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新/015/情報

「見事に閉まってるな」


「ああ」


 目的地である居酒屋「楽」は、店先のシャッターが下りていて、正面からの侵入はできなかった。

 中から四人ほどの気配を感じる。他と同じで立て籠っているのだろう。


「どうする?ノックしてみるのか?」


「ぶち破る決まってるだろ」


「君はもう少し躊躇いを持とうぜ」


 ノックしたってこの状況じゃあ出てくれる訳無いだろう。

 なら最初からぶち破ったほうがいい。


 とはいえ、さすがにこの意外に分厚いシャッターをぶち破るのは難しい。本気で二発くらい殴らなきゃいけない。

 裏口に回るとするか。


 ナナを伴い居酒屋脇の狭い路地に入っていく。この幅はオーク一体でもギリギリ。一見こういう所が安全っぽいけど、左右に避けるスペースが無い以上、魔法や飛び道具を相手にしたら避けるのが困難になる。まあ、普通のオークならまだ良いけど。


 路地を十メートルほど進むと、何処にでもある茶色い扉があった。年月を感じさせるが、趣とかは無く、ただ汚い扉という印象だ。

 ノブを回して見るが、当然鍵が掛かっている。感じからして、扉の内側にはバリケードが作られているっぽい。

 まあ、前のシャッターよりは破りやすい。防犯用と急造の違いだな。


 一応、破る前にスマホを確認してみる。予想通り、エリア内には入っていなかった。

 ナナに少し距離を取らせる。

 俺は茶色いドアに、革靴の底を押し当てた。


 この狭い通路では大振りはできない。もっとも、大振りの技など実戦では使わないので、得意じゃないけど。

 間接を連動。筋肉を収縮。気焔を練り上げ足の裏に集中。そして筋肉、骨格共に解放。全体重を足に集約し、一点の無駄無く全てを前に。


 ──爆発。


 そうとしか思えない威力が、蝶番も、バリケードとして置いた冷蔵庫も、全て含めて弾け飛ぶ。

 傍目から見たら、足の裏に地雷でもセットしてある様に見えただろう。振りかぶる事無く、急に扉が弾けたのだから。


「「「──ひいいぃぃぃっ!!」」」


 奥から三つの悲鳴と恐怖が籠められた必死の敵意が伝わってくる。

 気配からして残り一つは寝てるな。


「行くぞ、ナナ」


「………お、お邪魔します」


 まあ、寝てようと敵意を持とうと関係無いけど。

 壊れたドアを蹴り飛ばし、ナナを抱き上げ倒れた冷蔵庫を越える。

 中は台所の様で、食器やスーパーの食品同様、食べられなくなっている食材が転がっていた。


 慌てて二階に逃げていく住人の足音を聞きながら、俺はスマホを操作する。

 ん?あれ?


「使えないな」


「あ、本当だ。………ここって、住居だろ?居酒屋は前なんじゃ?」


「ああ」


 ここまで来たのにダメなのか、と思ったが、ナナの言う通りここは居酒屋裏の住居。繋がっているものの、居酒屋では無い。


 住人は上に逃げているので、土足のままスムーズに廊下を進む。まあ、実際は一歩半で終わる廊下だけど。

 居酒屋と住居を隔てる扉を開くと、何処にでもあるような居酒屋の光景が広がる。七席のカウンターと、三つのテーブル席が並び、少々手狭で、汚れている感はあるけど、趣はまあまあ有る。

 そこで再度スマホを確認すると、


《shop-area:情報屋:rankD

 入店しますか?yes/no》


 おっし。area内に入ったようだ。

 rankD……とか言われても比較が無いから分かんないな。

 ナナと顔を見合わせyesを押す。


《welcome!!buy/sell》


 商品リストを確認していく。

 結構な量があり、基本的に値段がS以上。苦労して稼いだ甲斐があった。

 ナナと相談して、必要な情報は金を惜しまず購入する事に決めた。

 二人揃って1105C/2Sだから、大体は購入できる。



 ◆◆◆



《ボーナス週間/1S:yes・no》


《yesを確認。自動的にmoneyより差し引かれます:残金/500C》


《開幕からの一週間、level-UP時のBPが10になる》


《安全地帯/1S:yes・no》


《yesを確認。自動的にmoneyより差し引かれます:残金/400C》


《一:避難区域。

 area-rank以下のモンスターは不可侵となります。ただし、rankより上のモンスターには適応されません。


 二:宿屋。

 rankに関係無く、そのarea内ではモンスターは不可侵となります。ただし滞在できるのは、入店後に料金を払ってから二十四時間以内のみ。時間超過及び未払いによる不法滞在は【(ペナルティー)】という状態異常にかかります。


 三:【マイホーム】

 不動産屋で購入可能。設置した範囲内をモンスターの不可侵領域とする。鍵を持たない者が中に入ると【罰】の状態異常になる。設置後の移転は不可能。


 四:神殿

 area内にモンスターは不可侵です。また、内部での暴行、強盗は禁止されている。お布施1Cにつき三分の滞在許可を貰える。不法滞在は【罰】をかけられ、暴行、強盗は【天罰】によってLPを全損させられる》


《連絡手段/2S:yes・no》


《yesを確認。自動的にmoneyより差し引かれます:残金200C》


《一:friend登録。addressをlistに登録した者へ、mailを送信する事が可能。


 二:郵便局。listの登録の有無に関わらず、相手と自分の氏名、年齢、生年月日を記載する事で、他者に有料でmailを送る事ができる。また、listに登録してある人物へ、アイテムやお金の送信が可能。ただしaddressを書いて送る事は不可能です》


