新/024/宝箱
宝箱を開けるのはワクワクします。
後、夜月君にデリカシーを期待しないように。
ちゅんちゅんと、こんな殺伐とした世の中だというのに、小鳥の囀りが朝日の到来と共に響き渡る。
雲一つ無い快晴。…………滅入る。
一生で一番かもしれない濃厚な夜を経験した朝だというのに、オークの気配がするくらいで、特に変わったところは無い。俺、慣れたな。
仮拠点に戻って一夜。
ナナは疲れで熟睡していて、結構な戦闘音があったのに良く寝ていた。雛は戦闘音のせいで結構な緊張をしたまま周囲を警戒していた。俺が帰ってくると、あからさまに安堵して、その後すぐに寝かせた。
「う~ん。良く寝たッス!」
「おはよ~」
こいつらも、こいつらで慣れたな。
まだ二回目の夜なのに、素敵な適応力だこと。
リビングだと思われる、散らかった部屋のソファに三人で腰をかけ、夜の報告を行う事にした。
「水使って良いから顔洗え。夜の戦果を確かめたら、すぐに出る」
「おお!待ってました!!」
「戦果?………ま、まさか夜にあいつと!?」
ああ、ナナには言ってなかったな。
水袋を取り落とし、唖然としたまま硬直。そして、一気に頬を膨らます。この世界だと、水は貴重品なんだぞ。
「なんでぼくに言わなかったんだ!」
「お前、言ったら寝ないだろ。寝る時俺いないと眠れないし」
「そうだけど!そうだけど……」
頬を膨らましたまま、目に涙を溜める。
「まあまあ、夜月先輩は七海先輩に負担をかけたくなかったんスよ」
「分かってる!!ふん。それで、戦果はどうだったんだ?しょぼかったら許さないぞ!」
雛が笑みを浮かべたまま宥める。どっちが年上なのかちょっと疑問に思う光景だ。いや、外見からして既に疑問か。
袖で涙を拭うナナ。今度は口を尖らせているものの、話を進める事にしたようだ。
若干、拗ねてる。俺の言葉は的を射ているために、ナナも反論出来ないが、感情面では納得しない。
うん…………気にしない事にした。
「じゃあ、まず金からだ。夜の間に稼いだ額は──179C/109S/1Gだ」
「「はぁ?」」
「これで三人の総額は、2489C/110S/1G=234890円。当分金には困──」
「「ストップ~~っ!!」」
「あ?」
何だ?
というか煩い。モンスターが寄ってきたらどうするんだ。
「なんなんだそれ!!1G?110S??なんでそんなに!!」
「おかしくないッスか!見せてください!ていうか実体化させて!!」
「煩い」
──ゴッ。
「「ぎゃうっ!!」」
俺に詰め寄る二人の頭をぶつけ合わせて(殴って無いからセーフ)黙らせる。
どうも俺が稼いで来た額が驚きらしい。
まあ、確かにそうだな。シャーネとの出会いのせいで、すっかり感覚が麻痺していた。
後、途中狩ったオーク達のアイテムは売ってきました。
シャーネの事を今二人に話す気は無い。
いつか話すだろうし、話さねばならないだろうが、今は止めておく。
自分でも感情の整理がついていないしな。ハッキリ言って、よく分からん。
とりあえず、金について話す。
ヒートスタンプボア・亜種と、ヴァンパイア・ワービースト、後【先駆者】についても一通り。
シャーネからのプレゼントについては、ヴァンパイアが守っていた事にする。元々ヴァンパイアが落とした宝箱とデザインが似てるから、言い訳になるだろ。
「な、なるほど~」
納得しながらも、雛はいつもの笑みの口許がひきつっている。
「……【先駆者】か。見せて」
「あいよ」
ナナに請われて、特に断る理由も無いから【Status】画面を見せる。
俺がスマホをナナの前に持ってくると、雛もひょっこり寄ってきた。
「「…………………」」
二人とも無言で見つめ、徐に顔を上げて俺に対して信じられないという表情を見せる。
「なんで一晩で、経験値が二倍以上になるんだよ」
「つーか、能力値ヤバくないッスか?」
強かったんだよ。猪もヴァンパイアも。
【大物撃破】とか出てたし。
あれくらいの経験値貰えなかったら、挑んだ甲斐がねえよ。
俺はスマホを引っ込め、今度は【Item】のアイコンをタッチして、storageを見る。
昨日の夜に手に入れたドロップアイテムのラインナップはこんなもん。……【不思議な宝箱・上】はドロップと言えるのだろうか?
