カウントダウン
5年前。
彼と出会った。
目が合った瞬間に、帰るべき家が見つかったと。
この人に出会う為にこの世に生まれたのだと。
確信した。
4年前。
この人と生が二人を分かつまで、一緒に居ると。
そう心に決めた。
3年前。
結婚式。
幸せだった。
天国はこの世にあると、そう確信した。
2年前。
「子供は何人欲しい?俺は3人が良いな。」
土曜日の昼下がりの午後。
久しぶりに遠出した先の公園での木陰の下。
少しウトウトしかけていた私の頭上で彼が呟いた。
影になって真っ黒な彼の顔が楽しそうに上下に動く。
私は少し怖くなって起きあがって彼の顔をのぞき込む。
光を正面から浴びた彼の顔はいつもの彼で。
私は安心して微笑みを返す。
「3人なんて今の世の中育てるのは大変よ。
ほんとは1人が良いけど間を取って2人にしない?
喧嘩しないように男の子と女の子、1人ずつにしましょ うよ。」
「そんなに上手くいくかな?」
「笑わないでね。私はこの二人なら何もかも思い通りに人生を歩んでいけるって思ってしまうの。」
「なんで?」
「わかんないわよ。」
「って、聞いてみたけど、俺も同じことを思っていたよ。確信があるんだ。」
「どうして?」
「きっと笑うよ?」
「聞きたいの。」
「俺たちだからだよ。」
私はもう一度、ゴロンと寝転がって真っ黒な影の彼に伝えた。
「って、聞いてみたけど私も同じことを思っていたのよ。」
空は蒼くて。
どこまでも高くて。
真っ黒な顔の彼をいつ飲み込もうかと。
そう同時に思ったの。
空は、私?
1年前。
彼は、占い好きの私をいつもからかった。
私は、そんな彼にいつも占いの話をした。
どんな占い師さんも私たちの関係を宿縁だと表現するのって。
縁が宿って生まれてきたから、離れようとしても離れられないって。
彼はその度に笑って言った。
「知ってる。」
最後に観てもらった占い師さんもそう言ってた。
でも、今までと少し違ったのは、最後に付け足した言葉。
「どちらかが心から離れたいと思わない限りはね。」
私は笑った。
腹を抱えて笑った。
だって、おかしくてしょうがなかったんだもの。
家に帰って彼に伝えたら、飲みかけびビールを吹き出して笑った。
二人でお腹が痛くなる位笑い転げた。
0年前。
深夜のコンビニの帰りだった。
前からやってきた黒いフードを被った男の人がナイフを振り回して猛スピードで私に向かってきた。
彼は私を放って逃げようとした。
私はそれを知ってた。
きっと、逃げるって。
ずっと前から知ってたの。
逃げる彼の腕をひっ掴んで、盾にしたわ。
その時の彼の憎悪に満ちた顔といったら。
めった切りにされる彼の姿を見て、私は笑ってたのかもしれない。
我に返った犯人が言ったわ。
「狂ってる。」
返り血を浴びた私の顔を見て、犯人は怯えて逃げた。
心から離れたいと願ったのは私じゃない。
なんか突然、一気に書いただけ。