第五十話 うっすらと見えた影
「前に雑誌か何かでホントにちっちゃく書いてあったんすけど…」
門松の話によればその雑誌の記事に小さく
海外に留学中のある選手の記事で
(高校バスケ界最初で最後のアンクルブレーカー誕生か?)と載せられていた
門松はその選手の名前までは詳しく覚えていなかったが
決定的な部分は覚えていた…
その選手のコメントが載せられていた
(僕には一つ下の弟がいます…いずれ兄弟同士コート上で戦える事を願っている)
「そんな事が書かれてたんだ…?」
まだ上手く頭の中で整理ができない景峰
まだ自分の兄とは確信できないが今それにすがるしかない
「もっと早くに兄貴の事知ってれば早く伝えれたんすけどね…」
「いや、今の情報で十分だよ…まだその人が兄とは限らないけど」
「でも記事を見る限り相当な選手みたいっすから…四神強辺りじゃ?」
そういえば長西さんが言っていた
四神強ってまだ全員の名前を教えてもらってなかった
「青田さんって人と…あと3人は誰なんだろうね?」
「この間雑誌で読んだンすけどアレックス・ベルっていう留学生もその一人らしいっす」
「りゅ…留学生?」
あと2人の名前が未だに不明なままだ
帰ったら長西さんにでも聞こう…でも兄はその中に入っていない気がした
ようやく長い年月をかけうっすらとした兄の影が見えた…
それを掴むにはまだまだ時間がかかりそうだ
これからこの仲間達と共に時間をかけて掴もうと思う。
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同刻…とある場所で
「お前の言った通り2連覇は…」
その場所には2人の男が立っていた
一人は…この間のIH決勝戦で四神強アレックス・ベルと戦った佐々木一樹だ
「やっぱりアンタでも難しいんだな…」
もう一人は佐々木より少し身長が低い男だ
短髪の髪型に目元には小さな傷がある
その男は更に話を続けた
「久しぶりに日本に帰ってきたよ…1年を使って海外に行った甲斐はあった」
「今は2年生だな?中学時代に俺とお前が一度だけ対戦したことがあったぜ」
佐々木とその男はどうやら中学時代から因縁があったようだ
その場所は丁度ストリートバスケに使われるコートだ
リングは一つしかないがバスケをするのに丁度いい場所だ
「宝流真一…と同じチームだったなお前は」
真一…死神バスケ部元キャプテンの名前だ
その男と中学時代同じチームだった模様だ
「真一さんが怪我をした時はビックリしたよ…けどやっぱりあの人は戻ってきた
あの人が中学時代に俺にバスケのチームプレイを教えてくれた…」
「そういや…今のお前の高校監督はお前の親父さんだな…?」
「正確には2人目…さ」
あまりこの話をしたくなかったのかその男はリングの下に落ちていた籠球を拾い上げ
その場でダムダムっとボールを付き始める
「どうだ?一本だけ1on1やらねぇか?」
佐々木はニヤリと笑みを浮かべ
「いいだろう…お前が一年間でどれだけ変わった見てやる」
男が佐々木に正面から突っ込み
左、右とボールを持つ手をチェンジしながら付く
ただのクロスオーバー…
右に一瞬フェイクを入れた
佐々木もそのフェイクには気づいていた
しかし左に佐々木が反応した時にはその男は既に左側に切り返し佐々木を抜き去っていた
「・・・!?」
「俺の勝ちだな…。」
「その一歩目の瞬発力…相変わらずだな」
天性の瞬発力とも言えるスピードであの佐々木をあっさりと抜き去った
抜き去られた佐々木は冷や汗をかきながら振り返り
「お前なら四神強を越える存在になるかもしれんな……」