【灼熱の毛皮】
【灼熱の宝箱】
【荒波】
【吸血鬼の宝箱】
という感じだ。
【灼熱の毛皮】はお分かりの通り、巨猪の贈り物。
幾らで売れるかな?と思ったら、ナナと雛がレア素材っぽいからとっておけと言って来た。
【荒波】は、rankC+の太刀。
吸血鬼のドロップした、袋に入った長細い長方体の箱の中身だ。
偶然、じゃ無いのだろうな。シャーネが意図して向かわせたのだから。
何か複雑だが、雛に渡す。
「おお~!凄いッス!結構な業物ッス!!」
【荒波】はその名の通り刀身の刃紋が荒く波打つ様になっているから、だと思う。
雛は刀を鞘から手慣れた動作で抜き、鋒から柄尻までじっくり観察する。
そして満足いったのか、いつもの明るい笑顔を五割増しで振り撒き、上機嫌に鞘に納めた太刀を抱く。
「ちょっと振ってくるッス!」
「これから宝箱開けるけど、いいのか?」
「………あ、後にするッス」
雛は笑顔から一転、泣きそうなくらいガックリと肩を落とす。
後ろ髪を盛大に引かれながらも、ソファに身を沈めた。
「じゃあ、宝箱だな」
「何が入ってるんだろうな?」
宝箱は全部で四つ。
ドロップした物と、【先駆者】獲得時の報酬、シャーネからの贈り物。
「先ずは【灼熱の宝箱】からいくか」
「うん」
「ワクワク~♪」
お前、復活早いな。
二人は興味津々で、キュウィン、という音と共に出現した、猪の紋が刻まれる宝箱を覗き込む。
「そういえば、ミミックっていうモンスターいなかったけ?」
「「……………………………」」
二人は無言で半歩下がった。
何か結構息合ってきたな、こいつら。
宝箱の蓋に手を伸ばし、開ける──と、同時に宝箱全体が赤く光った。
「「「っ!!」」」
まさか本当にミミック?
俺はナナを背に庇いながら、そんな疑念を抱いた。
無論、そんな事は無かったが。
光が収まり残光が強く目に焼き付けられる中、宝箱のあった場所を見る。「あった場所」で分かる通り、目の前から宝箱は消えている。
その後に残っていたのは──
「腕輪??」
そう、腕輪だった。
銀色の金属製で、炎の彫刻が彫られている。しかし、一番目に入ってくるのは、直径三センチはあるルビーのような宝石だった。
ナナと雛が俺の背から腕輪を覗き込む。
危険が無い事だけは分かったので、テーブルに置かれた腕輪を手に取った。
「本物のルビーだな」
一番目が効くナナが、一目で本物だと見抜いた。良いとこのお嬢様なのだよ、こんなんでも。
「まじッスか!?大きいですね~」
炎の彫刻はシンプルだが綺麗で、金属は普通の鋼とはいえ良質、ルビーのカットも中々で、普通に売ったら100万くらいはしそうだな。
しかし?ただの装飾品かな?
「【Dictionary】を使って鑑定して見てくれ、夜月」
「ああ」
ナナに言われてスマホの画面を切り替え、【Dictionary】のカメラを起動する。
軽いシャッター音と共に、画面が固定される。
そして《しばらくお待ちください》の後、データが表示された。巨猪自身のデータは出なかったのに、ドロップアイテムが出るのは、少し納得いかない。
《火力の腕輪/accessory
制限:[無し]
性能:[STR+10]
特殊:[炎属性耐性上昇・1][サイズ自動調整]
rank:[C++]》
ほう、中々有用なアイテムらしいな。
しかし、サイズ自動調整?
腕輪は直径六、七センチ程度の輪になっていて、雛でギリギリ腕に通せるくらい。俺だと指の関節で詰まる。
サイズ自動調整と言うくらいだから、俺でも通せるのだろうか?
