第四十二話 VS北之木高校③
第1Q中盤…9VS5のまま北之木がリード
「そいつだ止めろオラァ!」
扇田が叫ぶ先には小幡氷がいた
3P付近でパスを受け取った小幡はボールをキープしている
そう何度も抜かれる訳にはいかない、この試合のキーマンと言っても過言ではない
ディフェンスには門松がつく
「そう何度も抜かせないっすよ…」
門松とのディフェンスの距離は少しある
小幡には3Pがあることも頭に入れてあった門松にとっては当然の警戒心だ
が、突如小幡が距離を詰めスピードを上げる
そして3点ラインから一気にシュートモーションに入る
それに反応が遅れた門松は思わずシュートモーションに入った小幡の手を叩いてしまう
同時に審判の笛の音が鳴り響く
「DFファウル!」
「しまった…!」
このファウルはほぼ小幡の思惑通りであった
中は固められているため、いかに小幡と言えどもドライブで割る事はできない
…そのため3点ラインで門松のファウルを誘った
3点ラインでのファウルはFT3本分だ
僅かな点差での痛いファウルとなった
「流れがあまりよくないな」
「今日の門松君ちょっと気負ってるってゆうか、なんていうか…」
ベンチで様子を見ていた3人の表情が固くなり
「あの一年SFの存在が相当な重みになってるみたいだしな」
この流れの悪さを一番危惧していたのは川島だ
例えここで逆転をしたとしても向こうの流れであれば再度逆転も有り得る
「真一、思ったより長く試合に出る事になるかもしれんが……。」
真一の怪我のことを知っている川島にとっては
やはり無理はさせたくない…
しかし、真一はふっ、と息を吐き
「俺の怪我の事なら気にすんな、勝つためなら多少の痛みぐらい我慢して出れるしよ」
真一の表情を見た川島の心から少し不安感が無くなり
「それなら…この試合絶対勝つぞ…。」
この試合の勝利への執着心がより一層高まった
「ど、どんまい門松!まだファウルで止めただけマシだよ!」
唇をかみ締めていた門松にせめてもの励ましの声をかける景峰
「ファウルさせられたんすよ…アイツ口だけじゃないっす」
これで死神バスケ部メンバー全員が確信した
このチームの総合力は王鐘学園に引けを取らないぐらいだということを
「俺等の苦手な速攻タイプやな…うかうかDFしとったらあっという間に差つけられるわ」
「FTで外した時のリバウンドは俺に任せとけぇ…」
がしっ!と拳と拳をぶつけ合わせ気合を入れる扇田
しかし、小幡は余裕の表情で
「へへっー3本とも入れちゃうぜ」
だむっ…だむっとボールを2回ほど地面につき
一本目は難なく成功
二本目もノータッチで成功
三本目……
ガコンッ!
「げっ…!!」
リングにボールがぶつかりそのまま右方向へ落下する
その方向へ一早く跳躍していたのが扇田だ
「読んでたぜオラァ…!!!」
バシィッ!!!
見事に両手でがっちりとキャッチしリバウンドに成功
すぐさま光飛高校もカウンター体制に入る
「でかした扇田!速攻や!」
「言われなくても分かってる!!」
門松にパスを回し一気に敵陣へと攻め込む
DFに小幡が付くがすぐに中の長西へパス
「うぉっ!?」
長西の目が一瞬きらっと光る
中から右3点ラインに立っていたドフリーの景峰へノールックパス
「あのセンターあんなパスできんのかよ!?」
意表をつかれた北之木メンバー
バシッとボールを受け取った景峰はシュート体制に入る
今までのシュートモーションを早くさせたフォームとは違い
「翔ちゃんのフォーム変わった…?」
「なめらかなフォームになったな、よりコントロールを高めるために高速モーションを捨てたんだろう」
その言葉の通りなめらかなフォームから放たれたボールは放物線を描き
ノータッチのままネットにへと収まる
ようやく死神バスケ部が3Pを決めた
「ナイスシュー!や!」
「これで一点差です!一気に流れをこっちのものにしましょう」
今日の景峰は自分自身好調であることに気づいていた
王鐘学園に負けてからフォームの改善に取り組んだ景峰
自分の力を余り無く全身に伝えるようなフォーム
そのためには自身の高速モーションを捨てなくてはならなかった
今までのフォームよりほんの0コンマ遅らせながら
膝の力を余り使わずコンパクトなフォームへ改善することができた
そしてそこから毎日欠かさずシュートを打ち身体に覚えさせた
「なるほど、いいSGだね川島君…少し流れを変えてみようか」
オフィシャルからブザーが鳴り響いた
第1Q中盤で北之木高校一回目のTOだ
「ちょっとDFが弱すぎだね、あのSGはフリーにしたらほぼ決めてくる
だからこっちの速攻ペースは変えなくていいから」
「俺にどんどん攻めさせてください!」
一人体力のあり余っている小幡氷が子供のようにだだをこねる
「氷くんFT3本とも決めれなかったしなー」
「そ、それは…」
それを見た脇谷がにやりと笑みを浮かべ
「氷…。次からさっき以上にボールを集中させてみよう
吉村はしっかりと中を固めていなさいリバウンドもお前の方が上だ自信を持て」
腕組をしながら選手達の顔を見合わせる脇谷
既に脇谷の中では光飛高校に走り勝てる自身があった
「今まで以上に試合のテンポを上げてみよう、相手もテンポの速いチームだが
やはり急造チームであるためか些細なミスも目立つ
つけいる隙はいくらでもある…。」
一方光飛高校ベンチでは
数秒前に川島からの策?らしきものが伝え終えられていた
「………というわけだから残り数分気合入れろよ!」
「はぁ!!!?」
メンバー全員が驚きの表情であった
果たして、川島から告げられた内容とは……?