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新/046/消失

性的な表現があります。お気をつけください。

「という事で、性行為を行うぞ」


「……………………どうしよう、脈絡が全く感じ取れません」


 変で不気味な短剣を私のスマートフォンに収納しなおした(ちなみに音声をOFFにする事ができたので安心)後、夜月先輩は振り返ってそんな事を言い出した。


 いったいどうしたと言うのでしょうか?覚醒の副作用で頭がおかしくなったのかもしれません。


「いいか、俺は今とっても不機嫌極まりない」


「はぁ……」


 それは知ってる。いつも無表情無感情な神崎夜月が、覚醒後の戦闘中から物凄い不機嫌さを放出している。さっきだって、先輩は随分感情的だった。つまり理性的で合理的に徹する事ができない程、今の先輩は機嫌が悪い。

 だが、いきなりこんな事いうのは、あまりにおかしいと感じられた。


「覚醒の最中、何かに頭を掻き回されて、超大音量で喚き散らされて、無数の針で貫かれたような激痛を与えられていた」


「……………良く、ご無事で」


 この人の事だから虚言とかではないのでしょう。だとしたら、本当にこの人は同じ人類だったのでしょうか?世界の七不思議に認定されてもおかしくありません。


「俺はそれでも暴走を抑え込めた。その代わり、精神的にかなり鬱憤(ストレス)が溜まっている」


「…………………………」


 どうしよう、先が容易に想像できる。


「故に性交を行って精神を安定させたい」


「理由が最低過ぎる」


 ぐっ、確かに性奴隷になるとか言ったけど、こんな感じで扱われるとは……。


「だからヤるぞ」


「せめて雰囲気くらい作ってください」


「図々しいぞ」


「客観視すると180度程変わるご意見ですね」


「お前が『早く終わらせたら身体を差し上げます』と言ったんだろ」


 いや、これはもはや性交というか、作業な気がする。

 とはいえ先程先輩の口から、「お前の身体は興奮する」と言われているので、背けた顔が赤くなる。所詮私は乙女なのだ。


「今の俺は全く正常では無い。かなり感情的になっていると自覚している。この状態では判断力や戦闘は勿論、隠密行動などに大きな支障をきたす。早急に解決する必要性がある。時間経過での自然解消は長い時間が必要で、早期解決は不可能。俺のストレス発散方法の中で、最も早く解決する事が可能な方法は性交。近辺に性的興奮を引き起こせる対象が存在し、何より対象も行為を了承している。護衛任務への早期復帰の為、即座の行動が要求される。以上」


 淡々としすぎでしょ……。

 顔を染めていた赤が、高速で失せていく。

 もう少しだけでもいいから、好意的な感情を持って来て欲しい。まあ、この怪物(ひと)には望むだけ無駄なんだろうけど。


「はあ、高級ホテルのスイートルームで、好きな人に捧げるという夢が……」


「なら最初から性奴隷とか言うんじゃない」


 そうなんですよね。好きな人もいないし。


「そんな機械的な感じでは私の方が興奮しません。もう少し雰囲気を出してください」


 とはいえそこだけは譲れない。本当に機械的過ぎて、興奮らしい興奮をしない。これでは私の解消にはなりません。

 どうせ行うならば、互いに解消するべきです。このままでは、逆に私だけストレスを増加させてしまいます。


「面倒だな」


「女というのは得てしてそういうモノです」


「お前、性奴隷とか言ってたくせに」


「初めてくらい良いじゃないですか。それに性交については了承してますが、今この場では興奮するしないが重要なのです」


「…………面倒だな」


「ではテイク・2(ツー)を──んんっ!!?」


 ちょ、ちょちょちょちょちょっとおおおおぉぁぁぁぁぁぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉおおおおおおぉぉぉおおおお!!!!??


