろからチビが剥いたニンニクを差し出してくれる。
「ありがとう。」
ニンニクを受け取ると野菜を切っているノーナに渡しある程度の大きさまで切って貰う。
チビに頭を撫でて"良く出来たね"と誉めればチビはニッコリと笑った。
"チビ"というのは愛称で本当は名前が有るが呼ばれるのは極度に嫌がる。
なので、孤児院の最年少と云うこともあり、皆でチビと呼んでいるのだ。
チビが即興で歌いながらノーナの手伝いに回る。
どうやら野菜を洗ってくれようとしている様だが、その行程は既に終わっている。
フィーはチビに付け合わせのサラダの葉っぱを千切る作業をお願いした。
「フィー、ジャガイモ終わったぁ」
「ありがとう、ニコ。それじゃ煮ちゃいましょう」
材料を鍋に入れれば後は煮込むだけ。サラダやパンを切る作業は難しくないのでアリッサ達にお願いしようか悩んでいると慌ただしくエミリーが駆け込んできた。
「ちょっと!!何、悠長に夕飯作ってんの!!??教会、穴だらけだよ!!??抗争に巻き込まれたつて聞いたけどみんな無事!!!!??」
肩で息をしている彼女の反応が普通なのかも知れない。
フィーの近くには事情を知っている人物ばかり集まっていたから、こういった普通の反応を忘れていた。
周りを見れば子供達もフィーに視線を向けてくる。
帰ってくるときはあえて教会前を通らなかったが、買い出しに行くときに見ていたのかもしれない。
聞くタイミングを伺って居たようだ。
「おかえりなさい。皆、無事よ。その件は夕食の時に話すわ。エミリーはまず手を洗ってきて」
「わ、わかった。おふろ掃除は?」
「終わってるわ」
「うん」
仕事が終わり次第、走って帰って来たのだろう。
心配させてしまったと申し訳なく思う気持ちの他に少しだけ嬉しさも入っていた。
だが、それも今日までなる。自分のそんな勝手な気持ちでエミリーをギャングに狙われている場所に出入りさせるわけには行かないのだ。
フィーは人知れず気合いを入れ直す。背後ではニコラスが二人のやり取りを横目で眺めていたのは誰に気が付かなかった。
テーブルに食器をおいた頃、ロイとハンスが二人で帰って来た。
丁度良い。
夕飯にしようと二人に声をかけ、手洗いを促すとデヴィッドの分を避ける。
ロイは驚きもせずに手を洗いに行くのでハンスからある程度、聞いているのかもしれない。
後でデヴィッドに持っていこうと布を被せてると後ろからひょっこりとニコラスが顔を出した。
「それ、救済室の人の?」
「そうよ」
「僕が持っていくよ」
「良いの?ご飯、食べ損なっちゃうかもしれないわよ?後で私が持ってくわ」
「大丈夫だよ!僕も挨拶しておきたし、ね?」
最初は断ろうとしたフィーだったがニコラスもマフィアだ。
もしかしたら尋問の意味も有るのかも知れない。
「わかったわ」
そういってフィーはニコに食事の乗ったお盆を渡す。
「頑張って仲良くなってくるね」
悪意の全く見えない笑顔でニッコリ笑うニコラスにまた、仔犬の耳と尻尾か見えそうだ。
尋問とか関係なしに自分はニコラスのおねだりに弱いのだとフィーは確信した。
ニコラスにデヴィッドの食事をお願いした後
で皆が食卓に着く。
お祈りを済ませ、食事が始まる。
何時もは騒がしい食事が黙々と進むのは育ち盛りの男の子のがいない性なのか、今からの話が良いものではないと察して要るのせいなのだろうか。
兎に角、空気が重い。
だが、それでも言わなければならないのだ。
フィーはこの重い空気をもっと悪くするかもしれないと思いつつ言葉を選ぶ。
「皆、知ってるとは思うけど昨日、教会の近くでギャングの抗争があったの。教会も巻き込まれたわ」
一拍おいて食卓を見渡せば、皆の表情は固い。エミリーに至っては顔か、血の気が引いて要るように見える。
「そのギャングの残党が居ないとも限らないわ。それに抗争との関係性は分からないけど神父様も昨日の昼から連絡が着かないの」
誰かの息を飲む声が聞こえる。
フィーは全員の視線を全身に感じなから、また一つ言葉を自分の中から捻り出す。
「ギャングの報復で皆にも危険が及ぶ可能性があるわ。だから、最善を取りたいの。エミリーとロイは孤児院から自立して欲しい」
「子供達は?」
ロイの鋭い声がフィーにはやけに大きく響く。
アリッサが口に手を当て仕切りに左右に視線を巡らす。ロイの声に驚くが何と声をかけたら良いのか解らずオロオロしている、と云った所だろうか?
