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第86話 聖徳太子による摂政政治

(うまや)()皇子(のみこ)(聖徳太子)はとんでもなく優秀だった。

それはとりもなおさず「(はた)(かわ)(かつ)」を右腕にしたからに他ならない。

ヤマトの国、中興の立役者である秦一族の当主である秦河勝だが、意外にも豪族としての地位は低かった。

だが、本質を見抜ける厩戸皇子は、政治改革に欠かせないパートナーと考えた。

秦一族が、中央の政治に関与したことは、渡来して以降3百年間一度もない。

しかし、ヤマトの国の文明は明らかに秦一族無くして成立しないものだとは誰もが思っていることだった。

厩戸皇子が秦河勝の進言を聞くことは、ある意味自然ではあるが、歴代天皇たちはプライドが許さなかった。

秦河勝は厩戸皇子に、成立したばかりの「(ずい)」に使者を派遣することを提案した。

隋が中華を統一した次の狙いは、朝鮮半島。

そして、その次はヤマトの可能性があるからだ。

半信半疑ながら、厩戸皇子は、遣隋使を送った。

案の定、初回の遣隋使は隋の「文帝(ぶんてい)」に会うことすらかなわなかった。

大失敗と思える政策だったが、秦河勝は大きな収穫を得た。

隋の官僚からヤマトが相手にされない理由を聞いたからだ。

理由の一つは法律がないこと、もう一つは天皇中心の組織運営が脆弱であることだ。

秦河勝は世界の法律を熟知していた。

されど、まったく法律がないと言っても過言ではないヤマトにおいて、百も2百も条文を並べたところで守れるわけがない。

せいぜい20くらいが妥当だろう。

しかも、独裁に近い()()()をけん制するための条文を入れねばならない。

そこで、

「第1条、()(もっ)(とうと)しとなす……」

8百年前(紀元前3世紀)、(じょ)(ふく)が始皇帝に対して倭国のことを「水が豊富で争いがない国……」と報告した。

始皇帝は「争いがない」が決め手になって、レビ族移住の候補地とした。

そうなのだ8百年前は、和を重んじる住みよい国だった。

それが、蘇我氏の台頭で権力争いに終始する流れを変えようとした。

第2条に「篤く(さん)(ぽう)を敬へ、三寶とは(ぶつ)(ほう)(そう)なり……」を謳った。

これも蘇我氏に対する牽制だ。

蘇我氏は仏像をネストリウス派キリスト教の布教のために利用したので、仏教の教義などどうでもよかった。

厩戸皇子と秦河勝は、それを逆手に取ったのだ。

第3条において、天皇の(みことのり)は絶対であると説き、第4条から16条まで豪族の行いを明記した。そして、最も重要な条文が17条である。

「第17条、重大なことがらはひとりで決定してはならない。かならず多くの人々と共に論議すべきである」

天皇の独断でもなく、ましてや蘇我氏の独裁でもなく、皆が集まって、合議で決めよの条文は革命といってもいい。

少なからずこの17条憲法は、蘇我氏の動きを封じた。

天皇中心の組織運営にも大鉈(おおなた)を振るった。

(おみ)」、「(むらじ)」制度である程度豪族の役割を決めていたが、豪族の世襲が当たり前になり、能力がなくても重臣になれた。

そこで河勝は、豪族の家ではなく個人に、しかも世襲を禁じる階級制度を創設した。

これによって能力のある者に高い階級を与え、適材適所に人員を配置できる「冠位(かんい)十二階(じゅうにかい)」の制度を進言したのである。

「徳・仁・礼・信・義・智」を大小二種の階級を設け「紫・青・赤・黄・白・黒」の濃淡二種の袋状の冠をかぶることによって区別した。

さしずめ蘇我馬子は大徳で濃紫の頭巾をかぶるのかと思いきや、自分は与える存在であると称して辞退した。

だが、この制度は有効に機能した。

それまで能力はあるが、何も進言できなかった者が、次々に叙された。

ちなみに秦河勝は、上から3番目大仁である。

いかに厩戸皇子の補佐役とはいえ、低位の豪族である秦氏にとって異例の出来事である。


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