第68話 三種の神器と八咫烏
体制を立て直し、紀伊半島を南下したイワレビコ一行は熊野に上陸した。
ところがその地は辺り一面妖気が漂い、胸が苦しくなったと思ったら、イワレビコは倒れてしまった。
イワレビコだけではない、兵が次から次へと倒れた。
どれほど時間が経ったろう、気がつくと一人の男がイワレビコに薬を飲ませていた。
「イワレビコ殿。気がつかれましたかな? 私は、伊勢に社を構える、サルタヒコとアメノウズメ夫婦の曾孫でタカクラジと申す。そなた一行がヤマトへ攻め上るであろうことは、曾祖父から伝え聞かせられていました。その際に預かっているものを返してくれと言われました。これです。曾祖父から天叢雲剣(草薙剣)。そして曾祖母から八咫鏡です」
「なんと、父のウガヤフキアエズから何度も聞かされた神器ではないか? その剣はどんな妖気も薙ぎ払い、その鏡は天照大御神様をお映しになるのであろう」
「さようです。この剣は元々曾祖父の支配者、徐福殿が大国主殿から頂いた物です。ニニギ殿が九州征伐のおり、はなむけにと徐福殿が下されました。しかし、ニニギ殿はいずれ中央に進出したとき頂こう。それまで預かってくれと曾祖父が頼まれました。ですが、イワレビコ殿。我が曾祖父からの遺言です。これだけは約束してください。我が曾祖父の一族が漢の西の弓月国と言う所におります。安住の地を求めて世界をさまよっていますが、曾祖父の支配者徐福殿は、この倭国こそ安住の地と申しておりました。どうかイワレビコ殿が倭国を統一したあかつきには、我が曾祖父の一族の移住をお認め下さい」
「当然だ。その話は父のウガヤフキアエズから聞いている」
「ありがとうございます。それからこの烏もお連れ下さい。八咫烏と申しまして、勝利を約束する烏でございます。そして、ヤマトまで道案内いたします」
「タカクラジ殿。礼を申す」
イワレビコは、天叢雲剣を持ち天に向かって十字を切ると、たちまち妖気は消え、兵は次々に起き上がった。
そして、八咫烏の先導でヤマトに向かった。
不思議なことに道中歯向かう豪族はいなかった。