試しに輪の中に手を入れてみる──が、当然の様に入らなかった。
「……不良品?」
「【Item】経由で装備してみなよ」
ナナに言われたので、一度storageにしまう。
すると、欄に《装備しますか?yes/no》と出てきた。迷わずyesを押す。左腕か、右腕かという表示もされたので、左を押す。
「おお」
左腕が輪の様に赤く発光。
光がピークに達した数秒後には、左腕に【火力の腕輪】が嵌まっていた。
「おお~!テンプレ魔法アイテムッスね!」
「感じはどうだ?」
雛の言葉はスルーして、ナナの質問に答えるべく、目を閉じて気の流れを整えながら、肉体の変化を感じとる。
「……確かに、少し強化されているな」
拳をギュッと握って見ると、さっきよりも強い力を感じ取れる。
また、面倒な。
俺はまだ、上がった【status】の把握が出来ていないので、あまり嬉しくない。というか、そもそもこういうので強化されても嬉しくない。
俺はequipmentで腕輪の装備を解除。storage経由で実体化させる。
そして──
「ほら」
「わっ!」
──雛に投げ渡す。
俺はあまり正面から戦闘はしないし、ナナはそもそも前に出ないので装備しても意味は無い。ならば、一番前に出て、なおかつ負担の大きい雛に装備させるのが一番だろう。
「いいんスか?」
「貸してやる。その分働け」
「承知しました!!」
雛は、ぴしっと綺麗な敬礼をした後、鼻唄を歌いながらスマホを起動して早速装備をする。
ナナがちょっと不満そうなのは、無視。
俺はstorageから、次の宝箱を取り出す。
巨猪の物より若干小さい、ヴァンパイアの落とした宝箱。
基本黒で、赤い縁が目立つ。蓋の部分にはコウモリが描かれている。
雛が装備し終わり、新しい玩具を貰った子供の様にナナや俺に見せびらかすので、蹴りを入れて大人しくさせる。
そして痛がる雛を尻目に、二つ目の宝箱を開ける。
今度はさっきの炎のような鮮烈な赤では無く、ドス黒い血色の光が周囲を照らす。
再びナナを背に庇いながら、光が収まるのを待った。
残光に目を細めつつ、目を開いた先にあったのは、マントだった。
闇から切り取ったような真っ黒で、裏地は血のように赤く染まるマント。
手に取って見ると、驚く程滑らかで、ヒンヤリとしている。
いかにも吸血鬼が着ていそうなマントだった。
さっそく【Dictionary】で調べてみる。
《吸血鬼の黒衣/protector
制限:[無し]
性能:[DEF・5/M-DEF・20]
耐性:[闇・Ⅲ]
特殊:[日除け][サイズ自動調整]
rank:[C+]》
ほお、結構良いな。特に、日除けがあるのが。
この雲一つ無い、狂暴な日差しの中ではかなり使える物だ。その他の性能も中々だし。
──ちなみに、耐性という項目で表示されるのはアイテムの耐性。特殊という項目に表示される耐性上昇は【status】のtoleranceに補正が入る──
「ナナ。お前が着ろ」
「暑くないか?」
「日除けって出てるだろ。大丈夫だ」
まあ、日除けとは言っても、じめじめした暑さが特徴な日本の夏。着込むと暑いかもしれない。
「おお!」
ブカブカだったマントは、ナナがstorage経由で装備すると、赤黒い光となって出現する。
「吸血鬼だな」
「個人的には先輩の方が似合うと思うッス」
雛の意見を無視し、ナナに合わされたマントを確認する。
肩の辺りで留められた黒いマントは、即イメージされる吸血鬼像そのものだ。
「どうだ?」
「似合ってるよ」
吸血鬼のマントは、ナナの神秘的な美に取り込まれ、白い肌と黒い髪に良く似合っていた。
もっとも、ナナは基本的に何でも似合う。まあ、一番似合うのはランドセルだけど。
さて、次は【不思議な宝箱】だ。
黒の「?」マークのついた、白い宝箱。いや、宝箱というか、立方体のただの箱に見える。
情報には、ランダムでアイテムが出現する。という感じで書かれていた。
これは、ナナに開けさせよう。こういう時の【幸運】
