表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/58

新/044/知性ある物

《パラサイト・アイテムlevel27撃破!!

 exp:408

 bonus:【特殊個体撃破(二人・対大群・大逆転・覚醒)+550%】【先駆者+10%】

 total-exp:2693》


《level-UP!!

 level13→level14

 BP12を獲得。振り分けますか?yes/no》


《level-UPを確認。

【血】の覚醒率が2%上昇します。

 覚醒率:28%》


《覚醒率の上昇を確認。

 ■■■/種族値が上昇します》


《event達成を確認。

[制限]が解除されました》


《event達成の功労者として、以下のプレゼントが贈られます。

 50S

【不思議な宝箱・下】》


《event達成の最功労者に選ばれました。

 以下のプレゼントが贈られます。

 BP15

 50S/1G

【不思議な宝箱・中】》



 ◆◆◆



《パラサイト・アイテムlevel27撃破!!

 exp:101

 bonus:【特殊個体撃破(二人・無傷・対大群)+350%】【大物撃破(ジャイアント・キリング)(二人・無傷・対大群)+350%】

 total-exp:808》


《level-UP!!

 level5→level8

 BP30を獲得。振り分けますか?yes/no》


《event達成を確認

[制限]が解除されます》


《event達成の功労者として、以下のプレゼントが贈られます。

 50S

【不思議な宝箱・下】》



 ◆◆◆



 桐原の頭に刃を突き刺した後、桐原自体は動かなかったが、死体の群は未だ動いていた。

 なので本体である黄金の剣に足を振り下ろして砕く。粉塵が巻き起こるクレーターの真ん中で、黄金の剣(パラサイト・アイテム)は一撃の下に粉砕された。


 剣はやはり硬かったものの、嫌な程上がった能力値のおかげか、一撃で踏み砕く事ができた。

 そして踏み砕いてから数秒のタイムラグを経て、死体の群はバタバタと倒れていき、元の物言わぬ冷たい死体に戻っていった。


 こうして今までの激闘など夢幻の如く、桐原光と黄金の剣(パラサイト・アイテム)の生は幕を閉じた。


 光の粒子となって消え行く黄金の剣と、いつまでも残り続ける桐原光の死体。

 消え逝く黄金の剣の跡に残った物は、金色の宝箱と二つの袋。

 周囲は二百の死体は山のように積もり、惨劇と悲劇が周囲に蔓延していた。


 俺は一回羽を動かし、纏わりつく粉塵を払って翼を消す(・・)