 突然──先輩にキスされた。


 突然ではあったが、強引では無く、かなり優しいキス。

 避けようと思えば避けられたが、あまりにナチュラルだった為に反応する事ができませんでした。

 興奮、とまではいかずとも、初めてのキスなので一気に顔が熱せられる。

 耳まで赤くなった顔のまま、私はその場で硬直してしまった。


 そして──抱き寄せられる。


 優しく、丁寧に。

 頬に当たるサラサラのコートを越えて感じ取る鋼の如き胸板。一定のリズムを刻み安心感を与える強き心音。背に回された左腕が私をしっかりと支え、優しく頭を撫でる右手が心地好い。

 いつまでも包まれていたい。

 そう願わずにはいられない。


 永遠にも思える数秒間を経て、先輩の口が耳許に寄せられる。


「メメ、お前は可愛くて、美しい。鍛えられた痩身からは神代の美術品の如き美しさを感じられる。それでいて小動物のような愛嬌をあわせ持つお前に、俺はどうしても欲求を抑えきれない」


「っ!!!!」


 優しく、甘く、とろけるように。

 顔どころか、身体全身が真っ赤に染め上げられて、この人の一言一句に歓喜の感情が込み上げる。


 え!?え!!?おかしくない!?この怪物(ひと)!!?こんな感じに喋れるの!??いやいやいやいやいやいや!!!絶対にあり得ないでしょ!!


「メメ、俺はお前を抱きたい。お前を感じたい」


「は、はいぃぃっ!!」


 声が裏返った。心臓が爆発しそうで、血流が血管を破壊しそう。


 私はそもそもこういう事に免疫は無い。知識の源は少女漫画で色恋とは無縁の武道に生きてきたのだ。男性からの甘く優しい台詞に免疫なんて一切無い。


 だから、首を縦に振るしかないのだ。


 決して軽い女ではない。決して軽い女ではない。ここ重要です



 ◆◆◆



「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ」


 当時襲われなかったらしい保健室は、薬品棚の物資こそ無くなっているが、ベッド等はそこそこ綺麗な状態で残っていた。


 そんなベッドの上では、艶やかに身体を上気させているメメが、力無く寝転がっていた。


 下着類は着用しておらず、包帯で括りつけておいたスマホも外れ、小柄なメメには不釣り合いなシャツのみを身に付けている。


 メメ自身、あまり性欲をそそるような肉感がある訳では無いものの、柔らかいながらも筋肉をつけたバランスの良い肢体は、見る人を惹き付ける魅力を醸し出していた。


 ──ふむ、結構良かったな。


 色々な臭いを取る為の[リフレッシュ]を終えた俺は、寝そべるメメの裸を眺めながら上から目線でそう評価する。上から目線になってしまうのは、この自称性奴隷の純情乙女は本当に乙女過ぎたからだ。


 ベッドの隣にあったパイプ椅子に金属を軽く軋ませながら腰を下ろし、未だに焦点の合わないメメをぼんやりと眺める。

 股を擦りながら妙な声を上げる彼女を適当に受け流しながら、現在の自分の状態を確かめる事にした。


 感情は落ち着いた。

 溜まっていたストレスはしっかり解消する事ができたと思う。

 判断力は戻ったと考えていい。性交に使った体力を考えても、行動に大した支障は無い。

 精神的には十分回復したと言っていいだろう。


 肉体的には、正直不気味過ぎる程馴染んでいる。

 俺のAGI、DEX、は装備込みで200を超え、その他も軒並み100を超えた。

 巨猪戦後に100を超えた時は、その異常な変化に驚き、肉体の把握に時間がかかったのだが、今回の異常上昇はそこまでズレを感じない。

 覚醒とかいう奴が関わっているのだろうが、意味不明なので今は棚上げにする。シャーネに聞いておくとしよう。


 以上からして、現在の状態は中々に良好だ。


 問題があるとすればメメの体力の問題なのだが、ぶっちゃけそこまでSPは減ってない。

 多分初体験だから精神的に疲れているのだろう。

 だからそろそろ大丈夫な筈。


「おいメメ。休むならあの箱の中にしてくれ」


 今日の朝、メメがpatyに加わった際に、一度[リフレッシュ]していたので三日合わせた臭いは無いものの、それでも現在の雄と雌の臭いを纏う身体はよろしくない。鼻の良い豚達に位置を感ずかせる要素だ。消しておけるならばそうしておいた方がいい。


