新/012/ようやく
二話同時投稿になります。これは二話目です。
おや?七海の様子が………?
《オークlevel11撃破!!
exp:16
bonus:【暗殺+30%】【瞬殺+30%】
total-exp:26》
《オークlevel10撃破!!
exp:15
bonus:【瞬殺+30%】【一撃+10%】
total-exp:21》
《オークlevel10撃破!!
exp:15
bonus:【秒殺+20%】【一撃+10%】
total-exp:20》
《オーク・メイジlevel13撃破!!
exp:24
bonus:
total-exp:24》
「──オーク・メイジって言うんだな」
妥当なネーミングセンスだ。本人を魔法使いと呼んでいい力量かはともかく。
スマホを確認し終えたので、影にいるナナに出てきて良いと合図する。
「夜月!大丈夫なのか!?」
ナナが若干涙目になって走ってきた。トテトテと。笑える。
魔法は見た目だけ派手だったので、ナナからすれば心配だったのかもしれない。
「問題無い。特別製のスーツだしな」
まあスーツ抜きでも問題なかったけど。
多分だが、オークの魔法使いだったから、この程度の威力だったのだと思う。
普通のオークの平均magic値は10以下だし。
メイジでも大差無いはず。……行動不能にして【Dictionary】使えば良かった。
「それより、金とアイテム回収するぞ」
「うん」
俺とナナはそれぞれ袋が落ちている場所に歩く。
肉片が散乱している様子にナナは顔を盛大にひきつらせていたが、なんとか耐えている。
やっぱ慣れないよな。正常な人間の感覚だったら。慣れたら異常なんだろうけど。残念ながら俺には理解できないけど。
オーク三体は相変わらずの食べたくない豚肉。お金は20ちょっとC。
三体の合計金額は71Cで、ナナと合わせて所持金合計は833C/2S=10330円。
ダガーも回収しポケティで拭いていると、ナナの驚く声が聞こえた。
「どうした?」
「よ、夜月、これ!」
オーク・メイジの袋を回収していたナナは、その二つの袋を俺の方に突きだす。
金の方は若干だが重く感じられる。もう一つの方は……四角?
豚肉では無い。四角い箱か何かだ。
俺はナナの元に歩みより、二つの袋を受け取った。
袋は紐が外れているので、ナナは中を確認したみたいだ。まあ良いけど。
「本だった」
「本?」
箱では無く本、か。
重さはそれなり、辞書くらいあるだろう。
俺は金の方の袋をナナに返し、本が入っている袋を開ける。
……うん、確かに本だった。
取り出してみる。
【雷魔法入門】
バリバリの日本語で、そう書かれていた。
何度も思うが、何故に日本語と英語が入り乱れる?
うーん。判断がつかない。
中を見ても、英語でも日本語でも、俺やナナの知っている言語では無い。
とりあえず【Dictionary】で撮影してみよう。
──パシャ
《雷魔法入門書/magic-book
制限:[M-STR・20以上/M-PUR・20以上/M-RES・20以上/M-CON・20以上]
効果:[MPの八割を消費する事で、skill:雷魔法・Ⅰ獲得できる。(一回のみ)]
rank:[C++]》
つまるところ、魔法が使えるようになるって事か?
てか、書かれてる内容は特に関係ないの?
あの魔法使い擬きの手品師の落とし物にしては、随分上等だな。
とりあえず──
「ナナ、お前が使え」
「え?いいの?」
「スタンガン使えないだろ、今。護身用だ。杖だけじゃ心もとない」
それに、お前のphysical値だと、オークにすら近づけさせられないからな。
magic値は優秀だし。全部20を越えているから、制限もクリアできるし。長所を伸ばすべき。
とはいえ、STRやVIT、AGIは最低15くらいにはしてもらうが。
「分かった。ありがとう」
「まともに使えるようになるまで、身体に仕込んでやるよ」
「……………………ありがとよ」
何を不満そうな。
杖術仕込んだ時は、骨二本程度だったろう?
