第四十四話 VS北之木高校⑤
「ちっ…逆転されちまったか…」
「藤森さん、もっとパスください…こっちも舐めてかかりすぎました」
同じような事を北之木メンバーも試合前に考えていたのだ
死神と呼ばれる程のチームに負けるはずがないと
しかし、始まってみるとチームの総合力としては下だが
個人の能力は高い…
エンドラインから北之木ボールで始まる
先程の小幡の言葉通りPGの藤森が小幡にパスをする
(相変わらず中は固められてるな…アウトサイドで勝負するしかねぇかな)
マークには真一がついている
ハーフラインを少し超えた辺りでボールをキープしている
「ふぅ…」
誰にも気づかれないように息を吐いた小幡
それに気づいたのは真一だけだ
(くるっ…?)
真一の読み通り緩急をつけ突如スピードを上げドライブで切り込む
読んでいただけに対応はできる
右側に切り込んだがピタリと真一がマークについている
「さすが真一さん!ピッタリついてる!」
ベンチで優華ちゃんが喜びの声を上げていると
「いや、あいつはこれで終わらないっすよ…」
門松の言葉通り小幡はそこで終わらなかった
ピタッ!
突然その場でピタリと立ち止まり3点ラインでシュートフォームに入った
「ストップ&ジャンプか…!」
完全に意表をつかれた
真一の頭の中にはもちろん3Pという警戒はあった
しかし、小幡の得意とする緩急をつけたドライブで
あれ程のトップスピードの状態でモーションに入ればその分バランスが崩れるはずだが…
小幡の場合は完璧だった
(いける…)
心の中で静かに勝利を確信した小幡
綺麗なシュートフォームから籠球が放たれた
バチッ!
「なにっ…!?」
ストップ&ジャンプで完全に反応が遅れた真一だったが
見事にブロックショットでボールを弾き返した
「よっしゃカウンター行くで!」
転がったボールを長西が拾い上げ
お得意のカウンターでゴールまでドライブで攻め込む
DFに必死に戻る北之木メンバー
ハーフラインを超えた頃にはPGの藤森がマークに入る
「やるなぁあの長身の人…」
「おおきに、あれでもあの人…怪我持ちやで」
ハイポストで扇田がポストアップしていた
Cの吉村が扇田のマークについている
(くそっ…このCやりにくいぜオラァ!)
長西は扇田にパス
ミドルシュートがろくに入らない扇田がシュートモーションに入った
その時扇田の感覚が鈍くなる
あれ……何シュート体制に入ってんだ俺…
どうすりゃいいんだっけ??あれー…?
「扇田さん!!!」
自分の名前を叫ばれた時、一瞬感覚が何時も以上に研ぎ澄まされる
シュートモーションからフェイクを使い3点ラインの景峰にパス
「そのSGだ!止めろ!」
藤森が声を上げた時には既に景峰はシュートモーションに入っていた
手から放たれた籠球はまたしてもノータッチでリングに入る
怒涛の3点追撃だ
ぶーーっ
第1Q終了のブザーが鳴り響いた
13VS9で光飛高校が未だにリード
シュートを決め仲間とハイタッチを交わしている景峰を小幡はただじっと見たまま
その視線に気づいていたが敢えて振り返ることはなかった
(すげぇ…完璧なシュートフォームだ。おもしれぇ…ぜってー勝ってやるぜ)