「ミミックに気を付けてください!七海先輩!」
「いるわけ無いだろ!」
マントから小さな両手を出して、立方体の箱を開ける。
カチッ、という音と共に、虹色の閃光が室内を襲う。
さっきの二つの比では無い光量なのだが、不思議と目に襲う痛みは無くて、強い光の中で目を開け続けるという奇妙な体験だった。
その奇妙な体験の数秒後の発光は何事も無かったかのように収まり、目の前には綺麗な杖が落ちていた。
《【天空珠の白杖】:weapon
制限:[STR・15以上]
性能:[MP+200][M-ATT・70][M-PUR+30/M-CON+30]
特殊:[魔力回復/晴][自動修復/晴][風魔法/M-ATT+10%][雷魔法/M-ATT+10%][マッジクシールド][マジックアロー][所有者登録/西園寺七海]
耐久度:[8]
状態:[良]
rank:[A]》
「また凄いの引き寄せたなお前」
「……Aって、まじスか?」
「あはは……」
ナナの小さな手に抱えられた白い杖を三人で、感心、驚愕、呆れの三種の感情を持って眺める。
ナナが開いた【不思議な宝箱・上】より出てきたのは、rank[A]の杖だった。
純白に輝く金属で作られた杖。ナナの身長(145)どころか雛の身長(162)より長く、先端には翼を広げた二位の天使が、蒼の光を放つ宝珠を支えている。
正しく最高クラスの杖に相応しいデザインだ。それに、魔力とか良く分からない俺でも感じるほど、力が込められている。
【Dictionary】にはデータが載っておらず、equipmentで詳細を表示した。
weapon、protector、accessoryなら、必要な情報が載る。便利だ。
[魔力回復・晴]快晴時にMPの回復量が三倍になる。
[自動修復・晴]杖が破損した場合、快晴時に自動で修復される。(大破状態は不可能)
[マジックシールド]20MPを消費すると、自分の前にシールドを展開できる。
[マジックアロー]5MPを消費すると、魔法の矢を放つ事ができる。
[所有者登録]所有者を登録すると、その登録者以外は使用不可能となり、storageにもしまえない。登録変更は本人以外不可能。
てな感じ。他にも色々能力補正があって、凄いと言うよりヤバい装備だ。いや、ここは【幸運】がヤバいと言うべきか。
ナナとしては、あまり良い思い出の無いこのabilityに、こうも活躍されるのは複雑な様だ。
「じゃ、次だな」
あまり時間も無いので次々行く。
なるべく涼しい朝に行動をしたい。
杖を見ながら固まるナナと、その杖を興味深そうに観察する二人を置いて、俺は最後の、シャーネから貰った宝箱をstorageから出す。
「でかいな」
「デカいですね」
そう、シャーネから貰った宝箱はデカい。
横二百センチ、縦八十センチ、高さ五十センチほどの直方体。基本黒で、金でコウモリとハートマークの装飾が施されている。ナナどころか、俺ですら入れる。
若干躊躇いを持ちながらも、どうぜ開けるはめになるからと、蓋に手をかける。
重い。心理的にもそうだが、普通に重い。蓋だけで五キロくらいするんじゃ無いだろうか?
「あれ?」
俺も、見ていた二人も首を傾げる。
光らない。普通に開く。
結局、蓋を限界まで開けても光らず、普通に中身が入っていた。
そして、
──バァンッ!!
垂直に立った蓋を、勢い良くしめる。
「夜月……今のなんだ?」
「言うな」
「……それ、宝箱でいいんスか?」
「言うな」
「なんかお前の名前もあったような」
「言うな」
見間違いの僅かな可能性に全力で賭けて、再び重い蓋を開ける。重い。マジで重い。
「「「………………………」」」
勘弁してくれよ、シャーネ。
俺達の視界に、間違う事無く飛び込んできたのは、ウインクするシャーネの写真。蓋の裏に、シャーネの顔写真や、全身写真が隙間無く貼ってあった。
更にふざけた事に、ウインクする写真には『夜月LOVE』と書かれている。
俺は精神的LPに重大なダメージを与えられた。
え?あいつこういう性格なの?
