第四十八話 VS北之木高校⑧
残り時間2分を切ったところで2点差…
ボールは北之木ボールからだ
TOを取った死神バスケ部は作戦を練り直す
「いいか…ボールが入った直後すぐにあのSFにFしろ
さっきの門松のプレーでかなり重圧に押されている感じだ」
「時間がない分ここからがほんまもんの点の取り合いになりそうやなぁ」
「上等だぜオラァ…」
ここからは正真正銘のOFチームの真価が問われる場面だ
取りこぼしをしたチームが負ける…
同じく北之木ベンチでも脇谷が指示を出していた
「恐らく敵としては小幡をFで何が何でも止めてくるだろうな
だからまぁここからはゆっくり攻めつつ点を取りに行こうか」
ここまでFを全て決めている小幡にFは自滅かと思われた
しかし今の小幡にFは最大の重圧
ましてや一年で経験が少ないとなれば尚更だ
「俺…では決めれません」
「普通ならここは氷くんにパスを回すことを避ければいいんだが…
先生の考えは違いますよね?」
確かめるように藤森が脇谷の顔を覗き込んだ
「ふふっ…私も同じだ。いずれこのチームを背負う選手だ
例え調子が悪かろうが最後はやはりエースのお前に託す」
エース……一年の自分にとっては重荷ではあった
だが信頼してくれる仲間がいてくれてその重荷は自然と肩から落ちた
既に小幡の返事は決まっていた
「任せてください!俺が必ず試合を決めます!」
TO終了のブザーが鳴り響いた
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(それにしてもあのC…動きとしてはガードと変わらんがな…
実力だけで言えばこちらの吉村より上手だ)
脇谷がひそかにこの試合で長西のアビリティの高さに驚いていた
なぜこれ程実力を持っている選手がこのチームに?
「ほな、行こか」
長西が立ち上がり選手がコート内へと駆け出す
「おい景峰!」
咄嗟に真一が景峰に声をかけた
ピタッと止まりすぐに後ろを振り返った景峰
「はい?」
グッと拳を景峰の前に当て
「俺の分まで頼んだぜ…!」
真一の力強い瞳から景峰は闘志を引き継いだ
ここからは自分達が先輩の分を頑張る番だ
「もちろんです!」
元気よく返事をしコート内へと駆けて行った
(段々似てきたぜ…ーお前ーによ…)
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北之木ボールからの攻撃だ
ポスト下からコート内の藤森にへとボールが出された
ゲームクロックがそれと同時に動き出した
予想通り小幡にボールが渡され
ゴールしたまでドライブで駆け込む
「お前の相手は俺っすよ…!」
門松がDFに入る
アウトサイドからの攻撃でくるか…?
小幡の脳裏にはアウトサイドからの3Pと決められていたが
一瞬小幡の視界にノーマークのCの吉村が目に入った
(の、ノーマーク…?ふざけやがって!!)