今回は状況が状況だから、最悪でも打撲程度で済ませるさ。それに実戦の機会は多いしな。
ナナは俺に金が入った袋を渡し、入門書を手に取る。
辞書の様な本は、ナナの手には大きすぎて抱えるように持っている。
「ところで、MPってどうやって注ぐんだ?」
「………とにかく感覚的にやってみ」
「……わかった」
気功とかなら俺でも分かるが──もっとも、ナナに言っても理解も実践もできないだろうが──魔力とかは流石に分からん。てか、何?
ナナはとりあえず、本に手を抱えたまま、目を閉じる。
静かに、何かに祈っている様な雰囲気は、ナナの神秘性を否応無く高める。
◆◆◆
ぼくは神に祈らない。
追い詰められた時だけに神に懇願し、絶望した時だけ神に罵声を吐く事が、なんだか凄く醜く感じるのだ。
ぼくが祈るとすれば、それは自分自身。
自らの心に秘める願望に、ぼくは祈る。
必ず叶うと信じて祈る。
本を抱えて、目を閉じて、祈る。
ぼくは夜月に並びたい。
果てしない空想の彼方にある願いかもしれないけれども。
強く、強く、強く、ぼくは力を望み、本を抱き締める。
◆◆◆
本が輝いていく。
その光は、オークが放っていた光がドブの様に感じるほどに、美しい蒼。
世界中探しても、このサファイアの光に勝るものは、存在しないだろうとすら感じる。
発光がピークに達した時、ナナを中心とした空中に幾何学的な球状の陣が形成される。
その陣からは、光と同色のサファイアの稲妻が発生しており、ナナへと吸い込まれていく。
思わず手を伸ばしそうになるのを堪えて、成り行きを見守る。横槍を入れて、失敗したら嫌だからな。
蒼の稲妻をその身に受けてもナナに変化は無い。
ダメージは無いのだろう。
ナナの顔は相変わらず怖いくらい真剣な表情で、真摯に、切実に、そして強く、力を望んでいる。
【幸運】──ナナはそれを持っているが故に、ここまで切実に力を望むのだろう。
俺に言わせれば、そんな事考えても意味など無い。
「幸せ」か「不幸せ」かを決めるのは、結局自分だ。
一杯の酒の味で満たされる者もいるし、使いきれない大金ですら満たされない者もいる。
幸運か不運など、考えたところで答えは無数に存在する。
先程、意図せず囮となった奴等は自業自得だし、俺がお前の側にいるのは、決して護衛だからとかでは無い。
ナナ、お前は知らないだろうけど、俺は──幸せなんだぜ。
お前と一緒にいることで、俺は──
──その時、光が収まり、展開されていた幾何学的な陣も消えていく。
神秘的な光は、不思議なことに網膜に残光を残す事無く溶けて消えた。
今だ目を開かないナナの両腕には、すでに入門書は無くなっている。
「よう、気分はどうだ?」
「……………少しぼんやりしてる」
MPが八割、つまり48も抜けた影響だろうか?
外見上の異変は見つからない。
「……うん。何となくだけど、雷魔法が使える気がする」
「ふーん」
表情には少しの疲れと、やり遂げた爽快感、そしてようやく獲得した力への期待が強く現れていた。
ま、使えるのと、扱うのは違うんだけどな。
流石に水をさす気は無いけど、もしもこれだけで強くなったと錯覚するようであれば、状況が状況だが、指導にしなくてはならないだろう。
ナナはスマホをポケットから取り出して【Status】のチェックを始める。
俺もあまり確認してないし、見ておくか。
《name:西園寺七海/人間
level:2
exp:32
title:
energy:[LP・13][MP・12/60][SP・7/13]
physical:[STR・12][VIT・10][AGI・11][DEX・20]
magic:[M-STR・28][M-PUR・35][M-RES・20][M-CON・27]
skill:[格闘・Ⅲ][杖・Ⅲ][雷魔法・Ⅰ][罠察知・Ⅱ][気配遮断・Ⅰ][料理・Ⅴ][裁縫・Ⅴ][栽培・Ⅳ]
tolerance:[苦痛・Ⅳ][催眠・Ⅱ]