 ……………ナチュラルに消せたな、今。


 翼、それも三対六枚の羽が生えたという事は、相当重心が後ろに傾いていた筈。それなのに、普通にバランスを取れていた事実や、手足のように自在に扱えていた事実。

 気味が悪い。

 覚醒時に頭を掻き回した何かのせいで、ただでさえイラついているというのに、この事実を自覚してしまった今、更に苛立ちを募らせる。


「まあいい」


 とにかく今は気にしない事にして、足元に転がる桐原へと目を向けた。

 端正な顔からは真っ赤な血が流れ落ち、小さな血溜りを作る。純白の鎧は消え去って、元のシャツとズボンという服装へと戻っていた。


 それにしても…………やっちまったなあ。


 正直に言って、俺は桐原光を積極的に殺す気が無かった。

 自ら死地へと赴くならば止めないし、それが有益ならば煽りもする。だが自ら殺す気だけは、あまり無かった。


 理由は義理だ。桐原ではなく、彼の父親への。

 俺とナナには並々ならぬ恩が桐原の父親にはあった。

 だからこそ、あまり殺したくはなかったのだ。


 まあ今回のは仕方が無い。俺は自分にそう言い聞かせる。覚醒後ならば、剣だけ破壊する事も出来た筈だというのに。

こんな世界ではあまりに希望的観測過ぎるが、もしもあの人にあったら素直に話すしかあるまい。それで恨まれ憎まれるならば、しょうがない事だ。

 せめてゾンビにならないように燃やしてやろう。


 storage内からマッチでも取り出そうと、内ポケットにしまったスマホを取り出す。起動させようとした時、フラフラとメメがこちらに歩み寄ってきた。


 現在の彼女の格好は、ちょっと危険。破れてボタンが弾けたブラウスの下から、上下合わせたボーダー柄の下着を露なっていた。腹に包帯でくくりつけたスマホが覗いていて、ほぼ半裸状態。セミロングの髪の毛は戦闘と俺が巻き起こした強風によってボサボサで、埃が皮膚を汚している。

 傷等は無いみたいだが、色々ボロボロだ。とはいえ元が良いからこの状態でも金が取れるだろう美貌だ。ただ普段を見ている者からすると、四割くらい落ち込んでいる。


「…………翼、消せるんですね」


「ああ」


「背中から直で生えていたと思ってました」


「いや、生えてたらコート突き破ってるだろ」


 背中から生えてたら、間違いなくコートを突き破っている。いや、このコート頑丈だから、もしかしたら突き破れずにコート内でバキバキに折れるかも。


「確かに。でも、眼は直らないのですね」


「眼?」


 なんの事だ?

 数回瞬きをしてみるも、特に異変は──ん?


「……………視力が上がってる?」


 遠くの方へと目を向け、正面五百メートル先にそびえるビルを視界におさめる。普段よりハッキリ、そして細部まで見えているようだ。元々3.0くらい視力があったが、今は4.0くらいになってる気がする。

………変化が微妙でわかり難いな。

 といっても、メメが言っているのは視力(これ)の事じゃないんだろう。傍目からじゃ視力の変化なんて分かんないし。


「視力が上がってるんですね。確かに視力の高そうな眼です。右だけですけど」


「右?……どうなってる?」


「白目の部分が黒く、元々黒かった瞳が金色に、そして猛禽類みたいな感じになってます」


 ………………マジかよ。

 それなら普通は右目だけ視力が上がるもんじゃないか?まあいいけど。

 それよりも、翼をしまえば人間と変わらない容姿かと思えば、思わぬところに化け物的要素が潜んでいたな。


「まあいい。それよりお前は靴とか回収して来い。話はそれからだ」


「了解。できれば衣服を貰いたいのですが」


「俺ので着られるとしたら、シャツくらいかな?」


 そう言って、とりあえずスマホを起動させて──


「……………………………………………」


 ──色々見なかった事にする。■■■とか、見てない。BPだけ振り分けるけど………12?


「……………………………………シャツ、シャツ」


 とにかくstorageから俺の着ていたワイシャツを取り出す。断じて現実逃避などでは無い。種族とか、BPとか今一人で頭を捻っても分かんないからだ。それよりも行動。


「ほらよ」


「………先輩の汗水が染み込んだシャツですか」


「変な言い方するな」


「ありがとうございます」


 微妙に文句?を言いつつ、メメはお礼を言いながらシャツの袖に腕を通す。案の定ブカブカ。


「………こういうのが好みなんですか?」


「は?」


 余った裾をブラブラさせながら、メメは眠そうな目でこちらをじーっと見つめてくる。

 好みと言われても、シャツだぞ?確かに特殊な衣服を着た女性に興奮する性癖があるのは知ってるが、普通のシャツを着た女に興奮する奴がいるか?


「ほぼ裸ワイシャツですよ」


「お前の身体に対する興奮は男としての本能的に存在するけど、俺は別に衣服の差異に興味はない」


 そう言ってメメの姿を眺めるが、やはり特別興奮する訳じゃない。

 スレンダーな体型で、美術品的な美しさは感じるが、肉感的な艶やかさに欠ける身体。その体型に対して好みかどうかと聞かれれば、好みなのでは無いだろうか?いや、分からん。そもそも、俺に女性の好みなんてあるのだろうか?


