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新/025/光の解放者

満を持して正義の味方が行く!!

「マサ!ヤベえよ!!」


「うるせえ!糞っ!糞っ!糞っ!糞おおぉぉぉぉっ!!」


 二人の男は必死で手に持った鉄パイプを振り回す。

 その鉄パイプの先にいるのは、二体のオークだった。


 食料と水を求めて街に出た二人を待ち受けていたのは、荒れ果てた絶望の街。

 建物に籠って居た為に外の様子を探る事が出来なかった二人は、まともな準備をする事無く飛び出した。


 二人の軽率な行動を責める事はできない。

 圧しかかるストレスで冷静な判断が出来ないのは仕方の無い事だ。


 ただその結果が、この状況だった。


「ブオっ!」


「ブオン!」


 鉄パイプに対して全く恐れる事の無い二体のオークは、醜悪な顔に嘲笑を込めて口を吊り上げる。

 一歩迫れば惨めに後退していく男達で、オークは遊んでいるのだ。


 トン。

 軽い衝撃と共に、壁という絶望が背中から伝わる。


 歯を割る勢いでガチガチと音を響かせ、手に持った鉄パイプをやちゃくちゃに振り回し、恐怖が膀胱を刺激する。彼等の死は直ぐ前に迫っていた。


「「ブモオオォォォっ!!」」


 二体のオークが雄叫びを上げる。


「「ひいいぃぃぃぃっ!!」」


 二人は身体を縮こまらせて、鉄パイプを落としてしまう。

 しかし、彼らにそんな事を構っている余裕は無かった。

 もうダメだと、耳を押さえ、瞼を閉じて、襲い来る死から目を背ける。

 そんな事で、助かる訳も無い──


 ──赤い光に遅れて破裂音が響く。


「ブギャアアァァァ!!」


 右のオークの背中に飛んできた何かが爆発した。

 相棒のオークが痛みと衝撃で倒れる中、左のオークは二人の男に振り下ろそうとしていた棍棒を止めて、何事かと後ろを振り返る。


「うおおおおぉぉぉぉ!!」


 振り返るのとほぼ同時に、勇ましい威勢と共に木刀を持った金髪の少年が突っ込んで来た。


「ブモっ!」


 咄嗟の事でオークは反応できない。

 元よりAGIもDEXも低いオークに即座の対応は出来ないのだ。


「はあぁっ!」


 金髪の少年の美しく基本に忠実な鋭い突きが、オークの喉に突き刺さる。


「ブギャッ!」


 判定は[刺突]

 先端を丸めた木刀の一撃であるが故に、貫きこそしなかったが細い先端は明確にオークにダメージを与える。


「うおおおおぉぉぉぉ!!!」


 喉という急所にクリーンヒットした突きに、オークは仰け反り倒れそうになるのを必死で堪えるが、それは少年にとって見逃す筈も無い隙だった。


 更に突きを顔面、それも眼球を正確に捉える。

 踏ん張ることで硬直した身体では、避ける事も受ける事もは出来ず、鋭い突きは眼球に突き刺さる。


「ッギャアアァァァ!!」


 汚ならしい唾を吐き散らしながら、オークの目から血飛沫が舞う。

 金髪の少年はその血を浴びて、顔をしかめるが止まる事は無い。

 木刀を引き再び攻撃に入る──その時、


「ブモオオォォォッ!!」


 爆発を受け痛みで倒れたオークが復活してきた。

 爆発は派手だったが、その実威力は大した事が無かった。表面を少し火傷しただけで、行動には支障は無い。

 そのオークが追撃しようとする金髪の少年を捉え、激しい怒りと殺気と共に少年へ突っ込む。


「おっと、待ち、なっ!」


 ガンッ!

