第81話 秦一族の誕生
葛城氏と蘇我氏の助けもあって、弓月君一行2万人は、半年かけて無事ヤマトへ着いた。
早速、応神天皇に謁見した弓月君は、
「応神天皇におかれましては、ご機嫌麗しく恐悦至極に存じます。このたびは我が一族を受け入れていただき、感謝にたえません。これは絹の反物30疋ほどでございます。お納めください」
「弓月殿。遠路の長旅さぞご苦労されたであろう。絹はヤマトにもあるが、ヤマト中の絹を集めてもこれほどないと思う。しかも上質だ。ありがたく頂戴する。それから弓月殿に氏名を与えよう。弓月殿は秦の始皇帝の末裔と聞いている。では『秦氏』はどうだろう? 山城(京都)の地に領地も与える。そうだ、絹の反物を、うず高く積んでもらったから『太秦』と名付けるがよい。弓月殿の元々の祖先も大秦(ローマ)から来たことからも、この字でよかろう。また、弓月殿の一行は、絹を織る機織りの技術の他に、灌漑の技術や酒作りの技術も持っていると聞く。我がヤマトにその技術を広めてもらいたい。そして、その方たち2万人もいるのであれば、山城だけでは手狭であろう。申し訳ないが、全国に分散してもらいたい。各地の役人にはその旨連絡するゆえ。他に何か要望はあるか?」
「分かりました。我々の持っている技術をヤマトの民に余すことなく伝えます。そして、太秦には始皇帝から続く直系のみ居住することとし、他の部族は全国へ技術伝承のため、分散します。ですが、後ろに控えしこの者は『コヘネ』と申しまして、我が一族の大切な役割を担っております。我が一族が信じる宗教の祭司を代々務める家柄ですので、この者にも氏名をいただきとうございます」
コヘネはヘブライ語で祭司を意味し、その中でもモーセの兄のアロンからつながる名家である。
弓月君率いるレビ一族にあって弓月君に次ぐ地位である。
「何? コヘネとな? 我が天皇家に伝わる伝承で『アメノコヤネ』という神がいる。コヤネの神は、天照大御神様が天岩戸にお隠れになった折、祝詞を読まれた神だ。いわば、天上界の祭司であらせられる。そなたも祭司であれば神の声を聞くことができるであろう。ならばそちに『中臣』の氏名を与えよう。『中』は天上界と神にとっては私を含む我々『臣』の中を取り持つ役目、いわば祭司の役目だ。我がヤマトの祭司も願いたい。そのうえで領地だが、太秦の隣『山科』を与えよう」
弓月君はレビ一族2万人に事情を話し、ヤマト全国に分散するよう伝えた。
その際、中華の名前ではヤマトに合わないと思った一同は改名することにした。
だが、改名するといっても何を基準に改名したらよいか悩んだが、悩みはすぐに解決した。
弓月君の側近から、
「我々は全国に分散しても、秦氏と改名された弓月君の家臣であることに変わりない。我々が弓月君の家臣であることを忘れないために名前に『ハタ』を入れようじゃないか? 漢字の『秦』でなくてもかまわない音が『ハタ』であればいいことにしようじゃないか」
そういうわけで、羽田、波多野、畑田、畠山等々、全国に「ハタ」が数多くの技術を伝えた。