《area-世田谷区/1S:yes・no》


《yesを確認。自動的にmoneyより差し引かれます:残金100C》


《area-name【巨豚の欲望】/area-rank【F】/area-master【オーク・キング】》



 ◆◆◆



《攻撃と防御と魔法/1S:yes・no》


《yesを確認。自動的にmoneyより差し引かれます:残金/605C》


《物理攻撃力

 STR+ATT+DEXの使用武器または技のskill-leve:Ⅰにつき10%


 物理防御力

 VIT+DEF


 魔力攻撃力

 M-STR+M-ATT


 魔力防御力

 M-RES+M-DEF


 魔法展開速度

 使用魔法の基礎展開速度-M-PURの使用魔法skill-level:Ⅰにつき10%


 魔力消費量

 使用魔法の基礎必要魔力-M-CONの使用魔法skill-level:Ⅰにつき10%》


《避難区域/1S:yes・no》


《yesを確認。自動的にmoneyより差し引かれます:残金/505C》


《公立野球場(一部を除く)・幼稚園(一部を除く)・小学校(一部を除く)・私立病院(一部除く)》


《【罰】/2S:yes・no》


《yesを確認。自動的にmoneyより差し引かれます:残金305C》


《制限がかけられ、制限を意図、故意問わず無視した場合、LPを全損する。期限切れ以外での解除は不可能》


《バッテリー/1S:yes・no》


《yesを確認。自動的にmoneyより差し引かれます:残金/205C》


《一日に10%消費します。

 充電するには神殿にて10%=10Cで行えます》


《魔法/1S:yes・no》


《yesを確認。自動的にmoneyより差し引かれます:残//105C》


《習得方法:魔導書の入門編にMPの八割を注ぐ事で習得できる。

 火・水・風・土・雷・氷・闇・光・幻の属性が存在する。ただし、系統外の魔法も有り。

 各属性に第一階級~第十階級までの階級が存在》



 ◆◆◆



「……おい夜月、ボーナス週間だってさ」


「ふーん」


 なるほどね。多いと思っていたBPはこういう理由だったのか。

 それにしてもエグい。今日から一週間って設定したても、まともに行動できる奴が、果たして何人いる事か。日本中探しても一桁しかいかない可能性だって十分にあるのだ。


「ここで稼がなくては」


 キラキラとゲーム脳輝かせてる所悪いが、それよりも重要な事を考えましょう。


「それには一応賛成してやるが……その前に行くとこ決めよう」


「ああ」


 まず安全地帯に行くのは当然。

 避難区域か宿屋か神殿。【マイホーム】は将来的には欲しいけど、現状は無理だろうから却下。


 宿屋だな。

 避難区域は完全な安全地帯じゃ無いし、何より人が多く集まってくる。無秩序でも危険だが、一致団結していても危険だ。この危機的な状況では、集団は排他的で依存的になる。


 神殿は高い。

 丸一日泊まるとしたら最低480C=80C/4S=4800円必要だ。日本円に表すとそれほどまでじゃない、と感じるかもしれないが、豚肉合わせてオーク十体以上。高いだろう?


 故の宿屋。

 宿屋のareaはホテルだ。

 一応学園の駅前にはあったのだが、飛行機の墜落があった以上、近づけない。

 となると、二つ隣の駅前になるな。

 直線距離で、五、六キロくらいある。俺なら一時間もかから無い。が、ナナのペースに合わせ、休憩や強敵の迂回をすれば、その五、いや六倍はかかる

 体感で、現在四時程度。

 日が沈むから無理だな。俺ならともかく、ナナじゃ無理。


 というかそもそも、今日の行動は控えるべきなんだよな。

 ナナのSP見ると、8以上回復してない。表面的な疲労は休憩で回復しても、積もった疲労はそう簡単に回復しない。

 これ以上溜めるのは良くない。


「……今日はここで休もう」


「ここで?」


「そうだ」


 バリケードは破壊したが、あの通路じゃオークは通って来ないだろう。万が一に備えて、バリケードも復活させればいいし。


「ここの住人には?」


「むろん対価は払う。ここの家主ならばな」


 住人に対して、使わせてと頼むのだから、対価は当然。この状況でも義理は通すさ。ただし、本来の住人ならばな。

 向こうも勝手に使っているとしたら、こちらが使うのに文句は言えない。言っても殴るし。


「だったら水と食料だな」


 確かに。金など渡されても微妙だからな。

 スーパーが近くにあるのだから自分で買いに行け、と思わなくも無いが、一般人にしてみたら怪物の彷徨く中に少しでも出たくは無いだろう。


「なあ、少し魔法試したいんだが」


「ダメ。今日は休む」


「ボーナス週間………」


「明日もあるだろ。それに命の方が大事だ」

夜月君の格闘での物理攻撃力。

ability:【剛の力】武術系のskillの使用時、STRを20%上昇させる=STR・73

ability:【柔の力】武術系のskillの使用時、DEXを20%上昇させる=DEX・100

skill:格闘・Ⅸ=DEXの90%=90

西園寺製・特殊グローブ:15

ATT:73+90+15=178


もっとも、技、被弾部位によって変わるので、基本的な値だと思ってください。

夜月君の「威力は筋力よりも技術」が見事に当たった感じでもありますね。

実はDEXは、命中率、機動力にも関わってくるという、この世界ではかなり重要な値なのです。

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