「………こ、興奮、ですか」


 自分でも分かるくらい無遠慮にメメの身体を見ていると、恥ずかしそうにモジモジしながら頬を染めていく。性奴隷とか自称しちゃうくせに、免疫が無さ過ぎるだろ。


「とりあえず、弓と矢を回収してこい。ここは別に安全な場所じゃねえ」


「は、はい」


 とにかくやる事が先だ。

 メメは俺に言われて弾かれたように弓と矢、それから脱げた靴を回収。更に、体格の似ている一人の女子生徒から、スカートを剥ぎ取った。

 ………普通の奴なら、死体から剥ぎ取るとか抵抗があると思うんだけど、あいつは違うのか?それともこの三日で価値観が変化したとか。攻撃的な性格に変化しているならば、少し矯正する必要があるかもしれないけれど、冷徹になる分には問題無いだろう。まあいい。


「さて、燃やす……マッチはナナに渡したんだった」


 すっかり忘れてたな。

 storage内を確認すると、マッチ等は無かった。俺のstorage内にあったマッチは、今朝吉野先生にあげたんだった。まあ、それじゃあしょうがない。頭でも潰しておくか。


「あ」


 そう言えば、吉野先生とか梅宮とか見なかったな。

 梅宮はともかく、吉野先生がこの場に居なかったのは……幸運、なのだろうか?

 俺としてはあの人を殺さなくて良かったが、生徒がほぼ全滅したこの状況は先生にとっては受け入れ難い事実だろう。状況を見ていない以上、もしかしたら俺を逆恨みするかもしれない。この場で二百を殺せるとしたら、俺くらいだろうし。

 まあその時はその時。


 俺は【Item】を出て、【Friend】からナナ宛てにmailを送る。道具屋で待っていろ、と。

 こっちに戻って来てもらってもいいが、どうせ遅かれ早かれ道具屋(スーパー)には行くんだ。そこで合流した方がいい。シャーネがついてる……筈だし、大丈夫だよな?


「終わりました」


「おう」


 メメが必要なモノの回収を終え、こちらに戻ってきた。


「じゃあ、宝箱と袋をしまってくれ。俺のstorageは一杯だ」


 食料に水、オーク・ジェネラルの戦利品や、元の装備品。更に今回の騒動(イベント)で得たアイテムを合わせれば、もう空きは無い。少し抵抗はあるが、スーツを捨てるか?いや、戦利品を売ってから考えよう。


「あの、その事なんですけど……」


「あ?」


「これ、使えないですかね?」


 メメは手に持っていたスマホをこちらに差し出してくる。あれ?こいつのじゃないな。

 差し出されたスマホは、「とある熊の居ない県の超有名熊型ゆるキャラカバー」をつけたスマホ。なるほど死体のか。


「残念だが使えないんだよ。死んだ奴のスマホは起動できない」


 俺も途中で見かけた死体を漁って試してみたが、残念ながら全部反応しなかった。一個や二個だったら壊れてるかもしれないが、十個くらい調べて全部駄目なのだから、使えないのだろう。


「そうですか」


 大して落胆せずに、メメは持っていたスマホを投げ捨てる。ふむ、やはり少し変わったな。他人とはいえ遺品を無造作に扱う奴とは思えん。この戦いで何か悟ったのだろうか?まあいい、俺が考えても意味の無いこと。分かんないし。