急激に昨晩の濃厚な出会いが、薄く灰色がかっていき、「会いたい」から「会いたくない」に変わっていく。
「どういう事なんだ?」
「完全に夜月先輩宛のプレゼントですよね」
おいおいおいおい、シャーネの事は隠すと決めたってのに。あの馬鹿吸血鬼が。
「敵は相当に夜月に感心を持ってるな。昨日のレッサーヴァンパイアといい、今日のヴァンパイアといい、間違いなく夜月を狙っている。………………変な意味で」
「言うな」
ナナがそう言ってくれたお陰で、シャーネの事は隠せたが、ダメージは止まらない。
「しかし、メッチャ可愛いッスね。しかもロリ吸血鬼とか、なんつーテンプレ」
無視だ無視。
とりあえず写真は無視し、中身を見る。
最初に目に飛び込んで来たのは、丁寧に折り畳まれた漆黒のハーフコート。赤い糸で襟や背、腕の裾に奇妙な紋様が刺繍されている。一緒に入っているシャツは、黒と赤のチェック柄。コートと一緒に着る為か、配色が同じだ。
他には黒いズボンと、黒いベルトが細いのと太いので二本。黒いブーツが一足。黒いグローブが一組。黒い下着の上下が三組。そして黒い箱。黒尽くし。いや、今の格好もそうなんだけど。
箱以外にはコートと同じで赤い刺繍が施されている。ベルトとズボンはコートと同じく奇妙な紋様だが、ブーツに刺繍されているのは、コウモリの羽だと思われる。
なんでベルトは二つあるんだろう?ズボンのベルトループの幅からすると、太い方は通らない気がす……あ、コートの方にもベルトループが着いてる。コートの上からしろって事か。
次に中に入っている箱を確認してみる。
箱の大きさは縦五十センチ、横三十センチ、高さ十五センチほどの大きさの箱。大きな箱と同じく、金でハートとコウモリが装飾されている。
今度写真だったら捨てよう。俺は目の前で笑顔を振り撒くシャーネの写真に、そう決意する。
開ける。
写真じゃなかった。
箱の中に入っていたのは二つ。
赤い宝石と金の細工が施される美しい鞘に収まった短刀。
漆黒の光沢を持つ金属で作られ、深紅の宝珠が嵌め込まれた腕輪。
短刀を取り出してみる。
柄はゴムでもプラスチックでも無い。革だ。丈夫そうで、何故か異様にフィットする。
片刃で刃渡りは三十センチ。抜いてみると、
「ほう」
「わお」
俺と雛が思わず声を出す。
美しい漆黒の刃を持つ刀身。触っただけで斬れてしまうような鋭利過ぎる刃は、危うさと美しさをバランス良く内包する。
赤く彫刻が施されていて、一見装飾品にも見えるが、俺と雛は即座に業物だと見抜いた。
腕輪の方は、【火力の腕輪】に嵌め込まれた宝石より更に赤く濃い宝石がついており、こちらも奇妙な紋様が、黒い金属に彫刻されている。
「さてと………めんどくせえ」
装備してみるのが。
【Dictionary】じゃ出ないだろう。情報見るには着ないと駄目だと思う。
「服一式ッスね。いいな~」
「ああ。羨ましい」
そうか?重いぞこれ、愛が。
「ぼくらもそろそろ着替えたい。お風呂入りたい」
「激しく同意ッス」
ああ。
この二日間、俺達服を変えて無いしな。
俺はあまり気にしないが──
「お前ら臭いもんな」
「「言うなああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
◆◆◆
《【血と愛で飾る夜の衣/half-coat】:[protector]
制限:[シャーネの愛する者]
性能:[DEF・50][M-DEF・90][STR+10][VIT+10]
耐性:[斬撃・Ⅴ][殴打・Ⅴ][刺突・Ⅳ][炎・Ⅳ][氷・Ⅳ][雷・Ⅲ]
特殊:[体力回復/夜][自動修復/夜][サイズ自動調整][日除け][闇属性耐性上昇/Ⅲ][幻属性耐性上昇/Ⅲ][魔眼耐性上昇/Ⅲ]
耐久度:[9]
制作者:[神崎シャーネ]
