第三十四話 流れ
佐々木のダンクシュートがピエロによって阻まれた
(あいつ…指で僅かにボールの軌道をずらして弾きやがったな…)
未だピエロに止められたことを信じれないまま
エンドラインからのスローで黒禅ボールで始まる
PGの鈴木がボールを運んでいく
ハーフラインを超えた辺りで郡野がマークに入る
「ははっ!さっきのピエロのプレーでちょっと流れが変わったかもなぁ?」
「黙ってろ…」
鈴木は落ち着きながらパスコースを探すが
マークについている郡野も県内では五本の指に入るPGだ
そう簡単にパスは決めさせてくれない
24秒ルールがあるため長くはボールをキープできない
苦しいスペースをドライブで切り込み3点ラインでマークを振り切ったSGの蜉海にパス
ボールを受け取った蜉海は両目を瞑り
ノーマークのまま3Pシュートを放つ
ガコンッ!
シュートはリングに当たりそのまま落下してくる
「!?」
黒禅のSGの初のシュートミスだ
「りばぁぁん!!」
落下してきたボールをいち早く予測していた石垣が跳躍しボールを確保
速攻体制で味方がピエロまで回し
マークには申が入る…3点ラインからシュート体制に入ったピエロ
申も同じくブロックの準備に入る
しかしピエロは後方に下がりながら3Pシュートを放つ
「フェイダアウェイ…!?」
キレイな放物線を描いた籠球はバサッと音を立てネットに収まった
「うおおおおおお!!!!」
観客の大きな歓声が一斉に上がる
「くそっ…あのシュートフォームでまさか入るなんてよ…!」
申が悔しい表情でピエロを睨んだまま声を上げる
「ナイスシュー!ピエロ!!」
石垣がピエロの背中を軽くどつき
少し笑みを浮かべたピエロ
流れがこっちに来ていることが分かる
「流れはこっちに来てますよ……」
ぶーーっ!
時計が止まったと同時に黒禅高校のタイムアウトが宣告された
黒禅高校ベンチでは佐々木を中心に選手達が円陣を組む
「前半とはまるでピエロのスタイルが変わった…正直俺もあの高さのダンクを止められるとは思わなかったぜ」
後半戦ではピエロを得点源とした動きだ
オフェンスの際には味方がピエロの動きやすいようにフォローをしている
ポストプレーを得意とする佐々木だが、また万が一ピエロに止められ可能性がある
そうなれば速攻でピエロにボールが渡り点数が追撃される
「まだ点数で勝ってるのはこちらだ、ギリギリまで時間を潰しながら攻撃するしかない
ピエロのマークは佐々木に任せて他は俺達で詰めるぞ!」
佐々木が指の関節をぽきっ…と軽く鳴らし
「ブロックされたんなら、ブロック不可能のシュートをすりゃあいいだけだ…」