 ちなみに俺は別に性交だけを目的に休息をとった訳じゃない。

 治ったとはいえ、背中と胸から出血した血液は衣服にベットリと付着していた。これも当然鼻の良いものからすれば格好の目印。だから[リフレッシュ]は最初から必要な事だったのだ。


「…………………ひゃい」


 呂律が回らないながらも返事を返し、四肢に力を込めて起き上がろうとする。それほどSPは消費していないとはいえ、それでも腰が砕けてまともに起き上がれないらしい。


 これはアレだな。少し喝を入れる必要性があるな。

 俺はパイプ椅子から立ち上がり、平手にした手で、


「いっひゃあああああああっ!!」


 パチーンという軽快な音を立てて、肉付きの悪い小さな尻が揺れる。

 綺麗に手形の痕ができた。


「にゃっ、にゃにしゅるんでしゅかっ!!」


「ふむ、やはりこの方法は活力を入れる事ができるな」


 ナナで実証済みだが、メメにも効果があってなによりだ。

 弱々しくも身体を持ち上げ四つん這いになるメメは、頭だけこちらに向けて、涙を目に溜め何かを必死で訴えている。


 ………………………もう一回?


「い──やああああああああああっ!!」


 反対側にも手形をつけたケツを押さえながら、メメは今度こそ飛び起きた。

 素晴らしい効力だ。

 ちなみにこれは殴るにカウントされない。椿ちゃんがそう言ってた。


「何するんですかこの野郎!!!」


 額に血管を浮かべたメメが、全力で俺に殺意を向けてくる。

 ……………………………………?


「お前がもう一回って言ったんだろ?」


「言ってねえですよこの野郎!!!」


 あれ?違ったのか?でもそんな雰囲気だったような気がするんだよな。


「それよりお前、その中に入ってろ」


「………………何このナチュラルサディスト」


 殺意を抑えたメメは、半目で俺を睨みながらも気崩れたシャツをしっかり羽織る。もっとも、意味が無いくらい肌色の露出度が激しいが。


「──ん?」


「どうした?」


 俺への言われなき避難をようやく諦めたメメは、何故か溜め息を漏らしやがってから、ベッドを降りようと細長い足を伸ばす。その直後、メメが何かに気づいて足を止めた。


 理由が分からず尋ねる俺に、メメはぎこちない動作でゆっくりと首を向けてくる。


「………………気のせいでしょうか、見られてるような気がするんですが」


 はあ?何言ってんだ、こいつ?

 少々呆れながらも俺は無造作に保健室の扉の方に歩いていく。


「お前、気づいてなかったのか?」


 そしてガラガラと勢い良く横開きの扉をスライドすると──


「……………」


「なっ!?」


 ──下半身を丸出しにした小太りの男が、何かをやり遂げたような快感の余韻に浸りながら呆然と天井を仰いでいた。


 ぼー、としていた男は俺が扉を開いた事に未だ理解が及ばず、メメは反射的にシーツで身体を隠す。


 小太りの男は呆然としていたが、メメは状況を呑み込んでみるみる内に顔を真っ赤にしていった。


「気づいてたんですか!?」


「当然だろ。むしろお前が気づいていないのが驚きだ」


「こちとら緊張してたんですよ馬鹿野郎!!」


 なんかこいつどんどん失敬になってくるな。つーか、椿ちゃんは普通に性交をしてても気配に気づくんだが……。


「しかし見られて困るモノでもないだろう」


「困るんですよ!私の精神的に!!」


「??綺麗だぞ、お前の身体。恥じる要素が思い付かない」


「っ!!?」


 敵意をみなぎらせ、羞恥心で顔を真っ赤にしていたメメは、俺の言葉を聞いた直後、シーツを頭から被って丸まった。

 なんだ、こいつ?