 金髪の少年に飛び掛かろうとしたオークの頭を、真後ろからスコップが襲った。


「ブギャッ!」


 殴打に対して耐性のあるオークでも、強力な一撃を急所に受けてダメージが無い訳が無い。


 オークを後ろから殴ったのは、オークすら越える巨躯の男。

 刈り上げた黒髪と、健康的な小麦の肌を持つ中年の男だ。


 そんな見るからにパワフルな男の一撃を急所に浴びせられたオークは、視界に星が飛び交い、身体をふらつかせる。

 そこに──


「うおおおぉぉぉぉ!!」


 同じく巨躯の、しかしまだ少年と判断できる男が勢い良く突っ込んで来て、手に持った大きな金槌を振り下ろした。


 その一撃には、明確な殺意と憎しみが込められている。

 荒々しいが、重く硬い金属の塊を遠心力と筋力を合わせて振り下ろしたが故に、耐性を持つ筈のオークの顔面を陥没させた。


 その様子を横目で見ていた、金髪の少年はニヤリと笑みを浮かべ、勝利を確信した。


「そろそろ終わらせるぞ!!」


 喉を潰され目を潰されたオークは、痛む身体で必死に棍棒を振り上げ襲ってくる。

 技も何も無いオークの一撃を避けるなど、金髪の少年には簡単な事で、ステップで横に飛ぶ。

 空振りする棍棒がアスファルトに激突する中で、少年は木刀を振り下ろし、頭を打ちつけ、怯むオークに対して連撃を浴びせていった。


「ブ、ブモっ!!」


 ふらつくオークに金髪の少年は最後の一撃を放つ。


「終わりだあぁぁぁ!!」


 残った眼球に対して放たれた一撃は、狙い違わず柔らかな感触を手に残した。



 ◆◆◆



 二体のオークが幻想的な光となって消えて逝く。


「大丈夫ですか?」


「え?あ?は、はい!」


「助かった?助かったんだよな!?」


 金髪の少年──桐原光は、攻撃で痛んだ手を擦りながら、戦場の端で丸くなる二人の男達に優しく声をかける。


 いきなりの出来事で脳の処理が追い付かなかった二人だが、光に声をかけられる事でようやく我に帰った。

 死に直面しても生きていたという事実に、安堵と共に涙を流して抱き合う。


「若っ!ご無事で!」


 手に大金槌を持った巨躯の少年──近藤匠が駆け寄ってきた。


「ああ。他に敵は?」


「いません!」


「そうか、良かった。匠もご苦労様」


 そう言って爽やかな笑みと共に、親指を上げて、親友兼護衛の匠を労う。

 恐縮する匠の背後から、先ほどのスコップを持った巨躯の中年男性──吉野と、縦に緩やかに巻かれた黒髪の少女──梅宮鈴火、更に息も絶え絶えな少し太った少年の三人が、こちらに急いで近づいて来た。


 吉野は戦闘が終了したと同時に、後ろに隠れる後衛組を呼びに行ったのだ。

 こちらに向かってくる三人の中で、鈴火がスピードを上げて光に飛び付く。


「わっ!す、鈴火さん!」


「光さん!ご無事ですか?」


 勢い良く抱き着く鈴火の柔らかな感触に、思春期の男子である光は思わず赤面する。


「今【軽傷治癒(ライト・ヒール)】を!」


「い、いや大丈夫です!魔力は温存してください!!」


「本当ですか!我慢しません!?」


「本当ですよ!」


 これ以上の接触は理性が保てなくなるので、ちょっと力を込めて鈴火を引き離す。

 匠はオロオロして止めるべきか迷っていただけあり、離れた鈴火にホッとする。


「梅宮。落ち着けよ。お前が俺たちの生命線なんだ」


「そうですよ会長。魔法職はMPが重要なんですから」


 吉野の呆れを混ぜた野太い声と、荒い呼吸に似合わない軽薄だが自信に満ちた声が鈴火にかかる。

 鈴火はその二人を睨み付けながらも理解はしてるので、鼻を鳴らして光の脇に移動する。

 その様子に苦笑しながらも、光は吉野の隣にいる少年──富川晴明へと視線を移す。


「富川君。お見事。君の魔法は何時見ても凄いね」


「ふふっ。だろう。いや、苦労した甲斐があったよ」


 そう言って自慢げに鼻を鳴らす富川。

 鈴火と匠はあまり良い顔はしていなかったが、光は頼もしいと感じていた。


 ──吉野が桐原と合流し、事態解決に乗り出した日。


 暑い校舎を吉野と二人で歩いていた。

 敵があまりに多く外に出るのが困難を極めたため、まずはlevel上げにのりだしたのだ。


 そんな中、三体のオークに見つかり戦闘をするはめになった。

 最初の時の様に慌てる事は無くなり、ちゃんとした剣道有段者としての腕を戻した光に、一体程度は問題無い。吉野も、格闘技の経験者であるが故に、しっかりと一体は相手にできた。


