第41話 須佐之男からの試練
根之堅洲国は遠かった。
何日もかけて根之堅洲国の大社の門までたどり着いた。
門の前で出迎えたのは須佐之男ではなく娘の「スセリヒメ」だった。
大国主はスセリヒメをひと目見るなり惚れてしまった。
それは、スセリヒメも同じだった。
二人は見つめあい、あろうことか大国主は求婚した。
ヤガミヒメと結ばれたばかりなのに…… スセリヒメは、
「父の須佐之男の許しがなければ、この地を出ることができません。一緒に頼んでいただけますか? それから父はあなたに難題を与えるでしょう。この布をお持ちください。危機が訪れたとき振ってください」
二人は須佐之男の前に跪き、
「私は、出雲の国の大国主と申します。私は兄たちから2回も殺されました。私は彼らが許せません、どうかお力をお貸しください。それから、来て早々恐縮ですが、娘のスセリヒメを頂戴いたしたく存じます。どうかよろしくお願いいたします」
「お前はワシに何を言っているのか分かっているのか。助けてほしい? 娘が欲しい? 愚か者! 出直してまいれ、と言いたいところだが、お前の勇気に免じて許してやる。 お前を助けるに値するか、娘の伴侶にふさわしいか試してやる。まずはゆっくり休め」
大国主は別室に通された。
だが、そこには辺り一面蛇がいた。
大国主はスセリ姫からもらった布を振ったら、たちどころに蛇は消えゆっくり休んだ。
翌日は蜂とムカデの部屋。
同じく布を振った。
二日も何事もなかったように起きてきた大国主を須佐之男はいぶかしげに見つめ、
「あの部屋で平気で寝るとはただ者ではないな。次はこの平原に鏑矢を射るから取ってまいれ」
須佐之男は矢を射ると、矢は平原のはるかかなたまで飛んでいった。
大国主は走って追いかけたが、後ろから燃え盛る火の粉が追いかけてきた。
辺り一面火の海になり、大国主は死を覚悟した。
その時、地面の穴からネズミが出てきて、「この穴を踏め」と案内した。
言う通りにすると、大きな穴が開き、その穴に落ちてしまった。
天井を見上げると、燃え盛る炎が通り過ぎて行った。
この危機を救ってもらったネズミに礼を言おうとしたら、ネズミは鏑矢を持って目の前に立っていた。
涙を流しながら礼を言って、須佐之男の館へ歩き始めた。
この大火で、大国主が焼け死んだと思ったスセリヒメは、嘆き悲しんだ。
須佐之男は「これまでの男よ」と平然としているところに、大国主が戻ってきた。
須佐之男とスセリヒメは驚き、
「お前はたいした男だな。ワシはお前が気になって疲れたから広間で横になる。お前はワシの頭のシラミを取ってくれ」
それを聞いたスセリヒメは大国主に椋の実と粘土を渡した。
訳も分からず受け取った大国主は、須佐之男の頭をかき分けた。
すると大量のシラミではなくムカデが現れた。
事態をさとった大国主は椋の実と粘土を口に含み嚙み砕いて吐いた。
「ムカデを噛み砕くとは大した奴だ!」
そう言うと須佐之男は寝てしまった。
それを見た大国主とスセリヒメは、これ以上とどまっても許してもらえないと思い、須佐之男の髪を柱に結わいつけ逃げた。
一目散に駆け出した二人だったが、スセリ姫が持ち出した琴が木にあたり、大きな音が鳴り響いた。
その音で目覚めた須佐之男は柱を折り、髪に結わいたまま追ってきた。
須佐之男は、
「大国主。気に入ったぞ、ワシをよくここまで追い込んだ。娘はくれてやる、正妻にしろ。それからこれをやる天叢雲剣だ。これで兄たちを懲らしめろ」
大国主は何度も礼を言って出雲へ戻った。
出雲へ戻った大国主は、八十神たちを集め、天叢雲剣を見せた。
八十神たちはひれ伏し大国主を国主と認めた。