「ではしまいます」


 足元に転がる二つの袋の内、金じゃない方を収めていく。中身は純白のインゴット。素材アイテム、とかなんとかナナが騒ぎそうだ。俺としては売りたい。

 ちなみに金の方は75Sだった。これは俺がしまった。つーか、rankBならGを落として欲しい。


 メメが宝箱に触れた時、ふと俺へ向けて顔を上げる。


「開けてもいいですか?」


「ん?ああ、良いんじゃねえの」


 別にナナ達が居なくても良いだろ。箱は消えるし、量は変わらない。


「では」


 確認を取ったメメは、少し口許を綻ばせて蓋を持ち上げる。宝箱初体験だからな。

 箱を開けるとお決まりの光が周囲を照らす。俺は知っていたので光を防いだが、メメは光をもろに喰らった。


「……………………」


 光が収まって出て来た物は、一本の短剣だった。

 黄金で装飾され、純白の鞘におさまった短剣。国立美術館の一番良いスペースに飾ってありそうな、美しい短剣だ。

 それを見た俺達は──


「売るぞ」


「売りましょう」


 即座に売る事を決意した。

 新しく刻まれた嫌な思い出が蘇る短剣だ。要らない。手元に置いて置きたくない。売ったらきっと金になるから、金に期待しよう。

 つーか、これパラサイト・アイテムじゃないよな?


「先輩取ってください」


「俺のstorageは一杯だ」


「さっきシャツ出したじゃないですか」


 地面にほったらかしになっている短剣の押し付け合い。どちらも触りたくない。あれは両手剣で、戦利品(これ)は短剣だけど、触りたくない。

 数秒間無言の押し付け合いというか、睨み合いをしていると──


「おい、お前らちょっと聞け」


 ──とかいう不遜な声が短剣から聞こえてきた──気もするが、間違いなく気のせいだろう。


「ええ!?無視!?ちょっと反応しようぜ!!」


 さっきの不遜な声とは一転、なんとなく情けない感じのソプラノボイスが鼓膜を煩く刺激してきた。

 それに眉を潜めた俺とメメは、顔を寄せ合って小声で相談する。さすがに気のせいで押し通すのも無理か。


「先輩、お願いします」


「関わりたくない」


「同じく」


「売るまでの辛抱だ」


「私だと寄生されるかもしれませんよ?先輩なら大丈夫です。短剣だって皆と同じく裸足で逃げて行きますとも」


「お前、本当に良い度胸してるな」


 このままでは埒があかないので、しょうがないから俺が手に取り素早くstorageにin──


「待て!いや待ってください!!僕の話を聞けぇぇ!!」


 ──する。


「ちょっとおおおおおおぉぉぉぉぉ──」


 光の粒子となって消えていった黄金の短剣は、俺の貴重なstorageの空きを埋め、名称が表示される。


 ──【吸魔の短剣/INT】


 吸魔?吸魂じゃなくて?まあ、どっちでもいいや。

 性能を確認するべきかもしれなかったが、売るのだからどうでもいいや。


「さて──」


『──待ったあああああぁぁぁぁぁぁ』


「「っ!?」」


 俺のスマホから突然大音量でソプラノボイスが流れてきた。これには流石に驚きの表情を浮かべてしまう。


『残念でした!僕ら知性ある物(インテリジェンス・アイテム)は、storageにしまってもこうして話す事が出来るんだ!!』


 ……………うぜえ。特に今みたいに気が立っている時は特にうぜえ。


「これはもう、折るしかないな」


「しょうがないですね。お金に出来なかった事は残念ですが」


 スマホがジャックされるのならば、もうしょうがない。金に出来ないのは惜しいが、精神に悪い影響を及ぼす忌々しいアイテムだ、しょうがない。


『いやいやいやいやいや!!待って!ほんと待って!』


 俺はもう一度【Item】のアイコンをタッチし、storage内から【吸魔の短剣/INT】を取り出す。


「お願いですから待って!振りかぶらないで!死んじゃう!壊れちゃう!僕はあんまり耐久力が無いんだ!!ちょ、ちょっとぉ!!ほんとタンマ、タンマ!叩きつけないで!!僕凄く役に立つから!いやマジで役に立つから!!お願い!!」