rank:[A]
【血と愛で飾る夜の衣/shirt】:[protector]
制限:[シャーネの愛する者]
性能:[DEF・20][M-DEF・40]
耐性:[炎・Ⅳ][氷・Ⅳ][雷・Ⅲ]
特殊:[自動修復/夜][サイズ自動調整]
耐久度:[8]
制作者:[神崎シャーネ]
rank:[B]
【血と愛で飾る夜の衣/under-wear】:[protector]
制限:[シャーネの愛する者]
性能:[DEF・10][M-DEF・20]
耐性:[炎・Ⅲ][氷・Ⅲ][雷・Ⅲ]
特殊:[温度調整][自動修復/夜][サイズ自動調整]
耐久度:[8]
制作者:[神崎シャーネ]
rank:[B]
【血と愛で飾る夜の衣・pants】:[protector]
制限:[シャーネの愛する者]
性能:[DEF・30][M-DEF・30][AGI+10]
耐性:[炎・Ⅲ][氷・Ⅲ][雷・Ⅲ]
特殊:[自動修復/夜][サイズ自動調整]
耐久度:[8]
制作者:[神崎シャーネ]
rank:[B]
【血と愛で飾る夜の衣/glove】:[protector]
制限:[シャーネの愛する者]
性能:[ATT・40][DEF・40][M-DEF・30][STR+10]
耐性:[斬撃・Ⅴ][殴打・Ⅴ][刺突・Ⅴ][炎・Ⅳ][氷・Ⅳ][雷・Ⅳ]
特殊:[自動修復/夜][サイズ自動調整][怪力]
耐久度:[9]
制作者:[神崎シャーネ]
rank:[B++]
【影化の帯】:[accessory]
制限:[M-CON・50以上][気配遮断・Ⅴ以上]
特殊:[自動修復/夜][サイズ自動調整][影化][所有者登録/神崎夜月]
耐久度:[6]
製作者:[神崎シャーネ]
rank:[B+]
【魔断の帯】:[accessory]
制限:[M-STR・50以上]
性能:[M-RES+15]
特殊:[自動修復/夜][サイズ自動調整][アンチマジックオーラ][所有者登録/神崎夜月]
耐久度:[6]
製作者:[神崎シャーネ]
rank:[B+]
【血色の羽を持つ長靴】:[protector]
制限:[M-CON・50以上][AGI・100以上]
性能:[ATT・10][DEF・30][M-DEF・30][AGI+30]
耐性:[斬撃・Ⅴ][殴打・Ⅴ][刺突・Ⅳ]
特殊:[自動修復/夜][サイズ自動調整][所有者登録/神崎夜月][脚部負担激減][飛翔][滞空][滑空][空歩]
耐久度:[8]
制作者:[エリー]
rank:[A]
【蠱毒の鉄血刀】:[weapon]
制限:[苦痛耐性・Ⅷ以上][毒耐性・Ⅴ以上][M-RES・80以上]
性能:[ATT・60]
耐性:[腐食・Ⅶ][殴打・Ⅴ]
特殊:[自動修復/夜][大怨の蠱毒][闇耐性上昇/Ⅲ][毒耐性上昇/Ⅲ][所有者登録/神崎夜月]
耐久度:[8]
制作者:[不浄]
rank:[B++]
【千の刃/bracelet】:weapon
制限:[M-CON・50以上][DEX・100以上][投擲・Ⅶ以上]
性能:[ATT・10~30]
特殊:[自動修復/夜][サイズ自動調整][疑似武器生成/ダガー][フローティング・アーム][所有者登録/神崎夜月]
耐久度:[6]
制作者:[神崎シャーネ]
rank:[B++]》
…………これ、使わないとダメなの?
ていうか神埼シャーネって、既に入籍確定!?
勘弁してくれよ、ストーカーレベルだぞ……。
夜月ドン引き。
ちなみにシャーネちゃんは、全部[A]で揃えたかったようですが、部下の人に過剰な物は引かれると言われた様なので、しぶしぶ性能を落としました。繰り返します。落としました。
後、夜月の事を捕捉してから二日と経っていないのに装備を仕上げる事ができたのは、特殊な道具と特殊な技法を使ったからです。




