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エコノミークラス症候群

作者: 瀬川潮

 社長のお供で出張することになった。

 この社長。個人的には、見栄っ張りで金遣いの荒い人物なのでどちらかといえば苦手な人物だ。行きも帰りも同行ということで、頭が痛い。

 行きの飛行機のチケットは、エコノミークラス。従業員の賃金カットをした後だ。当然といえば当然なのだが、この見栄っ張りな社長にそういう理屈は通じまい。

「代々露木くん」

 空港に到着した時社長から声を掛けられ、内心「ほら来た」と首をすくめる。

「飛行機はやっぱりエコノミークラスだよ。ファーストクラス、あれはダメだね。なんといってもエコノミークラスだよ」

 はあ?

「いやしかし社長。『エコノミークラス症候群』という弊害もあります。やはり比較するならファーストクラスの方がいいのでは?」

 君は分かってないね代々露木くん、と口をへの字に曲げる社長。

「いいかね。ファーストクラスはどこぞのリビングのソファに座って大画面のテレビで空の画像を眺めているのとさほど変わらんのだよ。リアリティがまったくない。客をバカにしていることはなはだしいね。それに引き換え、エコノミークラス。いいね。いかにも乗り物に乗っているという風なチープなシートに、まさに空の上だから十分な接待は出来ませんという風なサービス。空は地上のように交通手段が多様でないので乗客を詰め込みましたよ、みたいなキャビン。窓の外の風景まで空の上の危機感が伝わって来るようで、実にリアルだ。ことほどさように、エコノミークラスは『飛行機に乗った』という実感が堪能できるのだよ」

 矢継ぎ早に畳み掛ける社長。口を挟む隙もない。はあ、なるほどそういうものですかと答えるしかない。

 結局、出張では行きも帰りもエコノミークラスを使った。

 二回乗ったことで、何となく私もエコノミークラスの良さが分かったような気がした。


 そんな訳で今、妻にもエコノミークラスの良さを説いているというわけだ。

「アタシはイヤよ。久しぶりのあたなとの旅行だもの。少しでもいい席がいいわ」

「何をいう。エコノミークラスほどいい席はないぞ」

 滔々と妻にエコノミークラスの優位性を熱弁する。

 そんな私を見て、妻はため息まじりにつぶやいた。

「あなたも、いつの間にか新エコノミークラス症候群にかかってるのねぇ」



   おしまい

 ふらっと、瀬川です。


 自ブログに発表済みの旧作品です。

 確か「エコノミークラス症候群」というお題で執筆したと思います。

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