 …………………………………………しょうがないな。まことに不本意だがしょうがない。

 少しだけなら話を聞こう。感情の不愉快さはMAXだが、もしも有益な物だったら壊してしまうのは勿体無いな。


「まず俺の問いに答えろ。お前はパラサイトか?」


「違う!僕はれっきとした知性ある物(インテリジェンス・アイテム)だ!!あんな紛い物共と一緒に──ちょ、何振り上げてんの!?やめ、止めて!!」


「お前、少し音量下げろ。後敬語」


 基本的に敬語とか気にしない俺だが、募る苛立ちと、なんかムカつくから敬語を強いる。


「ぐっ!言わせておけ──ちょっ!嘘嘘っ!!すいません、振り上げないで!!振り上げないでください、お願いしますぅぅ!!!!!」


 なんか超小物臭がするな、これ。

 後、声が煩い。一度地面に叩きつけようかな。折れない程度に。ただ、【Status】が上がったばっかりだから、加減が難しいけど。


「はあ、酷い主人にあたってしまった」


「主人?ですか?」


「このまま売られる運命(さだめ)なのに、大した忠誠心だな」


「売られるのは決まってるの!?」


 だから声が煩い。ただでさえソプラノ過ぎて頭に響くのに、音量まで高いとついうっかり破壊してしま──あ、


「ぎゃあああああああああぁぁぁぁ!!痛い!痛い!ちょ、ちょっとおおぉぉぉ!!」


 ヤベ、つい折ろうと力を込めてしまった。

 ……………そんなに耐久値高くないとか言ってたわりに、固かったな。鞘ごとだったからかな?


「「ちっ」」


「何舌打ちシンクロしてんの!?」


 メメも俺と同じ感じで、今にも唾を吐きそうな程不機嫌さが滲み出ている。珍しく人と感情がシンクロした。


「で、お前本当にパラサイトじゃないんだな」


「くどいぞ──で、ですよ!そもそもパラサイト・アイテムなら名称が、INT-Pという表記になってる筈だ──です!それに手に持った時点で分かる筈です。パラサイト・アイテムならば、手に触れた時点で乗っ取りにくるのですから」


 …………………確証が無いな。装備すれば分かるかもしれないが、してしまうとどうなるか分からない。ここは表示されるかどうか分からないが【Dictionary】で調べてみよう。


「メメ、【Dictionary】」


「いえっさー」


 と、やる気の感じられない声と共に、メメがスマホでパシャりと短剣を撮る。


「……………表示されませんね。データは無いようです」


「ちっ」


 しょうがない、後でシャーネに確かめてもらおう。

 ここに長居する気はないので、サクサク話を進めるとしようか。


「で、お前なにできんの?」


「[吸魔]だ──痛たたたたた!!」


「で、お前なにできんの?」


「[吸魔]です。接触した対象からMPを吸収して、僕の中に貯蔵しておく事ができます。貯蔵したMPは、所有者へ供給する事が可能です」


 ……………ちっ、有用なのは認めざる得ないな。

 貯蔵して置けば、簡単にMPを回復させる事ができる。それに接触した対象だから、別に敵じゃなくても構わない。MPを使わないメメや、無駄に上がった俺が貯めて置く事も可。


「剣としての性能はどうなんですか?」


「えーと、まあ、それはほら、ご、護身にはなる、かな?」


「つまり武器としては使えないみたいですね。役立たず」


「このアマっ……!」


 鞘から少し抜いてみる。

 キラリと純白の金属が陽光を浴びて輝いている。

 が、俺とメメには一目瞭然。完全に形だけ整えた鋳造品。研がれてはいるが、これなら俺のサバイバルナイフの方がよっぽど切れる。本当にただの護身用。それも弱い奴限定の。


「い、いや、でもあれですよ!腰に下げて置くだけでもMPを供給できます!必ずしも抜く必要は無いです、ハイ。そ、それにもう一つ[魔力修復]が備わってるんで、折れない限りは修復できます!」


