第47話 鹿島の杜の誓い「倭国統一」
「徐福殿。ご提案を聞く前にこの鹿島の地を案内いたす」
ニニギが言った。
鹿島の社は北を向いている。
普通に考えれば西に向かって社を建て、その前に立って参拝すれば、昇る朝日を拝むことができるのではないかと考えられる。
だが、彼らの考え方は違っていた。
元々彼らは、蝦夷と呼ばれる北に住んでいた。
しかし、寒冷化が急速に進み、蝦夷地では住みにくくなり、徐々に南下して今に至るわけだが、元々住んでいた蝦夷地に敬意を表して北向きになっているとのことだ。
では、天照大御神と呼ばれる太陽を祀る社はどこにあるのかと言えば、そんなものは存在しない。
夏至の日、つまり天照大御神が最も長く滞在する日に天照大御神がお通りになる道に沿って参道を築いた。
いわばこの道が社である。
その参道の先に高天原があり、そこで天照大御神をお迎えするのだ。
北から渡ってきた日高見国の住民は、例外なく天照大御神を深く敬う太陽信仰である。
その数は50万とも百万ともつかない一大勢力だ。
出雲の数倍の民に、倭国を統一するならニニギとニギハヤヒの兄弟にゆだねるしかないと徐福は思った。
徐福一行は、鹿島の社でニニギとニギハヤヒの兄弟に対峙した。
「ニニギ殿、そしてニギハヤヒ殿。あなた方が統治する日高見国は本当に素晴らしい国だ。あなた方を囲む数千の民の動向を見れば、統治者が、いかに優れているか、良く分かる。しかし、倭国全体を見てみれば安心してもいられませんぞ。蓬莱山の西に出雲の国があり、そこの統治者、大国主は徐々に領土を広げ、やがて日高見国を脅かす存在になることは、間違いない。さらに脅威なのは、出雲の西に九州があり、我々と同じ秦の国から渡ってきた渡来人が急速に勢力を強めているのだ。その者たちが攻めてくる前に、こちらから攻め上ってはいかがかな? あなた方の天照大御神信仰を倭国全体に広げるのだ。私が鉄の剣、そして船を提供いたそう。もちろん戦い方、および船の操船なども伝授しよう」
ニニギとニギハヤヒの兄弟は顔を見合わせ小声で長い間話し込んだ。
やがて、兄のニギハヤヒが、
「徐福殿、話は良く分かりました。我々としても願ってもない提案だが、なにゆえそこまでして下さるのだ」
「正直に申し上げる。我が一族は、元々秦の国に住んでいたわけではない。秦のはるか西の国から数百年間、放浪の旅を続ける民族なのだ。今、運よく秦の国に定住できているが、戦いが絶えない国なので、このまま定住は難しいと思うのじゃ。我らを受け入れ、我らと共存共栄できるなら、我々は、惜しみなくその国の統治者に協力する所存じゃ。私は確信した。そなたたちこそ、我々が求めていた統治者じゃ」
ニニギとニギハヤヒの兄弟は再び顔を見合わせた。
二人はしばらく激しい議論をした後、ニニギが、
「分かりました。しかし、我々はあなたに会ったばかりだ。あなたの提案した戦い方や船の操船技術を教えていただいたうえで結論を出したいのだが、それでよいか?」
「もとより、この御恩、一生忘れませぬ」