ノーナはうつ向いて動かない。
エミリーはハンスに視線を送るがハンスはそれを黙殺している。
何も気にせず食事をしているのはチビぐらいのものだ。
「今、養子の話が二件、来てるわ。」
「全員は到底、無理だね。相手の素性もしっかりしてるの?」
「一軒は一般街のお医者様。もう一軒は身請けする娼婦の付人よ」
「ヒルダはこのままでも良いのかも知れないけど、他の子達は?安全な場所に避難させる宛は有るの?」
「………他の孤児院の空きを探して要るところ」
ロイの矢継ぎ早な質問にフィーは自分がどれだけ無謀かわかっているつもりだったが指摘されると、やはり辛い。
だが、これが自分に出来る最善だ。
「自分がどれだけ無謀な事言ってるのはわかってる?」
ロイの言葉に頷くしか出来ない。
「ロイ!突然の事なんだから仕方がないじゃない」
人の命なのだ。
"頑張ったけど無理でした"では通用しない。
エミリーがロイの口調に非難を出すがロイの言い分の方が正しい。
フィーはロイを正面から見据える。
「一般街の自治体にも声をかけてみて、それでもダメなら娼館とホテルから情報を得るしかない。」
「勝算は皆無だ。それでも何とか出来る?」
「最終手段は一般街でアパート借りて其所に住んで貰うわ」
「ちょっと!!!フィー姉!!!ロイ!!幾らなんでも酷すぎる!!!」
「な!!!??」
この意味が解るエミリーは逆行して椅子から立ち上がる。
一緒にハンスも驚いていたが、これは仕方ない。先程の口裏合わせでは言わなかった事だ。
口を出そうとするハンスを視線と首を横に降るジェスチャーで黙らせ、再びロイに視線を戻す。
「………意味、わかってるんだね」
「わかってる」
アパートを借りる。
エミリーとロイなら自分一人なら何とかなるかも知れない。最悪、ルームシェアをすれば良い。
だが、子供達の場合はそうもいかない。保護者役をハンスかニコラスに頼み、アパート代をフィーが稼がなければ成らないのだ。
教会にはアパートを借りる余裕なんて勿論ない。それはガラッドやニコラスだって一緒だ。
子供5人を手っ取り早く養える仕事なんて一つしかない。
それだってかなりの博打だ。
娼婦の世界の厳しさは知っているつもりだが、自分は素人。玄人達にはとても敵うとも思っていない。
万が一の可能性でも大金を手に入れるにはこれしかない。
「立派な決意だけど、それだって現実味にかけるのわかってる?」
「でも、これしか知らないのよ」
エミリーに座るように促し、笑ってみせる。
子供ながらに事態の深刻さを感じ取っている二人は重い空気に黙ってしまった。
本当は自分から『養子に行きたい』言える環境下で選ばせてあげたいのだか…。
子供達の安全の為と言って子供達の言い分を聞かない。
―――本当に偽善だわ。
自分自身にヘドが出る。
「御免なさい。これ以上の手が思い付かないの」
ロイに『不甲斐なくて御免なさい』と謝罪を述べる。
「…わかった。自治体には俺から話を通す。エミリーはホテルで働いてるんでしょ?聞いて回って。ハンスは娼館ね」
「ロイ?」
エミリーが信じられないものを見るような目でロイを見つめる。
鳩が豆鉄砲喰らった顔と言った方が分かりやすいかも知れない。これはフィーも同じ反応だった。
さっきまで希望的観念でなく、現実を語っていたロイが急に協力的になった。
「あのね!責めるだけ責めてお仕舞いだと思ったの?俺はどんだけ非道だと思われてるの?姉ちゃんが身売りするのを高みの見物なんて後味悪いことするはずないし」
「だって、さっきまで…」
泣き出しそうなのエミリーを一喝するとロイは冷めたスープに手を伸ばす。
「俺は現実主義なだけ。ここまで言ってもやるなら文句言ってないで勝率上げた方が良いに決まってる」
そうして食事を始めたロイに続いてハンスもフォークを取った。
「素直じゃないねぇ」
茶化すハンスを無視してロイはパンに手を伸ばす。
それでも小突いてくるのでハンスのサラダを奪い取る。
「あ!!ロイ!!!!子供か!お前は!!」
「みんな、仲直り出来てよかったぁ」
緊張の糸が解れたのかアリッサは涙ぐみながらパンに手を伸ばした。
何時もの慌ただしい食卓が戻ってきた。
フォーも安堵とロイの気遣いで泣いてしまいそうだ。
皆が食事を始めたのを確認しフォーは料理が無くならない内にニコラスの分を避ける。
チビは食べ終わって椅子に座たまま寝てしまっているが、今日に限っては仕方がない。
フォーも食事を始めた。
10日連載と言っときながらこの体たらく。
もう、自身でも突っ込みたくありませんorz
一応、10日内に一本、書くスタンスで頑張らせて頂きます(;´_ゝ`)
読んでくださって本当にありがとうございます。