「「……………………………」」


 まあ、元々短剣skillを持ってる奴がいないから、別に剣としての性能はいらないし、腰に下げてるだけで良いのはありがたい。重さも無いし。

 ナナの装備としてかなり有用なのは、まことに残念ながら認めざるえない。鋳造品とはいえ止めの一撃くらいには使えるだろうし、MP供給は魅力的だからな。


 ただ、小物臭が酷い。


「そ、それにほら、僕はabilityだって持ってますし!サポートをいたしますよ!!」


 そうか、そういえばコイツら一応生命なのか。シャーネも【Status】持ってるって言ってたし。


「どんなだ」


「え、えーと、【共生関係(タッグプレイ)】【安全設定(ビギナーモード)】【危険設定(エキスパートモード)】【友情技(コンビネーションアタック)】【強化技(ブーストアタック)】かな。い、五つ持ってるって、結構凄いんですよ!」


 確かに意外と多く持ってたな。特に【安全設定】を持っていたのはいい。ナナの生存率がグッと上がる。

 俺はそのabilityの詳細の説明を促し、短剣は言われるがままに答えていく。途中、調子に乗り始めたので身の程を弁えさせた。


 まあ、要するに。

共生関係(タッグプレイ)】は自分のabilityを所有者に対して使う事ができるability。

危険設定(エキスパートモード)】は敵への急所攻撃が無効になる代わり、経験値が+50%されるability。

友情技(コンビネーションアタック)】はSPを五割を消費する代わりに、短剣のM-STRを所有者のどれか一つの能力値に足す事ができる。ただしSPが一桁になると、使えない。

強化技(ブーストアタック)】はSPの三割を消費する代わりに、使用する物理、魔法攻撃力が三割上昇するability。こちらもSPが一桁になると、使えない。

 という感じだ。


 ふむ………………有用だ。これはちょっと折れないな。

 ナナに持たせる装備としては優秀だが…………大丈夫かな?


 しょうがないので一回装備して最終確認。嫌だが仕方がない──が、


「おい、装備できないぞ」


「……………………………」


 単純に筋力だけで何処までパワーを出せるか挑戦してみるか。


「嘘嘘!!分かった!装備させるよ!って、おい!曲がってる!曲がってるよ!!」


 ……………………そういえば、こいつ痛覚あるんだな。これじゃあ、そもそも武器として台無しなんじゃないか?


「はあ、正直主人と認めたくなんだけどなあ」


「安心しろ、俺もお前みたいな駄剣を装備する気は無い。仮だ仮。本当に装備させる奴は他にいる」


「え!?そうなの?先に言ってくれよ」


 盛大な安堵のため息?を溢しやがった後、ようやく装備できるようになった。駄剣はスルーなんだな。


 どうも所有者登録は、短剣(コイツ)の意思で決まるらしい。もっとも、少し痛め付けると是と言うので、ほとんど関係無いけど。



 ◆◆◆



《【吸魔の短剣/INT】/weapon

 制限:[選ばれし者]

 性能:[ATT・3]

 特殊:[吸魔][魔力修復]

 耐久値:[5]

 rank:[C+]》


《name:無し/インテリジェンス・アイテム

level:1

exp:0

title:


energy:[LP・50][MP・100]

magic:[M-STR・50][M-PUR・50][M-RES・50][M-CON・50]


skill:


tolerance:


ability:【共生関係(タッグプレイ)】【安全設定(ビギナーモード)】【危険設定(エキスパートモード)】【友情技(コンビネーションアタック)】【強化技(ブーストアタック)


party:

guild:》



Q:『【吸魔の短剣】とパラサイト・アイテムはなにか関係があるのですか?』


村人X:「あります。【吸魔の短剣】は『パラサイト・アイテム/【吸魂の魔剣】』の素体となったアイテムです。【吸魔の短剣】から【吸魂の魔剣】へと打ち直されました。ただし、結構無理矢理な打ち直しだったので、遅かれ早かれ『パラサイト・アイテム/【吸魂の魔剣】』は自壊していたでしょう」


Q:『【吸魔の短剣】の【Status】は何処に表示されたんですか?』


夜月:「装備欄をタッチしたら出てきた。後、収納した時の会話はon/offが出来た」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