第三十九話 それぞれの目的
北之木高校…過去は東京を代表する強豪校で有名で
王鐘と肩を並べるほどのチームであった
しかし、死神バスケ部と同じく部員数が減っていき
黄金世代が引退してからは、部員も増えず初戦敗退が毎年のお決まりになっている
今では今では1、2年生主体のチームとなっている
「それは前の話だ、今は違う」
死神バスケ部メンバーは心のどこかで思っていたのだ
自分達より格下のチームではないのか?と
その考えを見抜いていた川島はすぐに否定をする
「それと向こうの監督は俺の大学時代のバスケ部の先生だ!」
!?
メンバー全員が驚いた
「えぇ…つまりは大学の時に川島先生にバスケを教えてた先生?」
「なんか恩師みたいっすね」
川島は溜息をつきながら目頭を押さえる
「顔つきを見れば優しそうなご年配の方に見えるが…やることはえげつない人だよ」
「北之木が年々力つけていってる理由が分かった気がするわ…」
明日の練習試合について川島が話を進める
「明日の練習試合だが、王鐘戦以来のゲームだからな…俺としても色々と見てみたいんだ」
「まぁそのための練習試合だしな」
川島がちらっと扇田と長西に目を向け
「明日は扇田はPFでCは長西だ…後半から真一をPGで入れるからな
ゲームメークは長西に任せる」
「うぃっす!」
ポジション変更で試合をするのも一つの目的だが
もう一つの目的が川島にはあった
影峰の急成長だ…
王鐘戦で見せた得点力をこれから先伸ばす事ができれば
恐らく一番化けるのは影峰だ
得点源が欠けている死神バスケ部にとって得点源がいることはこの上なく安心できるのだ
(早く試合がしたい…僕の実力を試したい…)
北之木高校…
「明日は光飛高校と試合さ」
髪の色が白髪にも関わらず髪の量はフサフサの
優しそうな顔をした人を中心に北之木メンバーが集まっていた
脇谷秀
川島の大学時代のバスケ部の顧問であり現在北之木高校のバスケ部顧問
「先生!!俺もちろん試合出れますよね!!?」
集まったメンバーの中一人声を上げ子供のようにはしゃぐ部員がいた
体格は170cmも満たない選手だが…
「小幡…当然お前は出すから少し黙ってなさい…」
「へへっー!楽しみで黙ってられないすよ!」
小幡氷…1年生
ポジションはSFで1年でありながらレギュラー
年々力を付けていっている北之木にとって更に強みを増す事になる
「あんまり騒ぐな氷くんよ」
その様子を見ていた部員が声をかけた
「氷くんて呼ばないでくださいよ!藤森さん!」
「だって子供みてぇじゃねぇか」
藤森淳雄…22年生
ポジションはPGでそれまで目立つような選手ではなかったが
今年になって才能を一気に開花させた
北之木バスケ部のキャプテンでもある
「でも俺もちょっと楽しみだけどなー死神バスケ部っていうんだろ?」
藤森の隣に立っている部員は…
吉村昌…2年生
ポジションはCでメンバーの中では最初に才能が開花した
今では東京三強からも警戒されるほどの屈指のCとなっている
好きな食べ物は乾燥昆布
「昌さん!俺がさっき渡したばかりの乾燥昆布もう全部食ったんすか!?」
「足りん、もっとよこせ」
「あああーー!!!さっきからそればっかりじゃないですか!」
ドタバタしている中、脇谷はやれやれと頭を掻きながら
「そういえば先生の教え子が向こうのバスケ部の顧問ですよね?」
ふと思いついた藤森が脇谷に声をかけた
「うん…先週川島君の方から連絡があってねぜひ試合をしてくれとのことで
面白いじゃないか元教え子の育てたチームと戦えるなんて」
「もちろん元教え子だからって手加減なんてしませんよ?」
確認をするように藤森が話した
脇谷はそれまでゆるい表情だった顔を一瞬で固くし
「手加減どころか、ぶっ潰したいぐらいかな…大差で下してやろうか」
(相変わらず表情変わると言ってる事えげつないな…)
「それなら俺、明日点とりまくるよ!」
さっきまで吉村とじゃれていた小幡が立っていた
「いつか三神強を越える存在になるSFの俺がやってやるさ」
吉村が呆れながらがしっ!と小幡の髪を掴む
「あ~お前の言ってることはいつもでかくムカつくんだよ~!」
「ムカつくの!?」
ガーンとショックを受けた小幡は落ち込んだ表情になるが
「けど、何時までも目標が小さいとIHなんて行けねぇからな
今はお前のそのデケェ目標…嫌いじゃねぇぜ」
「絶対に行くよ俺達ならできるさ」
その様子を黙って見つめていた脇谷が表情を緩め
(ふふふ…川島君明日の試合が非常に楽しみだよ…
この子達も何度も敗北というのを味わったからね、一つでも多く勝ちを味あわせたいんだ)