ability:【幸運】【幼き美貌】
party:【NO NAME/2】
guild:》
《name:神崎夜月/人間
level:6
exp:482
title:
energy:[LP・164][MP・74][SP・165/166]
physical:[STR・61][VIT・60][AGI・83][DEX・86]
magic:[M-STR・62][M-PUR・56][M-RES・99][M-CON・51]
skill:[格闘・Ⅸ][短刀・Ⅸ][暗器・Ⅷ][投擲・Ⅷ][杖・Ⅵ][拳銃・Ⅶ][狙撃銃・Ⅴ][気功・Ⅷ][軽業・Ⅸ][気配察知・Ⅷ][気配遮断・Ⅷ][罠察知・Ⅶ][調合・Ⅴ]
tolerance:[苦痛・Ⅹ][恐怖・Ⅸ][混乱・Ⅸ][支配・Ⅸ][魅了・Ⅷ][毒・Ⅴ][病気・Ⅴ][雷・Ⅲ][炎・Ⅰ]
ability:【思考加速】【冷徹】【超回復】【超抗体】【武の力】【頑強】【柔の力】【剛の力】【羽の力】【潜む者】【不眠症】【拒食症】
party:【NO NAME/2】
guild:》
ほーう。
雷魔法はしっかり覚えたようだな。
というか、気配遮断のskillまで覚えてる。確かにここに来るまでに仕込んだけれど、覚えてるとは意外だ。
俺の方は数値の上昇が中々って事だな。
しかもphysical値は総合で50上げたから、それなりに実感できる。
それ以外は特に無い。
「ところでナナ。お前、mailはどうした?」
あの戦闘中に掛かってきた着信。
ハッキリ言って、かなり迷惑。
もしも賢い奴なら、間違いなくナナを狙いに行っただろう。まあ【幼き美貌】の効果が本当ならば、少しはなんとかなるだろうけども。
音が鳴らないようにするのは、最低条件だよなあ。
「あ、忘れてた」
ナナの番号を知っているのは、俺と桐原のみ。
addressをlistに登録すると、名前のみ登録されて番号は表示されない。だから、八桁の番号を記憶していないと、他者から他者に番号を伝える事はできない。
桐原ならナナの番号を覚えていそうだが、あの性格上勝手に教えるとは思えない。
「光からだな」
「なんて?」
「えーと」
《桐原光:七海、今何処にいるんだ?連絡をくれ!》
「だ、そうだ」
「………とりあえず、【Configuration】探ってマナーにしとけ。返信は……適当にあしらえ。音のせいで敵に感ずかれるから、とか理由書いてmailを控えてもらえ」
「わかった」
桐原達は未だ学校で存命か。
まあ、正義の味方はしぶといのが基本だからな。
学校で思い出したけど、一人だけ使える奴が居たんだよな。
鬱陶しく俺にまとわりついてきた後輩が。
何考えてんのかイマイチ理解できないけど、あいつなら一緒に行動しても邪魔にはなるまい。
もっとも、一番は椿ちゃんを含む西園寺のボディーガードとの合流だろうが。
とはいえ、西園寺の家はここから遠すぎる。ナナのペースじゃどれくらいかかるか分からない。
ナナがスマホで桐原への返信を行っている傍ら、俺はスーパーの割れた窓ガラスから内部に入り【Shop】を起動。
豚肉をさっきのを含めて11の豚肉を売却する。
ここの道具屋も、rankFだな。
豚肉全部で220C。二人の所持金に合わせて1053C/2S=12530円。
あ、後入れるの忘れてたけど、オーク・メイジの落とした金額、52Cをプラスして、1105C/2S=13050円。オーク・メイジはオークの倍以上の金を落とすんだな。大差無いのに。一般人にしたら十分強力なんだろうけども。
売却を終えた俺と、mailを打ち終わったナナは互いに頷いて確認する。
そして二人揃って目的地である情報屋へと、足を進めた。
◆◆◆
【NEW WORLD】
開幕から三時間四十二分──
ようやく情報屋に到着。
長いですねハイ。
しかしながら、これからも基本こんなペースだと思います。
【幼き美貌】:敵の視界に入っている時、自分に対するヘイト値を下げる。