「もう騙されませんからね!!」


 ……………理解不能なので放っておこう。

 とはいえ臭いをとっておく事に念をおして、俺は未だ呆然と座り込むコイツに目を向ける。


 酷いな、主に臭いが。

 さっきまでは扉越しだったから今一臭いは伝わらなかったが、開けてからは酷い異臭が鼻孔を刺激してくる。


「お…………いいか」


 声をかけようとしたが、必要性が無いと判断し、俺はコイツを蹴り飛ばす。


「ぐえっ!!」


 鈍い音を立てて壁に打ち付けられた小太りの男は、ぐったりと倒れた。

 ん?お、生きてるコイツ。とはいえ骨が何本も折れたし、この世界では生きていける負傷では無い。放っておいてもいいが、臭いがキツい。俺はその辺にあったタオルを手袋代わりに服を掴み、中庭へと繋がる窓から放り投げる。微妙に息はあるけど、すぐ死ぬだろう。


 俺は頭から奴を追い出し、首を回す。

 するとようやく本来の感知能力を戻した俺の知覚が鋭敏に反応した。

 お、ナナと雛の気配がする。ようやく来たか。


 後、他にも気配が二つ。多分、吉野と梅宮だろう。


 鉢合わせしそうだな……面倒ごとがある前に七海達と合流するか。

 俺は一度メメに断りをいれようと保健室に戻る。



 ◆◆◆



「光さんを何処にやったの!!答えなさい西園寺七海っ!!」


「な、なんだよ!」


 保健室がある新校舎へと繋がる中庭の渡り廊下を歩いていると、真後ろ、つまりぼくらが今まで通ってきた方から梅宮鈴火が血走った眼でぼくに迫ってきた。


 隣にいる吉野先生は、何時もならば諌めている筈なのだが、今は張り詰めて切迫した表情を浮かべ、鈴火の様子に気を配る余裕が無いようだ。


「西園寺ぃぃぃぃ!!!」


「っ!?」


 妖怪(モンスター)──狂気と殺意を剥き出しにして長い黒髪を振り回すその様に、ぼくは反射的に[マジックアロー]を使ってしまった。


「ぐがががっ!!」


「梅宮!!」


 顔に一発、胴体に二発ヒットして渡り廊下を転がる。

 その様子にようやく我に帰った吉野先生が梅宮に駆け寄った。


「……やっちゃった」


「いや、ナイスッスよ。完全にあれは殺す気だったッス」


 隣で何時でもぼくを庇えるように刀に手をかけていた雛が、優しくぼくの頭を撫でる。

 雛の言う通り、確かにあれは殺す気だった。


「西園寺お前──いや……今のはコイツが悪いな。すまん」


「い、いえ」


 拳を握り締めてぼくを怒りに任せて怒鳴ろうとした吉野先生だが、途中で自分の怒りの不当さに気づき顔を伏せて謝罪した。


 本当に良く出来た先生だと思う。

 この梅宮の様子と先生の様子から察すれば、確実にあの裏庭の様子を見てきたのは明白。

 きっとぼくらが校舎に入るタイミングで、裏庭に出て、あの光景を目撃し、ぼくらを疑いここまで走ってきたのだろう。


 それなのに自身の感情をしっかり把握しているのは、先生が立派な大人だという事だ。


「……ぐうっ!!」


 梅宮は呻きながらも身体を起こし、ぼくを変わらぬ眼光で射貫く。一本胸部に入ったので、まだ声は出せないのだろうが、内心で吐き散らされる罵詈雑言は十分に伝わってきた。


 爛々と狂気と殺気を宿した瞳は、ぼくの後退りさせるのに十分な怨念だ。正直………泣きそう。

 雛が鋭い殺気を向けても、梅宮は感じとる事なくぼくを睨み続けた。


「………二人共、正直に答えてほしい。アレは………裏庭の生徒達はお前達が殺ったのか?」


 憤怒を秘めた先生の瞳は。ぼくにも雛にも有無を言わさぬ迫力があった。

 きっとこの迫力は、本当の愛を持つ者にしか纏えないだろう。

 だからこの問いには迫力云々はともかく、誠実に答える必要がある。その結果、敵対して夜月に怒られても、ぼくにはこれが正しいと思い続けるだろう。もっとも、今回の事にぼくらの責任は無い筈だ。そして吉野先生がそれを分からないとは思えないが。


