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第8話 アブラハム

数千年前、秦一族の祖アブラハムは、妻サラをめとりハランの地へ移住した。

神を敬い、働き者のアブラハムだったが、75歳になるまで子供に恵まれなかった。

ある時、ハランの丘を歩いていると、神の声が聞こえた。

「アブラハムよ。これから私が指し示す地へ行きなさい。そして、お前がたどり着く土地をお前の子孫に与える」

アブラハムは、待望の子供に恵まれることに喜び、妻サラと共に神の指し示す土地へ旅立った。

嵐に遭い、盗賊に遭い、危険な橋を渡り、何日も何ヵ月もの時を経て「マムレの樫の木」と呼ばれるオアシスにたどり着いた。

だが、この地に住んで十年が経過しても子供は産まれなかった。

業を煮やした妻サラは、女奴隷ハガルとの間に子供を作るようにアブラハムに懇願した。

そして、イシュマエルが産まれた。

イシュマエルは、すくすくと成長したが、そんな姿を見るにつけサラの心は、どんどん締め付けられた。

数年の時が経ち、アブラハムが99歳になった折、再び神の声が聞こえた。

「アブラハムよ。お前は今まで私を信じ、私の指示通りに行動した。お前の望むものを与える」

十月(とつき)十日(とおか)の後、妻サラは待望の男の子を産んだ。

産まれた直後、神々しい笑顔が眩しかったことから「イサク」(彼は笑う)と名付けられた。

サラはイサクを溺愛した。

溺愛すればするほど、イシュマエルと母のハガルを疎ましく思った。

やがてサラはアブラハムにイシュマエルと母のハガルを追放するように懇願した。

アブラハムは悩んだ。

サラの気持ちは理解できるが、イシュマエルだって、私の大事な息子に変わりない。

思い余ったアブラハムは神の指示を仰いだ。

神は、

「サラの願いを聞きなさい……」

アブラハムは断腸の思いで、イシュマエルと母のハガルを追放した。

追放されても、行くあてがないイシュマエルと母のハガルだったが、二人は東に向かって歩いた。

何日も、何ヵ月も砂漠をさまよい、飢えと渇きが限界を迎えるころ、オアシスにたどり着いた。

イシュマエルはこの地に定住し、やがて、アラブ人の祖になった。


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