第55話 劉邦と項羽
楚の再興を願う項梁もその一人である。
彼は秦の王翦と戦って敗れた楚の大将軍、項燕の息子である。
彼の他に弟の項伯、そして甥の項羽など8千人の兵を連れて参加した。
そして、秦国の東に位置する沛県の役人、蕭何も注意深く、この流れを見守っていた。
蕭何は、秦が派遣した役人である。
丞相の李斯に師事し、あらゆることを教わった。
秦の役人の立場ではあるが、李斯が失脚した経緯を鑑みて、趙高に恨みを抱いていた。
何とか反乱軍に加わりたいが、残念ながら人を集められるだけの人望がなかった。
そんな蕭何が、打ちひしがれて酒場で飲んでいるとき、となりの30人くらいの集団が、中央にいる一人の男を囲んで、大盛り上がりに宴会が行われている。
店主の話では、男の名は劉邦、この沛県の亭長(警察官)をしているらしい。
劉邦が来ると不思議と人が集まるので、店主はいつも劉邦の飲み代を安くしているそうだ。
蕭何は劉邦を観察した。
よく見ると劉邦は、ほとんどしゃべらなかった。
相手が話しかけてくると耳を傾け、時折大きく頷くのみだった。
しかし驚くことに30人すべてが劉邦にしかしゃべらない。
蕭何は気付いた。
劉邦は相手の話を聞くだけで相手の心を掴むことができる人物だと。
蕭何は、こいつだと思った。
一軍を率いて反乱軍に加わるためには、劉邦を将にするしかないと確信した。
蕭何は、翌日劉邦の下をたずね、咸陽の実態や陳勝、呉広の反乱の経緯を説明し、沛県の反乱軍の将軍になるよう説得した。
難色を示すと思われたが、成功したあかつきには、酒が飲み放題になるとの一言で快く引き受けた。
劉邦の人気はすさまじかった。
たった5日で3千人を集めたのである。
ただ者ではないと悟った蕭何は、咸陽から張良と韓信を呼び寄せた。