「ぼくらのせいと問われれば、違うと答える。だがあんな事になった理由は知っている」


「っ!!……そうか………出来れば話してほしい」


 震えてる。

 今にも爆発しそうな憤怒と、止められなかった自虐が、内心で暴流となるが故に。


 今の先生に嘘を吐く程、ぼくらも堕ちてない。

 ………堕ちてない、か。子供は見捨てておいて、よく言う。

 一旦マイナスに入りかけた思考を黙殺し、息を整え言葉を続ける。


「実は──」


 ぼくが話し出そうとした瞬間、今まで周囲を警戒していて、この場をぼくに任せてくれた雛が背後を振り向いた。

 その事に言葉が止まり、たった三日だがそれなりに染み付いた反射で杖を構えて後ろを振り向く。

 吉野先生も、ぼくらの雰囲気を感じ取ったのか、咄嗟に負傷した梅宮を背後に庇った。


 耳を澄ますとバタバタという乱れた足音が鼓膜を震わす。オークでは無い。ちゃんと靴を履いているし、奴等はこんな速度で動けない。

 この三日間、散々周囲に気を配っていた成果なのか、なんとなくだがこの程度は把握出来た。


「メメさん、でしょうか?」


「……メメ?」


 ………あいつはこんなに慌てて走る奴だろうか?

 正直まともに接したのが今日の朝が初めてなので、人となりを全然知らない。

 それでもあえて印象を言えば、彼女はとてもマイペースだと思う。

 だからぼくには合致しない。疑問系で言葉を発した雛もそうらしい。それほどまで、この足音は乱れている。


 誰の耳にも聞き取れる慌てた足音は、遂に渡り廊下の先へ到達。

 そしてそこには、やはり──


「メメ………」


 ──息を荒げる美少女、進藤メメ。


 シャツのボタンを全て開き、ボーダー柄の下着が覗くエロチックなその姿は官能的だが、切羽詰まった雰囲気が尋常では無い事を言外に語っている。


 その姿を見たぼくは、急激に胸を締め付けられたような恐怖を覚えた。

 なんだ?いったい、なにが………!?

 急激に発汗量が増えて、鼓動がゆっくりと加速していく。


 壁に手をつき呼吸を整えるメメには、とてもじゃないが話しかけられない。


 雛も何かを感じとったのか、刀の柄に伸ばした手が震えていた。


「………せ、先輩が…………神崎先輩が、」


 激しく混乱の色を映したメメの瞳は焦点が上手く合っておらず、震える声でなんとか言葉にしようと唾を何度も飲み込む。


 黙って聞く、いや聞かざる得ない。

 ぼくと雛は、段々と言い知れぬ恐怖に心を犯されて言葉を発する事ができない。


 ハッキリ言えば、聞きたく無い。


 だけど聞かなくてはならない。


 ようやく言葉を選び終わったメメが、ゆっくりと口を開いた。


「先輩が、先輩が、き、きえ、消えちゃいました……」


「え?」


「…………それは、どういう?」


 ぼくらは意味を呑み込めない。いや、違う。理解したくないのだ。


「だ、だから──消えたんですっ!!」



 ◆◆◆



 ──こうして、ぼくらの仮初めの平穏は、呆気なく崩れ去っていった。


 だがまだまだだ。

 ぼくらの絶望は、ここから始まる。


Q:『メメちゃんのキャラ崩壊が激しい件』


メメ:「初体験でキャラを保てと?非道ですね童貞さん」


Q:『メメちゃんを落としたあのテクは一体?』


夜月:「ナナが俺にばれないように買った官能小説から引用しただけだ」


Q:『吉野先生と梅宮さんと富川くんは何処に居たんですか?』


吉野:「森川先生に勧められて、宿直室で仮眠をとっていた。…………まさか、あんな事になるとは……寝ている場合ではなかった」


梅宮:「……何処でもいいでしょう」


村人X:「新たな貢物を探してたんですよ(上)」


富川:「用務員室にあった布団で寝てた。まったく、僕が居ればあんな惨劇は起こらなかったというのに、不運な奴等だよ。まあ、僕が生き残ったのがせめてもの幸運だろうな」

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