第7話 弥勒菩薩
「ところで河勝殿、お預かり頂いた弥勒菩薩半跏思惟像を安置する寺はできましたかな」
「はい、我が地元太秦に広隆寺を建立し、安置いたしました」
「それにしても助かりましたぞ! 蘇我馬子殿が珍しく、仏像を下さった。いつもは仏教などにかかり切ってないで、景教(ネストリウス派キリスト教)を広めよと、耳にタコができるほどに言われておったが、釈迦が入滅後、56億7000万年後の未来にこの世界に現われ悟りを開き、多くの人々を救済するとされる弥勒菩薩を下さるとは、どういう風の吹き回しだと思って、河勝殿にお見せしたところ、弥勒菩薩ではなく、キリストの像だと聞いて腰を抜かしたわい」
「そうでしたね。姿かたちは、まさに弥勒菩薩ですが、指の形に特徴がありました。ヤマト国より遥か西、隋の国よりもっと西にローマという国があります。その国の文字で人差し指を立てて『I』、中指を少し湾曲にして『C』、親指と薬指を交差させて『X』、小指を少し湾曲にして『C』、『ICXC』はイエス・キリストを意味するものです。おそらく馬子殿は、皇子が弥勒菩薩を拝み、仏像として皇室や豪族に広まった頃合いを見て、皇子が拝んでいるのはキリストなるぞ! というつもりでしょう。私が預かり、私が祀っても何の影響もございません」
「本当に助かった。ところで河勝殿は何ゆえ西の事情に詳しいのだ」
「私の祖先は秦の始皇帝ですが、さらに遡るとアブラハムに行きつきます。つまり秦一族はヘブライ人(ユダヤ人)なのです」
厩戸皇子は、詳しい話を聞きたいと秦河勝に言った。秦河勝は長年秦一族に伝わりし口伝を話し始めた。