 ただ相手は三体。

 しかも、狭い廊下で出会ったのでは無く、休んでいた机と椅子が片付けられた空き教室で戦闘が始まってしまった。


 狭い廊下なら、巨体のオークは横に二体並ぶの精一杯。それなら三体でもなんとかなったが、広い教室では同時に三体相手にする事になってしまったのだ。


 上手く立ち回ってはいたが、反撃に移れず追い詰められていく二人。

 割れた窓に背が触れたその瞬間──先程と同じく、真っ赤な炎が右側のオークの背中で弾けたのだ。

 困惑しつつも、崩れたオークに決定打を浴びせ形勢は逆転、なんとか勝利を収めたのだ。


 そして、その勝利をもたらした魔法使いが、目の前の富川晴明だ。

 彼が言うには、図書館で見つけた魔導書【炎魔法入門】によって、その魔法の力を得たらしく、共に戦ってくれる仲間を探していたという。


 戦ってくれる仲間を探していたのは光と吉野も同じだ。

 こうして三人はpartyを結成した。


 ──そして更に一夜明け、今日。


 鈴火が森川のカウンセリングと、時間の経過で精神をなんとか回復させ、匠も起き上がった。

 そして二人は、三人に同行を申し出た。


 匠は護衛として、そして光の親友として行くため。

 鈴火は汚名を返上するという建前の元、光が居なくなるという事に過剰に反応して、一緒に行くと申し出た。折れた鈴火の心にとって、光は唯一の拠り所だからだ。


 光も吉野も二人を止めた。

 鈴火はともかく、匠は未だ怪我を負っているのだ。

 ドロップした豚肉を富川の魔法で点した炎で焼いた物を食べたとはいえ、全く回復はしていない。


 しかし二人は強情だった。

 富川は足手まといだと()に対して言ったが、匠はそれに激昂。喧嘩になりそうなのを光が抑え、結局ついてくる事になった。


 だが実際にpartyを組むと数の力は偉大で、怪我を負った匠も、後ろからモップの柄で牽制する鈴火も、しっかり戦力になり今日は順調過ぎるくらいに攻略が進んだ。


 その途中、偶然一体でいたオーク・クレリックという個体が落とした【光魔法入門】によって、鈴火が回復役として力を持つ事となる。(余談だが、ここで富川と若干揉めた。自分が魔法を使うのが相応しいと。もっとも、MPやmagic値の関係で全員から反対されたが)

 匠が【軽傷治癒(ライト・ヒール)】で癒され、たちまち攻略の速度は進み、ようやく学校外に出る事に成功したのだった。


「お二人とも、立てますか?」


「ああ!助かったありがとう!!」


「マジで助かった!ありがとう!!」


 そして現在、五人は救助活動もしながら、目的地の道具屋に急いでいた。

 学校に居る者達を助けるために。一人でも多くの人を、この理不尽な世界から救うために。


 助けた二人の感謝に、むず痒い思いを感じながら、内心、level-UPで成長(・・)した力を実感していた。

 これなら、もうオークには負けない。


(待ってろよ。七海!)


 光は愛する者に、固く誓う。

 必ず、助けに行くと。



 ◆◆◆



《name:桐原光/人間

level:4

exp:97

title:


energy:[LP・50/53][MP・44][SP・28/53]

physical:[STR・30][VIT・25][AGI・26][DEX・24]

magic:[M-STR・26][M-PUR・20][M-RES・18][M-CON・16]


skill:[剣・Ⅴ][格闘・Ⅳ][気配察知・Ⅰ]


tolerance:[苦痛・Ⅱ]


ability:【威光】


party:【光の解放者/5】

guild:》



《name:近藤匠/人間

level:3

exp:33

title:


energy:[LP・46/56][MP・15][SP・27/58]

physical:[STR・30][VIT・30][AGI・15][DEX・13]

magic:[M-STR・18][M-PUR・14][M-RES・15][M-CON・13]


skill:[格闘・Ⅴ][気配察知・Ⅰ][料理・Ⅲ]


tolerance:[苦痛・Ⅱ]


ability:【頑丈】


party:【光の解放者/5】

guild:》



《name:梅宮鈴火/人間

level:3

exp:35

title:


energy:[LP・30/40][MP・17/47][SP・19/41]

physical:[STR・16][VIT・11][AGI・19][DEX・15]

magic:[M-STR・21][M-PUR・23][M-RES・20][M-CON・20]


skill:[薙刀:Ⅴ][光魔法・Ⅰ][気配察知・Ⅰ]


tolerance:[苦痛・Ⅱ]


ability:【妖艶】


party:【光の解放者/5】

guild:》



《name:吉野武蔵/人間

level:4

exp:105

title:


energy:[LP・61/70][MP・24][SP・42/76]

physical:[STR・37][VIT・38][AGI・15][DEX・15]

magic:[M-STR・23][M-PUR・18][M-RES・29][M-CON・13]


skill:[格闘・Ⅵ][気配察知・Ⅰ][料理・Ⅲ]


tolerance:[苦痛・Ⅲ]


ability:【頑丈】


party:【光の解放者/5】

guild:》



《name:富川晴明/人間

level:3

exp:80

title:


energy:[LP・20/22][MP・15/32][SP・6/17]

physical:[STR・11][VIT・13][AGI・5][DEX・10]

magic:[M-STR・20][M-PUR・22][M-RES・5][M-CON・26]


skill:[炎魔法・Ⅰ]


tolerance:


ability:【妄想】【魅了脆弱】


party:【光の解放者/5】

guild:》



夜月達はパーティの名前を登録するのが面倒なので【NO NAME 】なのです。光達はしっかり決めているようですね。

当初は富川が決めた【黒き焔の使徒】だったのですが、鈴火によって変えられました。


アイテムはモンスターを倒す以外にも、設置されている宝箱から発見する事ができます。稀ですが。



※少し間違えた所があったので修正します。(鈴火のmagic値)

鈴火はlevelが上がってmagic値が上昇してから[光魔法]を覚えました。

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