表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/89

第62話 海幸彦、山幸彦

九州平定を託されたニニギは、ふさいでいた。

高千穂(たかちほ)に上陸してすぐ、コノハナサクヤヒメは懐妊し、十月(とつき)十日(とおか)の後、元気な男の三つ子が産まれた。

しかし、難産だったため、コノハナサクヤヒメは亡くなり、次男も産まれて間もなく死んだ。

蓬莱山(ほうらいさん)(富士山)から、急ぎコノハナサクヤヒメの葬儀へ駆けつけたイワナガヒメは、

「ニニギ様、父のオオヤマツミノカミが申しておりました。妹は花ように咲き、花のように散る運命だと。逆に私は、岩のように長く生きる運命と申しておりました。妹を失い、悲しいと存じますが、私が代わりに、お慰めいたします。どうか妻に……」

「……」

またもイワナガヒメは、打ちひしがれて蓬莱山へ帰った。

しばらく、憔悴しきったニニギではあったが、九州平定は順調だった。

ニギハヤヒと同様に十艘の船をたくみに使い、日高(ひだか)()(こく)から人民を呼び寄せ、とうとう九州の東半分を統治した。

やがて、20年の時が過ぎ、コノハナサクヤヒメから産まれた長男は「(うみ)幸彦(さちひこ)」と名付けられ、九州の南東で勢力を持っていた「隼人(はやと)族」の(おさ)になった。

三男は「(やま)幸彦(さちひこ)」と名付けられ、九州の北東に勢力を持っていた「日向(ひゅうが)族」の長になった。

隼人族は海に出て漁を生業(なりわい)とし、日向族は山での狩猟を生業としていた。

互いに生業が違っても、この二部族はニニギが来る前から領地問題で争っていた。

ある時、日向族の長老が山幸彦に提案した。

「隼人族の連中ですが、元々我々日向族の農地で我が物顔に作物を作っています。我々としても見過ごせない状態です。この辺で決着をつけなければ、子々孫々争いが止むことはないでしょう。そこで提案ですが、海幸彦殿と話し合い、海幸彦殿が持っている釣り竿と山幸彦殿が持っている狩猟用の弓を交換して、それぞれ獲物を捕りに行くのです。そして多くの獲物を捕った方が、捕れなかった方を従わせる約束を取り付けるのです。山幸彦殿は、釣りが得意ですよね?」

「得意と言っても十年も前の話だ。兄だって十年前は弓が得意だった。あまりに危険すぎる賭けだが、このまま二部族の争いは容認できない。兄と話してみる」

山幸彦は、海辺の海幸彦の館まで行って提案した。

「面白いな。俺も二部族の争いは苦々しく思っていたところだ。どっちが勝っても恨みっこなしだぞ」

翌日、二人は道具を交換して、海幸彦は山へ、山幸彦は舟で海に出かけた。

当初、見えない魚を捕まえるより、見える獣を捕まえる方が楽だと思っていた海幸彦だが、一日山を歩いても兎一匹現れなかった。

仕方なくキジを狙ったが見事に外れた。

山幸彦は逆だった。

沖へ出て、一時(いっとき)もしないうちにアタリがきた。

しかも相当の大物だ。

糸が激しく引っ張られ、負けじと舟の舳先(へさき)に足をかけ必死に竿を上げ耐えていると、舟は猛烈な勢いで走り出した。

どれほど時間が経ったか分からない。

陸を見ると豊後(ぶんご)(大分)の辺りかもしれない。

もう限界と思えた時、竿が急に軽くなった。

ゆっくり竿を引き上げると針がなかった。

海幸彦も獲物が捕れなかった。

だが山幸彦から借りた十本の矢はすべて回収していた。

海幸彦は、

「俺の大事な釣り針を無くすとは、どうゆうことだ。探してこい」

山幸彦は途方に暮れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