あっさりとCの吉村へとパスを渡した
「かかった!」
景峰が声を張り上げた…
吉村はレイアップでボールをゴールに押し込もうとした
しかし、長西が背後から手で妨害をする
ボールはゴールに決まることなく
「DF!バスケットカウント!」
2本のFTが北之木に与えられる
FTはCの吉村…これも川島の作戦だ
小幡にボールが行くことは川島は読んでいた
今日の小幡のFTを見て間違いなく決める事は予測できた
つまりここで4点差をつけられるのはこちらにとって不利だ
ならばFT成功率の低いCの吉村をドフリーにして罠を張らせた
見事にかかった吉村のFT一本目…
「はぁっ…はぁ…」
滲む額の汗を手で拭いながらボールを受け取りネットへ向けて投げた
ガゴンッ
一本目は外れ…
二本目…
とんでもない重圧が吉村の肩にのしかかっていた
極度のプレッシャーに元々弱かった吉村
そのプレッシャーを克服できたのは脇谷先生の「お前には実力がある自信を持て」という一言で大きく変われた
小幡が心配そうに吉村に声をかけた
「吉村さん…」
しかし吉村は小幡に目を向けることはなく
目の前のゴールに目線を合わせたまま
「大丈夫だ…任せとけ…」
その言葉通り放たれた2本目のシュートは
決して綺麗なシュートではなかったが執念でネットにへと収めた
これで3点差にへと差をつけられた
時間は残り一分を切り40秒程しかなかった
光飛高校ボールから始まる
(まさか…あのFTを決められるなんて)
景峰の考えではこのような展開を望んではいなかった
一瞬思考が止まり…
「景峰!!!!!!」
長西の怒声が耳に入りはっと我に返った
しかし気づいた時には小幡にあっさりと抜かれ
ゴールにボールを押し込まれていた
景峰のミスにより5点差にへと差は広がった
自分のミスだ…
「シャキっとしろ!お前がこのチームの得点源だろ!」
バシッと扇田に背中を叩かれた
そうだ…あの時誓ったはずだ僕がこのチームの得点源になると
もう立ち止まることは許されない
「すいません…必ず僕が取り返してきます…」
残り時間30秒を切った…
すぐにボールを出し光飛高校が速攻体勢で攻め込む
「時間ねぇ!さっさと決めるぞオラァ!!」
しかし、よりDFの固さを増した北之木高校
ハーフラインを越えた辺りでボールをキープしていた長西
マークには吉村がついていた
グルリと大きくロールをしたその先に門松がトップで上がっていた
ハイポストにいた門松にパスを渡した
すぐさまシュートモーションに入った門松
「ぜってーーいれさせねぇ!!」
「氷くん!!」
気持ちが感情的になっていた小幡は我を忘れ
シュートモーションに入っていた門松の手を妨害した
だがボールはバランスを崩しながら放たれていた
放物線を描いた籠球はリングに当たりゆっくりとネットに収まった
「DF!バスケットカウント!!」
2点追撃に更にオマケのFT一本の権利が与えられた
(し・・しまった・・・!)
小幡の感情的なプレーにより光飛高校に大きくチャンスを与えた
「門松・・落ち着いてやりや」
長西の一言に気が落ち着いた門松は
嘲笑うかのようにFTを決めた
「よっし!!」
思わずガッツポーズの門松
残り20秒を切ったところで2点差にへと詰め寄った
これは北之木にとってはプレッシャーのかかる展開となった
「すぐDFや走れ!!」
時間がもうない…!
北之木の藤森がゆっくりとボールを入れ
時間潰しのOFに入った
時間は刻々と過ぎていく
ボールは小幡に回されようとした
残り時間は数秒しかない
その時小幡は勝利を確信した…その気の緩みを門松は逃さなかった
バチッ!!
「なにっ!?」
藤森が小幡にパスをしたボールを見事にインターセプト
姿勢を低くした体勢からトップスピードで走りこみ
ゴールを目掛けて駆け込む
すぐにDFに小幡が走り
「待てよ!!決めさせねぇぞ!!」
6
3点ラインにピタッと止まりシュートモーションに入る
DFにCの吉村が立ちはだかる
予想外のDFの速さに驚いた門松は
(っ…ダメだシュートコースを防がれてる…)
4
門松の判断が一瞬鈍る
咄嗟にとった行動がシュートフェイクだ
フェイクに見事引っかかった吉村
そのまま吉村を抜き去ろうとするが再び小幡が立ちふさがる
3
「ははっ…!勝った!」
完全にスペースを潰された門松
周りを見渡してもフリーの選手はいない
「門松っっ!!」
マークをほんの一瞬だけ振り払った景峰が声をあげた
門松の中にももう勝つには景峰しかいなかった
すぐにバックパスで3点ラインにいた景峰パス
マークの藤森がすぐにDFに入った
2
ばっと大きくジャンプをしシュートモーションに入った景峰
(コイツ…DFがいるにも関わらず何にも感じねぇのかよ!?)
綺麗なシュートフォームからボールが放たれた
ボールは高くループを描き
このシューターにほんの少しの余裕も与えてはダメだ
入る気がしかしねぇ…
「入った…」
パサッ…
0
ボールがネットに収まったと同時に試合終了のブザーが鳴り響いた
やっと北之木戦終わりました!